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【小説】くの一が如く(14)

第14話 名古屋アジア大会 2026 飛躍

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 大学4年生となった2026年、3人は日本選手権で上位進出を果たし、アジア大会に出場することが決まった。個人種目だけでなく、日本代表としてリレーにも出場することになった。

 3人にとって初めての国際大会出場。しかも開催地が日本の名古屋だった。

 日本代表としてオリンピックを目指すのにまずはアジアで上位を狙いたい。是非地元でメダルをと意気込んでいた。

 リレーにはスーパー高校生の鈴木結衣をアンカーに、近年低迷していた女子短距離界に光が見え始めていた。

 日本で開かれる国際大会に初めて登場する3人に児童養護施設の注目度も高まり、光が岡園からも100mのある前半を直子と一部の子どもたちが、リレーのある後半を本橋と他の一部の子どもたちが東京都練馬区から新幹線で名古屋まで応援にきた。関西圏からも児童養護施設の職員と子どもがきたり、地元愛知県では児童養護施設以外にも里親と子どもや自立援助ホーム、児童自立支援施設からも人々が応援にかけつていた。

 アジア大会は五輪や世界陸上とは異なり、個人種目は1種目2名まで参加が可能である。

 100mに鈴木結衣とさくらが出場

 200mには七海と陽菜が出場

 そして4*100mリレーにこの4人が出場

大会1日目

100m 予選 4組3着+2

3組目 2位 さくら11.47

 鋭い飛び出しを見せて80mまで1位だった。

4組目 1位 結衣11.36

 30mでトップにたつと、そのまま余裕でゴール。

大会2日目

100m 準決勝 2組3着+2 

1組目 1位 結衣11.34  3位 さくら11.45

 さくらが鋭い飛び出しを見せ、70mで結衣が逆転し1位でゴール。さくらは3位ながらもプラスで拾われて決勝進出


100m 決勝  

2位 結衣11.22、5位 さくら11.39

 スタートはさくらがトップにおどりでるが、40mでバーレーンの選手に交わされる。後半結衣が猛追するも追いつかず2位でフィニッシュ、銀メダル。さくらは5位。

大会3日目

 彼女たちは出場種目がなく、主に休養に充て、30分程度軽くバトン練習を行った。

大会4日目

200m 予選 4組3着+2 

1組目 3位 陽菜 24.40

 スタートで出遅れるものの、150mから追い上げて3位になり準決勝進出。

3組目 2位 七海 24.34

 スムーズなコーナリングで終始2位をキープし、そのままゴール。準決勝進出。

準決勝 2組3着+2

1組目 4位 陽菜 24.06

 スタートで遅れ気味で、直線にでてから粘るも、3位に入れず4位でフィニッシュ。プラスでも拾われず、準決勝敗退。

2組目 6位 七海 24.13

 コーナーは安定して3位で直線に入るが、後半伸びずかわされて6位。準決勝敗退。

 ともに敗退で決勝進出ならず。

大会5日目

200m 決勝

 陽菜、七海とも決勝に残れず、日本選手の出場なし


4*100mリレー 予選 2組3着+2

1組目 1位 日本 43.69

 さくらが先頭でバトンをつなぎ、陽菜、七海と順位をキープ、結衣へのバトンパスですこし詰まったが、差を縮められることなく1位でゴール。

 決勝進出を果たした。


大会6日目

4*100mリレー決勝

 陸上の最終日。男女ともに決勝に残り、超満員のスタンドは大盛り上がり。光が岡園から本橋と子どもたちが応援に来ていた。女子は実力的にはバーレーン、中国には叶わないとされるが、どこまで食い下がれるか。

 4レーン バーレーン、5レーン 中国。日本は外側7レーン。

「オン・ユア・マーク」

「セット」

プァーン!

 さくらが好スタートを切る。1位で陽菜へバトンパス。バーレーンに抜かれるも、くらいついていき2位で七海へ。七海が中国に並ばれて、ほぼ同時でアンカー結衣へ。結衣が中国と競る。バーレーン先頭でゴール。日本と中国が並んでゴール。スタンドが静まりかえり、電光掲示板に結果の表示がでるのを待つ。2分後に出た!

2位 日本43.08 日本新!!

 中国にわずか100分の1秒差で勝り、銀メダル。スタンドは一気に大歓声がこだました。

「やったー、やったー!!」

 それぞれの走り終えたところからゴール地点付近に戻り、全員が揃った。

「日本新でたね!」
「信じられない」

 陽菜は泣いている。

「やっと、やっとみんなでだせたね」
「うん」

 結衣は自分以外のメンバーの貢献でリレーで初めて世界と互角に戦えて、手ごたえを感じていた。このメンバーがレベルをあげれば、世界陸上や五輪でもやれると。

 4人がスタンドをみながら日の丸の国旗を背負ってビクトリーランをしていると、バックストレートのスタンドで応援していた本橋と子どもたちの姿が見えた。

「おめでとーーう!!」

 本橋の低い声が聞こえた。

「本当にありがとう」

 さくらと七海の目にも涙がこぼれた。

 アジア大会とはいえ、日本開催の国際大会で自分の本意でなく光が岡にきて施設で一緒に暮らした3人が日本代表でリレーでメダルをとるなんて夢のような話で、本橋は号泣していた。

「よくやった、よくやったよホントに、うっ、うっ、うっ」

 スタジアムのカクテル光線の下、この日の主役は、金メダルをとった日本男子チームよりも、長らく低迷していたが、銀メダルの躍進を遂げた女子チームであった。


つづく


◎登場人物

中川さくら/さくちん 158cm あねご

桜井 陽菜/はるはる 175cm 物静かな美人

田原七海/みーなな 166cm 知恵袋

鈴木 結衣/ゆいてぃー 172cm 孤高の天才 日本人とウクライナ人のハーフ

本橋 光が岡園指導員

直子 光が岡園保育士



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