スナイパーラブ
最近ハマっているアニメがある。
そのアニメは主人公が高校生で、拳銃の発砲が許可されている世界で、武力により世の中の治安維持に貢献する専門の学校に通っている。
設定だけ聞くと穏やかではないように感じるだろうが、いわゆる萌え系バトルスタイルのアニメである。
何を隠そうか、いや隠すまい、僕は萌え系のアニメが好きである。
特段、昔からアニメがめちゃくちゃ好きだったというわけでは無い。
ごくごく一般的なドラえもんとかクレヨンしんちゃんという国民的アニメは見ていた。
僕らがちょうど中学生くらいのライトノベル小説が流行った頃も、アニメにハマることはなかった。
高校生くらいになり、ある程度人気アニメをちょっと見ていたものの、所詮は嗜む程度だった。
大学生の頃に友達の影響で見たある作品をきっかけに萌え系アニメ業界にジョインすることとなった。
若干記憶が曖昧なものの、恐らくその当時付き合っていた女の子と別れた頃だったと思う。
失恋を引きずっていた時に、たまたまUFOキャッチャーのぬいぐるみになっていたキャラクターを見かけた。
そのキャラクター自体はどこかで見たことがあり、そのアニメ自体も有名で聞いたことがあるくらいの認識だった。
何となく気になって見てみた作品というのが、アニメヲタク業界に激震を走らせた後世に語り継がれし超美少女キャラクターだった。
そのアニメのメインとなるストーリー性に関してはあまり好きではなかった。
だが、そんなことはどうでもよくなるほど、圧倒的に可愛かったのだ。
某美少女は主人公ではなく、ポジションとしても第二ヒロインに該当するキャラクターだが、あまりの可愛さにヲタク達がそのアニメの代表ともいえるほどの地位を祭り上げたのだ。
アニメ業界に精通する者であれば、大方察しがつくだろうが、これ以上は本筋に戻ってこれなくなるのでこのくらいにしておこう。
とにもかくにも、某少女をきっかけに僕は萌え系アニメ業界へと足を踏み外しt…、
間違えた。
足を踏み入れた勇敢な志士なのである。
「萌え系」という言葉も今や死語なのかもしれない。
ひたすらに美少女を開拓しているのである。
そんな美少女屯田兵にアサインされた僕はまた新たにダイヤの原石を発掘したのである。
あ、ちなみに僕はアニメの中でメインではない無口で控えめなツンデレ系の美少女が好きなのだ。
三次元という仮想空間においては、無口な女性はあまり好きではないのだが、なぜか二次元の現実世界においてはそういう女性を好む傾向にある。
余談はさておき、前述したように最近ハマったアニメというのは拳銃を取り扱う学校の物語である。
僕が推す(※)そのキャラクターは拳銃の類の中でもスナイパーライフルを取り扱う女の子なのである。
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※注釈)「推す」:ヲタク業界では特定の人物に対して正妻/本夫として命の限り愛を尽くすことを指す
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いわば、遠く離れた位置から相手を狙い撃つスナイパー(狙撃手)なのである。
たった一発の銃弾に全神経を注ぎ、ほんの一瞬訪れるわずかなチャンスのためにひたすら待ち続ける彼女の瞳は何と美しいことか。
メインの物語には目もくれず、僕はそんな彼女の健気な姿に胸を撃たれていた。
ふと、スナイパーという職業が気になった。
一般的な職業ではなく、軍隊などで任命される特殊な専門職。
自分がスナイパーだったら、どうなるのかを考えてみた。
実際に狙撃手という職業をされていう方もおられるわけで、僕らには想像もつかないほどシビアなお仕事で畏敬の念があり、あくまでファンタジーでファニーな僕の勝手な妄想という前提でお付き合いいただきたい。
まずは、レーシック手術だ。
僕はあまり視力が良くない。
普段はコンタクトレンズをつけて生活している。
スナイパーにとって、”目”は非常に重要な商売道具の1つである。
わずかな一瞬の隙を見逃してはならないそんな状況で、コンタクトレンズがずれて「痛ててて…」なんてへまを犯そうものなら、真っ先に僕が上司に風穴を空けられるだろう。
そんなことにならないためにも、レーシック手術は必須だろう。
スナイパーになると、副業としてゴルフのキャディーもできるだろう。
スナイパーという職業にとって、風は非常に重要なものである。
風向き・風の強さは遠く離れた標的に撃つ銃弾に非常に大きな影響を及ぼす。
ちなみに、スナイパーは数学ができないといけないらしい。
超遠距離の射撃の際には、風に関してだけでなく、標的までの距離・銃口を向ける角度、さらに温度・湿度・時間帯・地球の自転までも要素として計算する必要があるらしい。
ゆえに、高校2年生での理系選択も必須。
ここまで目の前に広がる環境を分析できる力があれば、ゴルフのキャディーとしても十分生計が立てられるだろう。
色々とスナイパーという職業は大変そうだが、その中でも最も苦労するのは移動だろう。
調べてみると、スナイパーライフルというのはだいたい1.4mほどらしい。
ベテランスナイパーともなると、現場にはマネージャーが持ってくるのだろうが、若手スナイパーはそうもいかないだろう。
また、移動もタクシー移動なんてわけにもいかず、朝の通勤ラッシュで満員電車に乗らなければならないこともあるだろう。
と、なると140cmのその大きな銃に対して、隣のサラリーマンの眉間にしわが大集合すること間違いなしだ。
巨大なコントラバスを抱えて電車に乗る女子高生にも親近感を覚えることだろう。
他にもいろいろありそうだ。
毎日スコープを片目で覗かなければいけないわけで、両目の大きさが変わってきそうだし。
周りの友達には、「おしゃべりゴルゴ」とかあだ名付けられそうだし。
射撃体勢はうつ伏せで上半身を起こす状態で、夜の営みで敷き小股(寝バック)の際に仕事を思い出して嫌になりそうだし。
あ、でも珍しい仕事だし、初対面の相手には会話で困ることはないか。
いずれにせよ、スナイパーという仕事は大変そうだ。
と、こんなくだらない妄想をしている間にも世の中では”恋”が始まっている。
今この瞬間、平日の深夜24時にも、世界のどこかでは”恋”が始まっているのだろう。
そんな傍ら、僕は女子高生スナイパーに恋焦がれるという、次元の低いことをしている。
本当にこのままで良いのだろうか。
無駄極まりない妄想などしている場合ではなく、もっと現実を見なければならないのではないだろうか。
僕は目は世間と照準がぶれているらしい。
どうやらスナイパーには向いてなさそうである。
水瀬