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The 1975 "Girls"とJohn Mayer "Daughters"に見る、男が注ぐ女の子へのまなざしの共通点(と違い)
The 1975 - Girls
私の好きな曲のひとつにThe 1975の"Girls"というのがある。
18歳の主人公が17歳の女の子の「手に負えなさ」みたいなものに振り回されてほとほと困り果ててる、みたいな歌だ。
Cause they're just girls breaking hearts
Eyes bright, uptight, just girls
But she can't be what you need if she's 17
They're just girls
They're just girls
だってあいつらは女なんだから
人の心をもてあそんで、瞳をキラキラさせて、ガードの固いただの女の子
17歳がお前の理想通りの女性なわけないだろ
あいつらはただの女の子なんだよ
余談だけど、PVの冒頭で(それまでずっとモノクロPVでやってきたThe 1975が)「いやいや俺たちポップバンドじゃないんだから、こんな(PVの)設定おかしいだろ、やっぱモノクロでいかなきゃ」とメンバー同士でやいのやいの揉めた直後にばちばちのカラフルポップな映像が始まり、でもそのポップな映像の中でMatty(Matthew Healy、ボーカル)は終始憂鬱そうな顔しているのがいかにもイギリスロックバンドという感じでいい。
そしてこの歌 "Girls" の主人公男子もまた、「女なんてろくでもないやつらだ」と自分は一段高みから見下すような態度を取りながらも、結局はその女の子に散々振り回されている。
自分勝手でuncontrollableな女の子を嫌悪し、憎んでいるけれど、その輝きからは決して逃れられない男の子のイライラがよく伝わる。
I said "Yo, I think I better go; I can't take you
You just sit and get stoned with 30 year olds and you think you've made it
Well, shouldn't you be fucking with somebody your age instead of making changes?"
Wrestle to the ground
God help me now
「俺もう行くよ、君とはやっていけないよ
君はただ30歳の仲間とくだ巻いてるだけなのに、何かをなしとげたような気でいるよね
自分を変えたいのなら、まずは同年代の相手とつるむべきじゃない?」
地面に組み伏せる(※散々文句言ってるけど女の子に押し倒されちゃう、みたいな意味合いだろうか)
ああ 助けてくれ
そして、やっぱり17歳の女の子ってそうでなくちゃなぁと私は思う。
身の丈に合わない背伸びをして周りを呆れさせて、自己矛盾を内包しているくせに自分は世界の中心だと思い込んで、きらきらの光を放ちながら、その輝く刃で平気で男を傷つけて、それを省みもしないような存在でなくちゃと。
John Mayer - Daughters
という感じでこの "Girls" が私は大好きなんだけれども、最近John Mayerの "Daughters" を聴いていて不思議なシンクロニシティを感じた。
曲調は全然違うんだけれど、「女の子」へのまなざしにどこか似通ったものがある、と思ったのだ。
I know a girl
She puts the color inside of my world
but she's just like a maze
Where all of the walls are continually changed
ある女の子がいて、彼女は僕の世界に彩りを与えてくれた
でも彼女はまるで迷路みたいで
しかも全ての壁が絶え間なく変わり続けているんだ
And I've done all I can
To stand on her steps with my heart in my hand
Now I'm starting to see
Maybe it's got nothing to do with me
彼女に寄り添おうと 誠意を尽くしてやれるだけのことをしてきた
でもだんだん分かってきたよ
多分問題は僕の側にあるわけじゃないんだ
男の子のルールの埒外にいる女の子。
確かに彼女は良きものをもたらしてもくれるのだけど、一方で男の子を深い混乱にも陥れてしまう。散々悩まされ、せいいっぱい努力もしてきたけど、結局それは男の側でどうすることもできない、という諦めのような気付き。
この曲がすごく良いのは、この美しくも悩ましい「女の子」という存在を、同年代の男女の関係性だけでなく、父と娘という親子の視点から捉え直したところだ。
Fathers, be good to your daughters
Daughters will love like you do
Girls become lovers who turn into mothers
So mothers, be good to your daughters too
父親よ、どうか娘を大切にしてあげて
娘は、あなたたちに愛されたように人を愛するのだから
女の子もいつかは(誰かの)恋人になり、母親になる
だから母親も、娘を大切にしてあげて
全ての女の子は、親から深く愛されるべき存在であってほしい。
このサビに、そんなJohnの強い願いが現れているようで何度聞いても胸がぎゅっとなる。
ちなみにこの後にはこんな歌詞が続く。
Boys, you can break
You find out how much they can take
Boys will be strong
And boys soldier on
But boys would be gone without warmth from a woman's good, good heart
男の子は当たって砕けてもいい
そこから教訓を得ることができるから
男は強いし、戦士のように前へ進んでいける
だけど男も、女性の優しい心のぬくもりがなければ消えてしまうんだよ
女の子にいくら振り回されて傷つけられても、根源的に女の子を必要とする男の子という構図。
"Girls"でMattyが用いた "Wrestle to ground / God help me now" という表現が「マジで勘弁してくれ」というニュアンスであるのに対して、Johnの方にはそんな男女の構図を受け入れている姿勢が感じられる。
On behalf of every man looking out for every girl
You are the God and the weight of her world
女の子の面倒を見ている全ての男を代表して言わせてもらうよ
あなたは彼女の神であり、彼女の世界の重みなんだ
一見すると父親賛歌のようだけど、女の子の迷路の中で苦労してきた一人の男の子として、「おい、だから父親たち、お前らがしっかりしないとだめなんだぞ」って言ってるのだと思う。
実際、省略した歌詞の中には「娘は父親のやってきたことの後始末をずっとさせられてる」という一節がある。
だから、女の子がこんなにもめちゃくちゃなのは、決して女の子のせいだけじゃないんだ、と。
2つの歌を比較して
"Girls" のリリースは2013年、Matty24歳。
"Daughters"のリリースが2004年、John27歳。
(Johnはもっと歳とってから書いた曲なのかと思ったけど、案外若い時の曲だ。)
イギリスのロックバンドボーカルである24歳のMattyが"女の子"問題の渦中に放り込まれて"まったく女ってやつは"とイライラさせられていて、
アメリカのシンガーソングライターの27歳Johnは”女の子だってつまりは誰かの娘なんだよね”と親子関係にまで思いを馳せて達観してみせている、
その対比はなんだかすごく面白い。
私はどちらの捉え方も好きだ。
そしてこんなど直球のタイトルの曲を2人の偉大なミュージシャンに書かせてしまう"女の子"という存在って、やっぱりすばらしいと思うのだ。