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大好きで、大嫌いで、
風に乗って金木犀の香りがふわっと顔にぶつかってきた。自転車を漕いでるときにどこからとも無く香ってくる、この香り方が金木犀の魅力をいちばん惹き立てていると思う。
現在、月に数回あるかないかの体調ノー不良タイムに突入している。頭はそれほど痛くないしお腹の調子も悪くない。この機を逃すまいと予定を入れて正解だった。
ナミビアの砂漠を観に来た。ムビチケの割引期限が切れそうなことに気づいた先日、慌てて購入した。友達が「絶対に見た方がいい」といっていたから選んだ。べいびーわるきゅーれと悩んだけど、一旦こっちで。
映画の内容は最初から最後までずっと訳がわからなくて、わかりたくて、わかるような気もして、けどわかったようなふりをするのは違くて、分からないことが心地よかった。つまりは観に来て良かった。
見終えた後、劇場の階段をゆっくりと、1段ずつ、余韻に浸りながらだらだら降りた。
出入り口から外を見るといい感じに日が暮れていた。このあとの予定地まで歩いちゃおうかな、と外に出たら雨が降っていた。天気予報など見ていないので当然傘は持っていない。けど、どうしよう、絶対に歩きたい。別に濡れて歩いたって構わなかったし、むしろ歩きたいまであった。どちらにせよ最寄り駅までは徒歩なので、とりあえず歩を進める。
映画の主人公・カナが来ていたみたいなざっくりニットを着て、雨なんてどこ吹く風みたいな顔して歩いてみる。いい映画を見た後は、自分が作品の登場人物になったような悦に浸れる。肌と服と濡らす雨粒が、嫌じゃなかった。雨が嫌じゃないと思える自分は嫌いじゃない。
カナはずっとひとりにみえた。自由で、感覚的で、本能のままで、素直。それが彼女の生き方で彼女もそれを良いと思っているのだろう。と思っていたけれど、オンライン診療を受けている場面でそうではなかったと気付かされる。少し悲しくなった。カナがカナ自身を病気かもしれないと考え、調べ、診療やカウンセリングまで辿り着いた事実が悲しかった。カナはカナのままでいいのに、と思う程には、いつの間にかカナに惹かれていた。
最初、わたしはカナのはじめの彼氏(ホンダというらしい。名前は劇中ほとんど出てこなかった)みたいな人って理想的じゃないか!?と本気で思った。何をしても怒らず、身の回りのことをきちんと支度してくれ、世話を焼いてくれ、嘘をつかず、自分に非があると感じたら謝れる。いい男じゃないか。何故この男を捨てあんな軽薄そうな浮気男に乗り換えたのか……と疑問を抱いていた。けれど作中、カナを待ち伏せ、俺は君のことが全て分かっていると彼女に詰め寄り、車に連れ込み謝りながらも大きな声を上げ、逃げ出す彼女の背で泣き潰れるホンダの姿を見て、彼のそれは愛じゃなくて依存だったのだと気付かされた。すると私が魅力的に感じてしまった彼の行動は執着や依存由来のものであり、私が欲しているのもイコールそれら、ということになる。私は一体いつになったら依存に依存することをやめられるのだろうか。自分のこういうところがとても気持ちが悪いとおもう。
映画の後は、初めての占いに足を運んだ。突然占いに行ってみたくなって、そのまま調べて、思い立って予約したのがつい昨日のこと。初回限定10分、延長なし。話しながら少しだけ泣いた。短すぎる時間だったけど、自分の中でいろいろ整理できた。意外とその気になればスピリチュアルに向いているのかもしれない。
名古屋の歩行者は信号を守らない。点滅して完全に赤に変わった後でも知らん顔して横断歩道を渡ってくる。車さえ通ってなければ反対方向の信号がガッツリ青でも渡る。あまりに堂々としているのでこちらが間違っているのかとすら思う。けれど私は絶対に赤信号で渡らない。周りに誰がいようといまいと関係なく。別にこんなの何も誇れることでもないが、こんな小さなことが最低基準の自己を保つのに必要なラインだ。
やっぱり私は、ひとりで行動しているときの自分が大好きだ。けれどあまりに1人のときの自分が好きすぎて、今後の人生でこれを超えるような居心地の良さを感じられる程の関係性を誰か一人と築けるとはとても思えない。誰かの前でもこのままの自分で居られたらいいのに、このままに近い自分で居られる相手もいるのに、じゃあずっとずっとその状態でいられますかと問われると首を振ってしまう。
でも、じゃあ貴方はずっとひとりで過ごしててくださいね、となるとそれも無理で。できることなら誰かを抱きしめたいし、抱きしめられたいし、触れ合いたいし、カナとハヤシみたいな取っ組み合いの喧嘩をしたい。私はどうしようもなく人が好きだ。それと同時に、全ての人間をうっすら信用できていない。この矛盾がくるしい。
ひとりは楽で自由だけど不意の寂しさがしんどい。ふたり以上は楽しいけど知らないうちに疲れている。同時に満たすことはできない。だからその都度どちらかを選ばなければならない。選択はそれだけでエネルギーを使う。いちいち考えず必要に応じて上手く切り替えていけばいいだけの話なんだろうけど。