![PMのkyokuronn_ヘッダー__2_](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/9637757/rectangle_large_type_2_ca27988163a70673eb7ce56d395badb7.png?width=1200)
PM視点で観ると「ハウルの動く城」はもっと「安全かつ効率的に動く城」にできるはず
最近「めんどくさっ」と言われることが増えました。
シャニカマです。
どうもこの「PMの極論」という連載を始めてから、私の屁理屈に磨きがかかったらしく、よく「めんどくさっ」と言われます。
一緒に生活をしている彼女はついに『無視する』というリーサルウェポンを使い始めました。それでも私はヘコタレません、某議員よろしく。
さて、そんな私は最近時間があまりにあまっているので、映画を観ています。
この前は大好きなジブリの「ハウルの動く城」を3回も観ました。いやー、忙しい忙しい。
ご存知でしょうか、ハウルの動く城。
あらすじはこんな感じです。
自分に自信がない18歳の少女ソフィーは、ある日、荒地の魔女に呪いをかけられ90歳の老婆にされてしまう。ソフィーは呪いを解く為に魔法使いのハウルに会いに行く。
ハウルは一見紳士的で素敵な男性だったが、本当は魔女から逃げる臆病者だった。ソフィーはそんなハウルやその仲間たちと、奇妙な共同生活を始める。
そんな「ハウルの動く城」ですが、やはり何と言っても印象的なのがあの「動く城」ですよね。
おそらく映画を観ていない方でもあの城はご存知なのではないでしょうか。
この城はカルシファという、ハウルと契約を交わした悪魔が動かしていて、何度もハウルやソフィーのピンチを救ってくれます。
・宛てもなく歩いていたソフィーを迎え入れてくれた
・サリマン先生からハウルやソフィーを隠してくれた
・戦争に行ったハウルを助けるために仲間を乗せて走った
などなど
外装のインパクトもさることながら、劇中でも鍵を握る重要な存在です。
そしてそれを1人で動かしているカルシファは本当に偉大な存在でしょう。
が、しかし。
PM視点でこの映画を見たときに、どうしても無視できない点があります。
管理が杜撰(ずさん)
彼らが暮らす大事な大事なお城ですが、とてもずさんな管理がなされているのです。
大きく分けると問題は2つ。
1.リスク管理が甘い
2.コストパフォーマンスに無関心
まず「1.リスク管理が甘い」について言えば、劇中で何度もカルシファが危機にさらされます。
薪がもらえずに死にかけたり、変な虫を食わされて死にかけたり、水をかけられて死にかけたり、と。ここまで死にかけるキャラは「MOZU」の西島秀俊以来見たことがありません。
そして「2.コストパフォーマンスに無関心」に関して。カルシファは劇中で何度もモチベーションが上がり、それに伴って城の稼働が劇的にUPします。
しかしこのことに関してソフィーもハウルも一切の注意を払いません。彼のモチベーションがいかに生産性に寄与するか、全くもって関心がないのです。これにはカルロスゴーン氏も憤りを覚えることでしょう。
以上の点から、ハウル家にはカルシファの「安全」と「モチベーション」の2軸に関して、適切なマネジメントがなされていないということがわかります。
これは由々しき事態です。もし今の子供たちがこの映画を金曜ロードショーで観た場合、彼らは誤った管理体制を「正しいものだ」として誤認してしまう。
というわけで、いつも通りシャニカマがPM視点で、カルシファの「安全」と「モチベーション」に関するマネジメントプランを提唱します。
1.カルシファの安全担保について
まず、劇中でカルシファが危機にさらされる場面は主に4つあります。
①ソフィーが掃除中に薪をくべず、消えそうになる
②ハウルが液化してカルシファを消しそうになる
③荒地の魔女に変な虫(?)を食べさせられて消えそうになる
④荒地の魔女がカルシファ(=ハウルの心臓)を奪い取ろうとした際、ソフィーに水をかけられて消えかける
そしてこれらの危機は2つの問題に分解することが可能です。
A.火の管理をする上での問題(薪やその他外的要因)
B.荒地の魔女に関する問題
この2つに対してアプローチを考えてみましょう。
A.火の管理をする上での問題(薪やその他外的要因)
まず、カルシファは炎なので、常に「薪」が必要になります。そのため常に薪を切らしてはなりません。そのためカルシファの横にはストックとして10本程度の薪をストックしておくことが望ましいでしょう。
また、絶対に薪を切らしてはならないので、定期的な棚卸しと「〜本以下になったら発注する」という発注レギュレーションを策定すべきです。マルクルはまだガキンチョなので、人的ミスも発生しやすい。そのためきちんと仕組みにしておくことが大事です。
そして、もし濁流や津波にのまれた場合も考えて、緊急事態用に真空パックした薪も数本はストックしておけば問題ないでしょう。
B.荒地の魔女に関する問題
荒地の魔女に関しては、シンプルに「警察へ引き渡す」ことがベストです。
彼女はソフィーを老婆にし(傷害罪)、贈り物を勝手に盗み(窃盗罪)、挙げ句の果てにハウルの心臓を取ろうとしました(殺人未遂)。
正直に申し上げますと、彼女は存在そのものがリスクです。
彼女がした良いことで言うと、窓を開けようとしたマルクルに対して「今は開けない方が良いよ、カルちゃんの力が弱くなってるからね」とアドバイスしたぐらい。それも、そもそもは彼女がカルシファに変な虫を食べさせたことが原因なのですから、全くをもってプラスではありません。
よって、すぐにでも警察へ引き渡すべきです。
さて、ここまでやれば「安全面」に関しては十分でしょう。
次は「モチベーション」に関するプランを説明します。
2.カルシファのモチベーション管理について
劇中でもカルシファは幾度となくモチベーションを昇降させています。
そして薪の量に限らず、彼のモチベーション1つで城の生産性は飛躍的に向上しているため、この点を無視することは愚かだと言えます。
まずはじめに、カルシファがどんな場面でモチベーションを変動させていたか、見ていきましょう。
<モチベーションが上がる時>
・ソフィーに「あなたは一流よ」と褒められたとき
・ソフィーの髪の毛を食べた時
<モチベーションが下がる時>
・料理をさせられるとき
・お風呂を沸かさせられるとき
劇中に出ていた場面はこんなところでしょう。
これを念頭に置いておいてください。
では次に、モチベーションをどう上げるかを考えてみます。
まずモチベーションは「外発的動機付け」と「内発的動機付け」の2つに分類されます。
「外発的動機付け」とは、報酬や懲罰など外から与えられる影響によって動機づけられることを指します。一方「内発的動機付け」はカルシファ自身が持つ興味関心や志向性によって引き起こされるものです。
そう考えたときに、劇中で描かれたカルシファのモチベーションはどういった時に上がっている言えるでしょうか?
そうです、「外発的動機付け」なのです。ソフィーからの賞賛や髪の毛はカルシファの内部から現れたものではありません、ソフィーなしには生まれなかった感情なのです。
実は、このようにモチベーションを「外発的動機付け」のみに頼っている状態は、組織論上好ましくないとされています。
なぜなら、カルシファのモチベーションはソフィーに依存しているため持続性がなく、ソフィーがいなくなった場合再現することが難しいので非常にリスキーです。ソフィーの髪の毛もいつまであるか分かりませんし、何度も褒められていると有り難みも薄くなりますから。
カルシファはあれだけ燃えているように見えて、実は誰かに火をつけてもらわないと燃えられない、か弱い存在なんですね。皮肉なものです。
さてここで、カルシファには「内発的動機付け」が必要ということがわかりました。
では「内発的動機付け」はどのようにして醸成されるのか、それは以下の3つが重要とされています。
a.自律性:自分の意思決定と責任で仕事をすることが出来ている
b.有能性:自分は価値ある仕事をしていると思えている
c.関係性:周りのメンバーと互いを尊重し合えている
3つあげましたが「c.関係性」に関しては達成されていると考えられます。
なぜなら、カルシファは映画のラストシーンで自由になったにも関わらず「みんなと一緒にいたいんだ」と語っているからです。これは彼の内側から出た「内発的動機付け」による行為であり、その対象はハウルたちとの「関係性」でしょう。素敵なチームですね。
つまり、残すは「自律性」と「有能性」ということになります。
確かに、カルシファはあまり重要な仕事とは捉えにくい「料理」や「風呂沸かし」をする際に落胆しています。それは「自律性」が低いやらされ仕事であり、「有能性」の低い雑務だと思っているからでしょう。
では、どうすれば「自律性」と「有能性」をカルシファに感じさせられるでしょうか。
ここに関しては
(1)今の仕事に関する意味づけ
(2)カルシファの自主性を重んじた目標とアクションプランの策定
が有効です。
(1)今の仕事に関する意味づけ
カルシファが担当している「料理」と「風呂沸かし」は重要な仕事だと言うことを丁寧にコミュニケーションしましょう。
例えば「料理」ひとつ取っても、
・カルシファが料理に協力すること
└家族全員が暖かくて美味しい料理が食べられる
└家族の幸せを担っている
└カルシファがいるから家族が幸せ
└カルシファは家族の幸せを担っている
という具合に順を追って意味づけをしてあげてください。そうすることで一作業でもモチベーション高く実行することが可能になります。
(2)カルシファの自主性を重んじた目標とアクションプランの策定
カルシファが担う仕事を、一部彼自身の「目標」とリンクさせてやりましょう。
もし彼が「悪魔王に、俺はなる」と思っているのであれば、そのトレーニングとして城を山に登らせるなどいいかもしれません。それは家族のレジャーとしても楽しめるかもしれませんし、悪い奴から逃げることもできるかもしれません。
また、このように目標などのすり合わせは実際にハウルやソフィーといった意思決定者との綿密なすり合わせをするべきです。
ここでの齟齬はモチベーションを大きく低下させるかもしれませんから、1on1を定期的に行うことも重要です。
これらの施策によってカルシファのモチベーションは高い水準で維持され、城の稼働量に劇的な改善が見込めることでしょう。
さて、とても長くなってしまいましたが、以上が「ハウルの動く城」を「もっと安全かつ効率的に動く城」にするソリューションです。
これでハウルの動く城は、より安全に、より効率的に動く城になるでしょう。
いいなと思ったら応援しよう!
![岡シャニカマ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/19777588/profile_39bc0161e727e4aaba00e06ef42e1ed7.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)