聖なる性の正なる世


僕はずっと前から決めていることがある。


「30歳になったら、何かしらの形でアダルト業界に恩返しする。」


ということである。



何を急に言い出すのかと、優雅に嗜んでいたハーブティーを吹き出してしまった読者の方もいるかもしれない。


だが、そんな悠長なことは言ってられない由々しき問題がこの日本で起ころうとしているのである。



我々、健全な青少年にとって欠かせない存在。


そう、それがアダルトの世界。



これは何ら恥ずかしいことではない。


年頃の青少年にとっては切っても切れない関係にあるもの、それがアダルトの世界である。


また、男性に限った話ではなく、女性も”性”に興味を抱くものである。



人間の三大欲求の中にちゃんと”性欲”が明記されているわけで、人間が”性”に対して興味を持つことは人類史におけるごく自然な流れである。



とにもかくにも、多くの人間は”性”と深く関わっている。


そして、そこにはアダルトビデオの存在が大きいことは言うまでもない。




そんなアダルトビデオ業界は近い将来大きな危機を迎える。




”無料エロ動画”の存在である。




恐らく、健全な若者であれば、誰しもが愛してやまない六文字だと思う。



この崇高な六文字に対して、足を向けて寝られる若者などこの世に一人もいないだろう。




しかし、我々が忠義を尽くそうと誓ったあの方(無料エロ動画)の存在こそが、後の己の首を絞めるものになっているのだ。




恐らくであるが、25歳以下のアダルトビデオを見ている男女の中で、課金して視聴しているという人は恐らく1%に満たないだろう。


99%の人々が無料でその恩恵を受けているだろう。


恥ずかしながら、筆者の僕もその99%の一人である。



しかし、時代の流れとして、仕方のないことなのかもしれない。



言い訳にしか過ぎないが、我々の世代には世の中が発展し過ぎていた。



かつての先人達は、労力を費やしリスクを背負い、その上に対価を支払うことで、”性”に対する恩恵を受けていた。


しかし、我々デジタルネイティブ世代の思春期には、あまりに便利過ぎるスマートフォンという革新的発明品がもう既に存在していた。



高校生になる頃には、クラスの全員がスマートフォンを一人一台持っていた。


”無料エロ動画”というものが極々身近に存在してしまっていたのである。




最大の問題点は、一昔と異なり今の若者にとっては「アダルトビデオにお金を費やす」という意識が一切根付いていないのである。




アダルトメーカーにとっては大変由々しき問題である。




テレビやYoutubeのようにユーザーが無料で使えるようなビジネスモデルのコンテンツは昔から存在する。


しかし、これらは広告収入ありきで成り立っているものである。



インターネット上に乱立しているまとめサイトというのは、アダルトメーカーが運営しているものではない。


いわゆる違法ダウンロードによるコンテンツで溢れている。


もちろん、国も法改正等により規制強化を行っているものの、日々進んでいく情報技術の進歩に追いつくことはないだろう。



アダルトメーカー側も数年前から対策として、定額制のサブスクリプションモデルの動画配信サービスを開始している。


とはいえ実情として、課金せずとも見ることが簡単にできるために、ほとんどその効果は見られないだろう。



アダルトビデオ業界はもはや紛れもない斜陽産業なのである。



では、ここまでアダルト業界が脅威にさらされているにも関わらず、あまり議題に上がらないのかと思う人もいるだろう。



これはあくまで僕の推測であるが、今現在アダルト業界が持ちこたえているのは、上の世代がデジタル化に疎い世代であるために、未だにDVD等で見ている人が多いからだと思う。


いくらスマホの普及率が上がったとはいえ、「アダルトビデオはDVDで見るものだ!」という世代が残っているからだと思う。



それゆえ、彼らのアダルトビデオのレンタルや購入などの売上により、まだ業界は持ちこたえられているのだと思う。



しかし、ここから先の将来が問題である。



前述したように、我々デジタルネイティブ世代は「アダルトビデオにはお金を使わない」という意識が根付いてしまっている。


となれば、我々世代がこのまま歳を取り、いわゆるアナログ世代が”性”を引退してしまえば、一体誰がアダルト業界を支えるのか。



そんな未来に待ち受けるは、さらなる負の循環である。



アダルトビデオの売上の減少により、アダルトビデオの制作費が削られてしまう。


制作費が削られると作品自体の質は低下し、さらにセクシー女優の方々の収入も減少する。


アダルトビデオに出演しても稼げないとなれば、女優さんの数も少なくなり、さらに作品の質が落ちてしまう。


アダルトビデオに満足できないとなれば、”性”を発散する場が失われることになり、性犯罪の増加に繋がってしまう危険性だってある。




アダルトビデオ業界は大きな岐路に立たされているのである。



数年後に約束されてしまっている大きな危機。




もちろんこうした危惧は業界人はずっと前からされておられることだろう。


様々な工夫や対策に頭を抱えておられるだろう。



だからこそ、


大変お世話になっている立場だからこそ、我々ユーザー側が意識を改めていく必要があると思う。




最も”性”に盛んな時期に貢献することは正直厳しいと思う。


金銭的な余裕も無いし、学生時代になんてそこまで経済について考えることなどできないだろう。



だからこそ”性”においては、税金とは逆のシステムで上の世代が下の世代を支えるような構造になるべきである。



僕は30歳になれば、アダルト業界に恩返しをする。


30歳にならずとも安定して収入が得られるようになれば、もっと早くから。


たとえ”性”に興味が無くなっていたとしても、何らかの形で恩返しをしたいと思う。



定額課金型サービスへの加入かもしれないし、もしくは株式保有かもしれない。


何らかの形でこれまでの感謝の意を込めて、恩返しをしたいと思う。



若い間に聖なる存在として崇めた”無料エロ動画”。


そんな我々の”性”を支えてくれたアダルトビデオ業界。


そんな彼らを正しい在り方で支え返せる世の中へ。



それが我々デジタルネイティブ世代だからこそ、求められる”性”に対する”誠意”なのではないだろうか。








水瀬




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