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中国知財 最高人民法院による知的財産案件法律適用問題年度報告(2023)概要

GWも終わり、米国の要人もとっくに帰ったはずなのに、相変わらず地下鉄駅構内で武警が衆人監視を行っている北京です。
さて、2024年4月25日、最高人民法院が知的財産案件法律適用問題年度報告(2023)なるものを出しています。
最高人民法院は、毎年この時期に知的財産権10大案例などを出しているのですが、それと別にこういったものも出してきたということで、こうやって蓄積しておいて、後で司法解釈にでもまとめるつもりなのかな?などと考えています。
ちょっと時間があったので、ひとまず、全訳して、以下、載せておきます。

最高人民法院の知的財産事件

 

法的適用問題に関する年次報告書の概要(2023年)

 

2023年、最高人民法院は習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想の指針を堅持し、第20回党大会の精神を全面的に貫き、習近平の法の支配思想を徹底する。「二つの制度」の決定的意義を深く理解し、継続的に「四つの認識」を強化し、「四つの自信」を強化し、「二つの保障」を達成し、知財審理概念の改革を深化させ、知的財産権審理の概念を最大限に発揮する。裁判機能の役割を果たし、「公平性と効率性」という業務テーマの実行に固執し、中国への奉仕と支援に努める。現代化の新たな章。この年次報告書は、2023年に最高人民法院が結審した知的財産事件のうち、以下の41件の法的適用争点を整理したものである。

 

1.専利侵害訴訟プロセスにおける専利権譲渡時の侵害責任を停止する判断

【案件番号】

(2022)最高法知民终1923号

【裁判要旨】

専利侵害紛争の審理期間に、元の専利権者が係争専利権を譲渡した場合、その訴訟主体資格は影響を受けない。人民法院は、被疑侵害行為が侵害になると認定する場合、被疑侵害者が現在の専利権者から許諾を得ていることを証明できない限り、法に基づいて元の専利権者の侵害停止の訴訟請求を支持しなければならない。

 

2.数値限定された技術的特徴の均等の認定

【案件番号】

(2021)最高法知民终985号

【裁判要旨】

発明専利や実用新案専利における数値或いは連続的に変化する数値範囲によって限定される技術的特徴については、均等原則の適用を絶対的に排除することは適切ではないが、厳格に限定されるべきである。差異を有する数値或いは数値範囲が、基本的同一の技術手段によって、実質的に同一の機能を実現し、実質的に同一の効果を達成し、且つ、当業者が創造的な労働を行わずに想到できるかどうか、また、技術分野、発明のタイプ、請求項の補正内容等関連要素を総合的考慮し、関係する技術的特徴が、社会公衆に対する請求項の保護範囲に対する合理的な期待に違反せず、専利権を公平に保護すると認定する場合、均等の技術的特徴になると認定することができる。

 

3.専利権帰属紛争案件の審理に対する専利権の有効性の影響

【案件番号】

(2021)最高法知民终2312、2395号

【裁判要旨】

専利出願が拒絶或いは専利権が無効にされた場合であっても、無過失の当事者は、専利出願権や専利権の帰属紛争において、発明創造権益の帰属の認定結果について、過失のある当事者に対して別途の法律救済を主張することができる。よって専利出願権或いは専利権の帰属紛争案件において、係争専利出願が拒絶或いは専利権が無効にされた場合、人民法院は具体的な案件の状況に基づいて継続して審理することができる。

 

4.侵害警告に具体的な製品が明確にされていないときの警告された侵害製品の確定

【案件番号】

(2022)最高法知民终1744号

【裁判要旨】

専利権者の侵害警告に具体的な製品が明確にされていない場合、人民法院は、警告を受けた者が警告によって悪影響を受けた製品の範囲内で、警告を受けた者の訴訟請求と結びつけて、専利権非侵害確認紛争案件において審理されるべき具体的製品の範囲を合理的に確定することができる。

 

5.結晶構造を特徴付ける化合物の専利及びその化合物を含む組成物の専利が登記可能な専利権のタイプに該当するか

【案件番号】

(2023)最高法知民终7号

【裁判要旨】

「医薬品紛争早期解決メカニズム実施弁法」に規定された化学医薬の登記可能な専利のタイプは、医薬物有効成分化合物専利、有効成分を含有する医薬組成物専利、及び両者の医薬用途専利である。既存の分子構造で表現された化合物に基づいて、結晶体結晶セルパラメータ等により結晶構造を特徴づけた化合物専利、該化合物を含む組成物専利及び両者の医薬用途専利は、医薬品専利紛争早期解決メカニズム実施弁法が規定する登記可能な専利タイプに該当しない。

 

6.知的財産権の濫用の認定と処理

【案件番号】

(2023)最高法知民终235号

【裁判要旨】

知的財産権の行使は誠実信用の原則に従わなければならず、他人の合法的権益に損害を与えてはならない。知的財産権が侵害された場合、権利者は法により訴権を行使することができるが、訴権の行使も誠実信用の原則に従い、善意を持って、慎重に行動しなければならない。権利者が「侵害の誘導」、「証拠の隠蔽」、「誤解を招く和解」、「同じ事項について故意に二度訴訟を起こす」などの方法により知的財産権を故意に濫用した場合、人民法院は法により有効な措置を採って規制しなければならず。状況に応じて「最高人民法院による知的財産権侵害訴訟において被告が原告による権利濫用を理由として合理的な費用の賠償を請求する問題に関する回答」により権利者が相手方に対して負う訴訟の合理的支出を判断することができる。

 

7.請求項を放棄する形式の補正の認定

【案件番号】

(2021)最高法知行终44号

【裁判要旨】

1.放棄する形式の補正とは、一般に、請求項を補正する際に、否定的技術的特徴を入れて、特定の保護対象を元の請求項の保護範囲から排除することによって、元の専利権請求項の保護範囲を減縮することをいい、通常、専利出願が部分的に重なる拡大先願により新規性を喪失する、既存技術が先にあることにより新規性を喪失する、又は非技術的理由に基づき専利法が保護しない主体を排除するといった、限定的な特定のケースにのみ適用される。

2.放棄する形式の補正は、同様に、専利法第33条の規定に従う必要がある。具体的な判断を行う際、元の請求の範囲および明細書で開示された内容、保護を放棄する内容、放棄する形式の補正後に保留される内容、及びこれら三つの関係等を総合的に考慮しなければならない。もし当業者が、補正後に保留される内容が元の請求の範囲又は明細書で直接開示され或いは暗に開示されていると確定することができる場合、該補正が専利法第33条の規定に合致する。

 

8.既知の化学製品の用途発明専利の新規性判断

【案件番号】

(2022)最高法知行终788号

【裁判要旨】

既知の化学製品の用途発明専利により限定される新しい用途が、当業者が出願日以前に確定できる該化学製品の技術効果を、異なる角度から記載しただけ、または異なる方法で検証しただけである場合、該新たな用途は、該専利と従来技術との相違点にはならない。

 

9.方法特徴を含む実用新案専利の新規性・進歩性の判断

【案件番号】

(2021)最高法知行终422号

【裁判要旨】

製品の形状、構造を含み、また製品の製造方法も含む実用新案専利の請求項において、その新規性や進歩性を判断する際、その方法特徴によって製品が特定の形状や構造を有し得る場合、その方法の特徴は、実用新案権の保護範囲について限定作用を有する。新規性や進歩性を判断する際、該方法で特定される形状、構造と、従来技術の形状、構造とを対比しなければならず、該方法自体と従来技術の方法とを対比するのではない。

 

10.請求項作成における明らかな誤りが、保護範囲が明確であるかどうかに及ぼす影響

【案件番号】

(2022)最高法知行终858号

【裁判要旨】

当業者が請求の範囲及び明細書を読んだ後、請求の範囲の作成に明らかな誤りがあると確定でき、唯一の正確な答えを確定できる場合、原則として、請求の範囲の保護範囲は明りょうであるとされるべきである。当事者が、この明らかな誤りがあることのみを理由に、請求項の保護範囲が不明確であると主張する場合、人民法院は支持しない。

 

11.専利代理機構及び専利代理師が他人の名義を借用して専利権の無効を請求する場合の法律影響

【案件番号】

(2022)最高法知行终716号

【裁判要旨】

専利代理機構、専利代理師が、他人の名義を借用して専利権の無効を請求することは、自己の名義で専利権の無効を請求してはならないことに関する「専利代理条例」第18条についての実質的な違反となり、人民法院は、法により、違法の疑いのある手がかりを関係機関に移送して、処理することができる。

 

12.専利帰属紛争当事者の専利権確定行政紛争案における原告適格性

【案件番号】

(2022)最高法知行终836号

【裁判要旨】

専利行政部門が請求項の全部または一部を無効にした後、専利権帰属紛争案件で権利を主張する当事者が専利権確定行政訴訟を提起した場合、その者は無効審判の審決に対する潜在的な利害関係人になると認定でき、単純に原告主体が適格でないことを理由に訴訟を却下する裁定をすることはできない。専利権確定行政訴訟において当事者が原告適格に該当するかどうかは、専利帰属紛争案件の審理結果に依存し、専利帰属紛争が実質的に解決されていない場合、状況に応じて専利権確定行政訴訟の審理を中止する。

 

13.WeChat公衆アカウント、公式サイトにおける商標権侵害行為主体の認定

【案件番号】

(2022)最高法民终146号

【裁判要旨】

訴えられたWeChat公衆アカウント、公式サイトの運営者が被疑侵害者であることを証明することが困難であるが、該公衆アカウント、公式サイトが宣伝するロゴ、製品及びコンテンツがいずれも被疑侵害者を示していることを証明する証拠があり、被疑侵害者が該宣伝行為の実際の受益者である場合、人民法院は、これに基づいて、被疑侵害者が公衆アカウント、公式サイトを通じて被疑侵害製品を宣伝する行為を実施したと認定することができる。

 

14.挙証妨害規則下での情状を参酌した賠償額確定の適用

【案件番号】

(2022)最高法民终146号

【裁判要旨】

被疑侵害者が挙証妨害に該当し、人民法院が権利者の請求と提出された証拠を参考にして賠償額を確定する際、全面的客観的に関連証拠を審査し、被疑侵害行為の時期、数量、被疑侵害者の主観的悪意等の要素を総合的に考慮しなければならず、被疑侵害者による生産規模、範囲、情状についての供述は、賠償額を確定するための重要な参考にすることができる。

 

15.懲罰的損害賠償の倍数の考慮要素

【案件番号】

(2022)最高法民终209号

【裁判要旨】

他人の登録商標や商号の知名度や影響力を明らかに知りながら、他人の登録商標と類似する商標を大量に使用して同一の業務を展開する場合、商品の出所を混同させ他人の知名度にあやかる主観的な悪意があると認定しなければならない。被疑侵害者の侵害規模が大きく、地域が広範囲に及び、侵害により得た利益が巨大である場合、侵害の情状は深刻であると認定しなければならない。上述の主観的悪意、情状が深刻であることの深刻の程度は、人民法院が懲罰的賠償の倍数を確定する際の重要な考慮要素としなければならない。

 

16.馳名商標のオンデマンド認定の原則

【案件番号】

(2023)最高法民再29号

【裁判要旨】

馳名商標の認定は、商標が馳名であるという客観的事実の個別の案においての法的確認であり、馳名商標の司法認定は、オンデマンド認定の原則に従わなければならず、商標が馳名であることが、被疑侵害商標権又は不正競争行為の法律要件事実に該当する場合のみ、馳名商標を認定する必要がある。

 

17.非善意の被疑侵害行為者は、保護されるべき信頼利益を有しない

【案件番号】

(2022)最高法民终313号

【裁判要旨】

商標権侵害訴訟において、被疑侵害ロゴはかつて登録商標であったが、後に商標行政主管部門によって取り消されていたが、商標登録がかつて登録されていたという理由で被疑侵害者が信頼利益を有するかどうかについては、その主観状態を考慮しなければならず、信頼基礎が合法でないこと或いは明らかに違法であることを被疑侵害者が明らかに知ったうえで対応する行為を実施していた場合、その主観的態度はいわゆる善意とはいえず、その信頼利益は保護されるべきでない。

 

18.商標権侵害訴訟における三年不使用の抗弁の認定

【案件番号】

(2022)最高法民终313号

【裁判要旨】

商標権侵害訴訟において、登録商標専用権者がその登録商標を使用していないと被疑侵害者が抗弁する場合、権利者が、係争商標が使用されていないということについて証明する責任を負う。その中で、「過去3年」については起訴日から3年前に向かう。権利者は、3年以内に商標使用行為を実施したことを挙証証明すれば足りる。係争商標の使用の程度は、その保護を受ける範囲に影響するが、被疑侵害者が賠償責任を負うかどうかを決定する要素ではない。

 

19. 委託加工関係における商標使用行為の認定

【案件番号】

(2022)最高法民终313号

【裁判要旨】

委託加工プロセスにおける受託者の商標貼付行為が商標使用となるかどうかの判断では、商品の生産と流通との接続を分離することはできず、受託加工商品が既に流通領域に入り、関連公衆は張り付けられた表示において受託加工者を識別できる場合、その貼り付け行為は商標使用行為と認定でき、該受託者は商標使用者となる。

 

20.商標権侵害案件における合法的出所の抗弁の成立条件

【案件番号】

(2022)最高法民再274、275、276、277、278号

【裁判要旨】

商標権侵害訴訟において、合法的出所の抗弁が成立するには主観的要件と客観的要件の両方を満たさなければならない。客観的要件は、被疑侵害商品が販売者によって合法的に取得されたということであり、主観的要件は、被疑侵害商品が侵害となることを販売者が知らなかった、または知るべきでなかったということであり、主観的要件と客観的要件は相互に関連しており、分離することはできず、また、客観的要件の挙証は主観的要件に対し推定効果を有する。人民法院は、前述の主観的要件と客観的要件を審理する際、販売者がいる市場での地位、権利者の権利保護コスト、市場取引習慣などの要素を総合的に考慮し、販売者の立証責任について合理的な要求を定めなければならない。販売者の経営規模、専業の程度、市場取引習慣等は、その合理的注意義務を確定する証拠として、販売者が提供する合法的出所の証拠と、その注意義務の程度とが相当である場合、販売されたものが侵害商品であることを主観的に知らなかったと推定できる。

 

21.大量の権利保護案件における合理的支出を賠償するという主張の合理性の認定

【案件番号】

(2022)最高法民再274、275、276、277、278号

【裁判要旨】

合法的出所の抗弁が成立し、また、権利者に大量の権利保護案件が存在する状況において、人民法院は、被疑侵害行為の情状、権利侵害する販売者の主観的要素、合理的支出に関する権利者の挙証等具体的な状況を総合的に考慮しなければならず、合法的出所の抗弁制度の立法趣旨に立ち戻り、権利者の合理的支出の賠償に関する主張の合理性を認定する。

 

22.商標権者は、他人による商品原料名称の正当使用を禁止してはならない

【案件番号】

(2022)最高人民法院第238号

【裁判要旨】

登録商標に商品の主な原料が含まれる場合、商標権者は、他人による正当使用を禁止する権利を有しない。正当使用に該当するかどうかを判断する際、登録商標の識別性、関連商品の市場慣行、他の事業者の具体的な使用方法等を総合的に考慮しなければならない。

 

23.取消案件における商標使用行為の認定

【案件番号】

(2023)最高法行再10号

【裁判要旨】

係争商標が実際に使用された商品は、使用が認められた規範化された商品名称に該当しない。使用が認められた商品分類で実際に使用されたかどうかを認定する際、商品の機能、用途、生産部門、販売チャネル、消費者層を結び付け、消費習慣、生産モデル、業界のビジネスニーズなどを考慮して、総合的に認定しなければならない。

 

24.海外使用の証拠だけでは「先に使用され一定の影響を有する」と認定するのに十分ではない

【案件番号】

(2023)最高法行申2567号

【裁判要旨】

商標権は地域性を有し、その権利範囲、保護内容及び保護期間はいずれも地域範囲の制限を受ける。他の国や地域で商標を使用するだけでは、商標法第32条に規定する「先に使用され一定の影響を有する」には該当しない。

 

25.訴訟段階で当事者が追加した商標無効理由は審理範囲に含めるべきではない

【案件番号】

(2023)最高法行申331号

【裁判要旨】

商標無効審判行政訴訟において、国家知識産権局が下した裁定が合法かどうかを判断する場合、該裁定を下すときの当事者の請求に基づいて認定しなければならず、当事者が訴訟段階で追加した商標無効理由は、該裁定が合法かどうかの審理の考慮範囲に含めるべきではない。

 

26.商標の識別性の欠如の認定

【案件番号】

(2023)最高法行申1053号

【裁判要旨】

係争商標が識別性を有するかどうかを判断する場合、関係公衆が、該表示を商品又は役務の出所を示す表示として、識別性を与えて扱い得るかどうかが鍵となる。人民法院は、商標の使用指定商品或いは役務の分野における関連公衆の認知習慣、および商標が属する業界の実際の使用状況に基づいて総合的に判断することができる。

 

27.馳名商標行政案件における「一事不再理」原則の適用

【案件番号】

(2023)最高法行申1725号

【裁判要旨】

馳名商標を複製、模倣、或いは翻訳したことを理由に係争中の商標についての異議申立てと異議申立ての復審が商標行政主管部門の支持を得られず、関連プロセスが終結した後、申請人が合理的な理由なく再度同一事実と理由により無効審判を請求した場合、「一事不再理」の状況となる。

 

28.ホテル・民宿による映像作品の再生サービス行為の侵害判断

【案件番号】

(2023)最高法民申711号

【裁判要旨】

ホテル・民宿による映像作品の再生サービスを提供する際、映像作品を情報ネットワークに置くことをせず、関連する再生ソフトウェアの会員アカウントとパスワードも提供せず、客室に合法ルートを通じて購入した映像の再生機器を設置するだけの行為は、侵害とならない。

 

29.企業名称の合法的権利基礎の判断

【案件番号】

(2022)最高法民终146号

【裁判要旨】

ある標識について商標専用権を有することは、必ずしも該標識を企業名称として使用する権利を有することを意味するものではない。権利者の商号が既に比較的高い知名度を有する場合には、後に被疑侵害者が権利者の商号と同一又は類似の商標の使用許諾を受け或いは取得したとしても、後の商標取得に基づいて、権利者の商号を企業名称として登記登録するこことはできない。

 

30.業界協会の原告主体適格性の認定

【案件番号】

(2022)最高法民再76号

【裁判要旨】

業界協会が不正競争紛争における原告主体適格性を有するかどうかは業界協会の性質、業務範囲等を結合して総合判断することができ、業界協会が事業者と競争関係を有し案件と直接利害関係を有する場合、原告主体適格性を備えると認定することができる。

 

31.特定商品名称の前に「新」という文字を冠して宣伝される商品名称は虚偽宣伝になるか

【案件番号】

(2022)最高法民再76号

【裁判要旨】

国家標準或いは業界標準を有する特定商品名称について、承継関係が確実に存在することを証明する関連証拠がない場合、特定商品名称の前に「新」という文字を冠して宣伝される商品名称とすることは、容易に消費者に該商品について誤った認識をさせ、消費者を欺き、誤解させる可能性があり、虚偽宣伝行為になると認定できる。

 

32.侵害により得た利益が法定最高賠償額を超えることを証明する証拠がある場合の認定と参酌考慮要素

【案件番号】

(2022)最高法民终312号

【裁判要旨】

提出された証拠は、侵害により得た利益が、明らかに不正競争防止法が規定する法定賠償最高額を超えると認定するのに足りる場合、人民法院は企業名称の知名度、侵害者の主観的悪意の程度、挙証妨害の有無、侵害行為の具体的情状及び被侵害者が権利保護のために支払った合理的費用等の要素を総合考慮して、法定賠償額以上で賠償額を確定しなければならない。

 

 

33.技術秘密の関連約定と技術秘密の構成要件の審理

【案件番号】

(2021)最高法知民终1530号

【裁判要旨】

当事者がかつて和解協議等を締結する等方式で技術秘密の構成、帰属、侵害及び責任について約定に達していたとしても、後の紛争案件において、人民法院は当事者が主張する技術情報が不正競争防止法の意義上の技術秘密になるかどうかについて審理を行い認定しなければならない。

 

34.法定代表人が、企業が技術秘密を入手するルートとなった場合の責任認定

【案件番号】

(2021)最高法知民终1629号

【裁判要旨】

被疑侵害企業が技術秘密を使用する侵害行為を直接実施し、企業の法定代表人が、該企業が係争技術秘密を入手するルートである場合には、原則として法定代表人と企業が共同侵害を構成すると認定でき、法定代表人が侵害行為を実施したことを証明する直接の証拠がないことを理由に、簡単に侵害責任を免除することはできない。

 

35.秘密保持措置の修復、再構築、強化にかかる費用の賠償

【案件番号】

(2022)最高法知民终945号

【裁判要旨】

技術秘密侵害紛争案件において、権利者が侵害行為により破壊された元の秘密保持措置を修復或いは再構築する際に支払った費用、及び損害軽減、損失拡大の防止のために秘密保持措置を強化する必要があって合理的に支払った費用は、いずれも侵害による損害賠償額に算入することができる。

 

36.植物新品種権の新規性判断

【案件番号】

(2022)最高法知行终809号

【裁判要旨】

行為者が、取引目的で品種繁殖資材を他人に渡し、自身の該繁殖資材に対する処分権を放棄する行為は、植物新品種権の保護を申請する品種の新規性を喪失することになる販売に該当する。育成者が種子の生産を他人に委託するために申請品種繁殖資材を渡すとともに、生産された品種の繁殖資材を育成者に返還することを約定する場合、育成者は実質的に該品種繁殖資材の処分権を保留しているため、一般に、これを理由に申請品種が新規性を喪失することにならない。

 

37.植物新品種権利確認手続きの審査範囲と具体的な認定基準

【案件番号】

(2023)最高法知行终132号

【裁判要旨】

1.請求に応じて開始される植物新品種権の無効プロセスにおいて、植物新品種復審委員会は、原則として、無効審判請求人が提出した証拠や理由に基づいて、登録品種が登録要件を満たしているかどうかを審査するだけでよく、全面的な審査、すなわち植物新品種権の全ての登録条件を審査する義務は負わない。

2.植物新品種の権利確定の審理プロセスにおいて、特異性の判断基準については、植物新品種の登録審査プロセスと整合性を有しなければならない。つまり、登録品種が特異性を有するかどうかを最終的に判定することは、原則として、野外植栽試験によって確定された形質を基準としなければならず、登録品種と、既存品種が遺伝子指紋パターン識別において明らかな差異がない場合、その識別は登録品種が特異性を有さないと認定する重要な参考となる。

 

38.分子マーカー検出基準のない植物新品種の侵害対比

【案件番号】

(2022)最高法知民终568号

【裁判要旨】

植物新品種と被疑侵害品種の特徴特性が同一であるかどうか認定するとき、遺伝子指紋パターンなどの分子マーカー検出に関する国家標準或いは業界標準がまだ確立されていない一部の品種については、遺伝子指紋パターンなどの分子マーカー検出方法を採用した検査報告書の証明力を検討する際、すべての関連証拠を総合分析し、プライマー由来のサンプル範囲とその代表性、及び遺伝子指紋バターンの確立が科学的ルールに従っており、異なる品種を科学的かつ正確に区別するのに十分であるかどうかに重点を置いて審査しなければならない。

 

39.独占協定における固定価格の決定

【案件番号】

(2023)最高法知行终29号

【裁判要旨】

商品価格を固定する独占協議における固定価格方式は、最低価格或いは直接具体的価格を固定することだけでなく、価格幅を固定する或いは間接的に価格を制御することができる計算方式、基準を固定すること等が含まれる。

 

40.特定行為が独占に該当することの確認のみを訴えた場合の処理

【案件番号】

(2021)最高法知民终2131号

【裁判要旨】

原告が人民法院に対し、被告の特定行為が独占に該当することの確認のみを訴えた場合、該タイプの訴訟は、訴える利益を有さず、つまり、訴えの必要性、実効性を有さないので、人民法院は、受理しない或いは訴訟を却下することができる。

 

41.「原産地」を製造行為実施地として案件管轄を確定するための条件

【案件番号】

(2023)最高法民辖143号

【裁判要旨】

「原産地」は、最高人民法院による専利紛争案件の審理における法律適用問題に関する若干規定」の第2条の法概念ではなく、もし「原産地」を製造行為の実施地とみなすなら、該場所は、被疑侵害製造者或いは製造行為を明らかにするのに便利な具体的な場所でなければならず、これに基づいて、製造行為と関係する、案件管轄権を有する法院を確定することができる。

 

 


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