屁ッセイタイトル2のコピー__18_

尾崎は1人だから卒業できなかったのかもしれない。

人類は知能や文明を持った生物とは言え、やはり生存本能というものがどこか根っこにある。それはDNAに刻まれた生きるための鉄則のようなものであり、先人たちが築き上げてきた知恵の結晶とでも言えよう。

その代表例が「保守的姿勢」ではないだろうか。

何か新しいことに挑戦しよう。
行ったことない場所へ行ってみよう。
食べたことないものを食べてみよう。

そんな時、人はためらいを覚える。
未開の地に踏み込むことが怖いのだ。

かつて人類がまだ「最強」ではなかった時のこと。
彼らにとって獲物とは単なる「餌」ではなく「敵」でもあった。

食うか、喰われるか。

そんな時代に、踏み込んだことのない土地へ一歩踏み入れることがどれほど怖いことだったか、私は想像だにしないが、現代人の抱える小さな悩みなど比にならないであろう。

だから、見知った土地にやってくる憐れな獲物を狩る。
どうしても踏み込まねばならない時にだけ、文字通り「決死の覚悟」で挑戦をする。

そんな古の頃より培われてきた「保守的」な精神が人類のDNAには根付いている。例に漏れず、私にも。

怖いのだ。
踏み込めないのだ。

風俗が。


私は今まで風俗に行ったことがない。

あまりに恥ずかしくてタイピングする手が震えてしまう。
だが隠すことはもう出来ない。私は玄人童貞なのだ

それを私の恩師であるライターの先輩に伝えた時。

「あなたはみうらじゅんになりたいんじゃなかったの?東野幸治になりたかったんじゃなかったの?彼らが一番大切にしてきたことは何?それは後悔したSEXの数で決まるのよ!だから風俗に行きなさい!!」

そんなことを鬼の剣幕で言われた。
とても尊敬している人からの、説得力あるお達し。
にも関わらず、2ヶ月以上もの間、まだ風俗へ行っていない。

私は一生風俗に行けないのだろうか?
玄人童貞のままキン◯マが萎んでしまうのだろうか?

そんなモヤモヤを抱えたまま、今日も人間へ出社した。

ランチにカツ丼を食べ終えると、広報の白井さんから「チーズティーを飲みたい」というリプライが来た。私も兼ねてから気になっていた「チーズティー」だ。

私はソッコーで「行きましょう」と返す。
そしてあっさりとチーズティー童貞を卒業した。


そして夜になって、月に一度の「人間酒場」がスタートした。
近くの人や、仕事で付き合いのある人がフラッと来て、トミモトさんとおかんさんの手料理に舌鼓を打ちながら酒を飲むイベントだ。

そこにいた男性と何気なく会話していると、トミモトさんから「この人は大阪代表のバンドマンだよ」と紹介された。知る人ぞ知る『赤犬』というバンドのボーカルらしい。なんとバンドをモデルにした映画まであるんだとか。

調べると大概やばかった

伊東さんという方なのだが、話す内容がいちいち面白くて貪り尽くすように話を聞いていると「僕、スナックの本出したんです」という話になった。

私はスナック童貞だ。

もうAVは熟女専門サイトでしか見なくなっている自分としては、絶対に行きたいのだが、いまだに敷居が高くて行けていない。怖いのだ。

すると目の前にとても暇そうな男がいた。
先週知り合って、今日の酒場に誘った藤原雅樹という男だ。

こいつは超賢い。
大阪大学でしかも理系。
なのに週の6日をノーパンで過ごす

「自分がパンツを履く理由を自分に説明できなかったんです」

シンプルにやばい。
でもノリがよくて、基本暇なのだそう。

「おい、一緒にスナック行かへんか!」
「ああ、いいすよ」

その場でスケジュールを合わせ、来週スナック童貞を卒業することが決まった。

「スナック童貞卒業やな!」
「そうですね。童貞で言うたらボク風俗も行ったことないです
「え!?」

渡りに船とはこのことを言う。

「おい、風俗も卒業しよう!俺も玄人童貞やねん!」
「ああ、いいすよ」

そうして、近いうちに玄人童貞を卒業することも決まった。

「チーズティー童貞」
「スナック童貞」
「玄人童貞」

私は3つもの卒業を迎えることになった。

尾崎は「卒業とは何なのか」と、卒業式に出なかったそうだ。
彼は1人だったのだ。だから怖くて卒業できなかったのだ。

誰かが一緒にいれば、人は「卒業」することができる。
学校も楽しい仲間がいるから卒業できるように、チーズティーも、スナックも、風俗も、誰かと一緒なら卒業できる。

だから、仲間って必要なんだ。
全ては卒業するため。

人間っていいな。

サポートされたお金は恵まれない無職の肥やしとなり、胃に吸収され、腸に吸収され、贅肉となり、いつか天命を受けたかのようにダイエットされて無くなります。