中国知財 現地で「グローバル初」と報道される生成AI著作権侵害事件
昨年末から体調を崩して暫く本業をお休みしていましたが、ぼちぼち復帰しています。4月26日の「世界知的財産の日」を前に、最高人民法院から10大案例やら統計データやらが色々と出てくるので、そちらに手をつける前に本事件の内容を簡単にまとめておきます。
現地では、2月26日あたりからメディアで報道され、色々探したところ、判決文をコピペしたような記事を発見しました(それによると、判決日は2月8日)。以下の内容はその内容に基づいています。
日本では産経新聞が4月16日に報道しています。
原告:上海新創華文化発展有限公司(円谷制作株式会社から中国国内でのライセンスを受けている)
被告:AI公司(仮名)
2024年1月5日立案
2024年2月4日公開審理(被告はオンライン参加)
原告は2023年12月下旬に、被告が経営するTabサイトでウルトラマンと同一又は類似する画像を生成可能であることに気づいた。具体的には、
TabのAI絵画機能で「ウルトラマンを生成」と入力すると、ウルトラマンの画像を生成した。(下図は判決文をコピペしたサイトからその一部を抜粋)
被告による応訴後に採った関連措置
「ウルトラマン」を含む語を入力すると、「あなたが送信した情報には、規定に合致しない内容が含まれます」とポップアップされ、生成領域には如何なる生成動作も行われず、「ティガ」と入力すると、生成された画像は、原告のウルトラマン対比元画像と高度に類似した。
本案の争点
1.被告は、原告の複製権、改編権及び情報ネットワーク伝播権を侵害したか
2.侵害となる場合、被告はどのような民事責任を負うか
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1.被告は、原告の複製権、改編権及び情報ネットワーク伝播権を侵害したか
ウルトラマン作品は比較的高い知名度を有し、且つIQiyi等サイトでアクセス、ダウンロード可能であり、被告が反対の証拠がない中で、被告がウルトラマン作品に接した可能性がある。Tabサイトが生成した画像は、部分的に又は完全にウルトラマンの美術イメージの独創的表現を複製した。よって、複製権を侵害した。…該独創的表現を保留しつつ新しい特徴を形成し、被告のこの行為はウルトラマン作品の改編となる。…本案が生成AI発展背景下での生成物侵害という新しい状況であることを考慮して、且つ、既に複製権、改編権侵害を支持したことを考慮して、情報ネットワーク伝播権について評価しない。
2.侵害となる場合、被告はどのような民事責任を負うか
2023年8月15日施行の「生成AIサービス管理暫定弁法」第22条第2項には、生成AIサービス提供者とは~と規定され、被告は、第三者サービスプロバイダのシステムに接続してユーザへ生成AIサービスを提供しており、生成Aiサービス提供者に該当する。同弁法第14条第1項には、「提供者は違法な内容に気づいた場合、適時に生成停止、送信停止、削除等措置を採り、モデル最適化訓練等措置をとって変更を行い、関連主管部門に報告しなければならない」と規定されている。本案では、被告はサービス提供者として、原告の著作権を侵害し、侵害停止、即ち、生成の停止という責任を負わなければならない。
なるほど、日本で著作権法第30条の4では「当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない」といった要件をもう少し深堀りして検討しそうな気がしますが、中国では、割とシンプルに、侵害している事実に気づいたなら、適時に対応しなければ生成AI提供者が著作権侵害の責任を負うぞ、という感じになりそうです。
後で、「生成AIサービス管理暫定弁法」を読み返しておこうっと。