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山吹に囲まれた寺 奈良県斑鳩町 聖徳宗法興山中宮寺 私の百寺巡礼289
中宮寺(ちゅうぐうじ)は、奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺北にある聖徳宗の寺院。山号は法興山。本尊は如意輪観音。法隆寺に隣接し、聖徳太子が母后のために創建した尼寺である。開基(創立者)は聖徳太子または間人皇后とされる。現存で日本最古の刺繍「天寿国繡帳」(天寿国曼荼羅、国宝)を所蔵する。
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宇陀市にある室生寺は「女人高野」と呼ばれる寺であるが、こちらの中宮寺も女性の寺という印象を受けた。
多分、聖徳太子のお母様の為のお寺、という事からかもしれない。
山門をくぐった時に、あー、来る季節を間違えたな、と思ったのは、庭いっぱいの山吹の群れに出逢ったからだ。
ほんの少しではあるが、咲いている木もあった。
庭で山吹の手入れをされているスタッフもおられた。
あー、残念。受付を通るとすぐ藤棚もあり。
4月中旬くらいが奈良県では山吹は見頃なようだ。
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花のような美しい友人に山吹の御守を土産に購入した。
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五木寛之先生の本から一部紹介したい。
法隆寺夢殿の隣にひっそりとたたずむ中宮寺は。創建された時は、現在地から東に数百メートル離れた位置にあった。当初は、約30mの高さの五重塔がそびえ、七堂伽藍を有した大寺院であったとも言われている。
しかし、すでに平安時代には荒廃し、鎌倉時代に再興されたが、再び火災の為に伽藍を失ったという。現在の本堂は、昭和43年に完成した鉄筋コンクリートの建物である。創建時の面影は全く残っていないが、本堂の周囲の池の水面に、山吹の黄色い花が映っているのは美しかった。
中宮寺は16世紀半ばから、皇族の女院を寺主とする門跡尼寺になっている。現在の宗派は、法隆寺と同じ聖徳宗だ。尼寺と
いうことで、やはり優美な佇まいである。母性的、女性的な感じがするのは、聖徳太子が母への思いをこめて造った寺だからだろうか。
奈良には、東大寺や法隆寺など圧倒されるような寺が多い。その中で、中宮寺はひっそりと撫で肩で建っているようだ。境内には人も少なく、静寂が漂っている。
歴史上のヒーローでありながら、悲劇の主人公でもある聖徳太子。中宮司は、そうした太子の光と影の両面を、訪れる人たちに静かに語っているようでもある。
聖徳太子の時代の斑鳩は決して穏やかな里ではなかった。
修羅の巷だったからこそ、心に深い罪業意識を抱えていた権力者たちは、競うように寺院を建て、仏像をつくった。そうすることによって、彼らはこの世にないもの、正義と平和のある国を夢みたのだろう。
昨日の斑鳩は、今日の斑鳩ではない。
そして、明日の斑鳩もまた、今日の斑鳩ではあるまい。
その一方で、ここに千数百年も前からずっと存在し、歴史の中で変わらないものもやはりあるのだな、という気がする。
ここには、千数百年前から変わらない花が咲き、うららかな日射し浴びている斑鳩がある。
斑鳩の一角で長い歴史を通して、ずっと続いてきた時間の重み。
その重みというものを感じることができて、私は不思議に充実した気持ちを感じた。自分の寿命とは別の意味で「大きな歴史の寿命」に触れたという実感があったのかもしれない。
聖徳宗法興山中宮寺
奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺北1丁目1−2
JR法隆寺駅から徒歩20分