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鈴ヶ森刑場とお題目 品川区 日蓮宗鈴森山大経寺 私の百寺巡礼142
鈴ヶ森処刑場。歴史の中では知っていたが、その隣に供養のお寺が建てられた事は、今回訪れて初めて知った。
京急電鉄の夏詣御朱印巡りの途中で見かけたのだ。
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大経寺は、史料によると、明治4年(1871)刑場廃止と同時に「旭松庵」と称し、昭和17年(1942)品川蓮長寺42世慈洽院日完上人を開山として大経寺としたという。
江戸には、東海道沿いの「鈴ヶ森刑場」と日光街道沿いの「小塚原刑場(荒川区南千住2丁目)」、 八王子・浅川河原(八王子市大和田町)の「大和田刑場」と3ヶ所の処刑場がありましたが、 慶安4年(1651年)に東海道沿いに設置された刑場が鈴ヶ森刑場です。 この鈴ヶ森刑場で処刑された人たちの供養のために建てられた寺が大経寺であり、 そのため刑場跡地には数多くの供養塔が建てられています。(お寺の案内より)
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処刑場跡に立つお題目。
鈴ヶ森で処刑された者は、歌舞伎や講談に登場する平井権八、 八百屋お七、天一坊、白木屋お駒など、有名な人物も数多くいますが、 大部分は記録にも残らない無名の人物だったようです。 江戸幕府の基盤になっていた「士農工商」の身分制度を維持していくためには 絶対であるお上の役人が事件を解決できないということは許されないことだったのです。 事件が迷宮入りしそうなとき、まず犯人に仕立てあげられたのは、決まった家を持たない 「無宿人」たちでした。彼らは、すべての犯罪に対して罪人をあげなければならないという事情だけで、 無実の罪で殺されていったのです。事実、そういう受刑者が全体の四割ほどもいたといわれています。 当時の拷問は凄まじく、無罪を主張し続けるのは、不可能に近いことだったのです。 江戸時代、「五人組」の制度などで各村や町の共同体は強く結び付いていましたが、 はからずしてそれは、まわりの者からいわれのない罪を押しつけられることのないようにという、 自衛のための一面も持っていたのです。それゆえ「村八分」にされることを非常に恐れていた民衆たちは、 家の者から捕らわれ人が出ると、処刑を待たずして、その者を「勘当」してしまうこともありました。 「勘当」して戸籍を抹消してしまうことによって、一族の者に害を及ぼすのを避け、 家の体面を保ったのです。けれども中には、不要な死人を出さないために、 他の罪もかぶって処刑されていった義賊もいました。 難を逃れた民衆たちは刑場の陰で手を合わせ、 名も知らぬ恩人の冥福を心の中で祈ったのです。(お寺の説明より)
今では冤罪やら警察、検察の取り調べについてはかなり厳しくなり、取り調べにはビデオ録画などされている。無実の罪での起訴なども減っているのではないかと思う。戦後すぐの時期の冤罪事件などをたまにネットや新聞で見かけるが、どうしても犯人を上げなければならない。その使命感とやらに怖さを感じてしまう。
江戸時代の処刑なども99%有罪確定がどれくらいいたのだろう。そうか。家を持たず、無実の罪で処刑された人々。当然、江戸時代に始まった檀家制度の枠からは外されているわけだから、供養をしてくれる菩提寺もない。そんな人々の為にお題目を唱えて手厚く弔ってくれたかつての僧侶の姿。そんなものを思い浮かべて涙が出てきてしまった。
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本堂は工事中で観られず、残念であった。
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夏の盛りに各所で見かけるサルスベリの花が仏を弔うように鮮やかに咲いていた。
鈴ヶ森 無縁仏に 百日紅
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日蓮宗鈴森山大経寺
品川区南大井2-5-6
京急線大森海岸駅より徒歩5分