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大草原の小さな家と自然~読書記録63~

ローラ・インガルス・ワイルダーが好きで、ローラゆかりの地、北米を旅し、現在はカナダ・トロントに移住された服部奈美さんのエッセイとなる。
ローラについて書かれているアメリカの研究家や、翻訳家の恩地三保子先生、谷口由美子先生らと違い、いくら調べても、この本にある以外の情報は見つからなかった。
年齢であるとか出身校だの不明であった。

服部奈美さんは、野鳥観察が趣味だそうで、鳥のみならず、野生動物にも詳しく、自然の素晴らしさを感じさせるのものであった。

そして、この本は、他のローラのファン、研究家の書いたものとは違った一面を書いている。
それは、アメリカとは移住してきたアングロサクソン、白人の開拓地ではなく、元から住む先住民の土地であり、国である。ということ。

私は、かつてトランプ前大統領が「アメリカファースト」と謡い、白豪主義を主張することに対しての違和感があった。
トランプ氏の父はドイツ系アメリカ人だ。つまり、ヨーロッパからの移住。アメリカ第一主義?元は先住民が住んでいた土地を奪い取ったのに、白人第一とは、私の考えとは相いれなかった。だから、大統領時代に、日本人、アメリカ人で、Twitterアカウントのアイコンをトランプ氏にしている方を信用できなかった。

開拓の為に犠牲になった動物が沢山いる。
オオカミは、アラスカなどを除き、ほぼ全滅。
バッファローは、元々のアメリカ先住民が生きていくのに欠かせないものであった。皮も骨も膀胱も全て利用された。先住民は乱獲をしなかった。
バッファローがいなくなれば、インディアンもいなくなる。という強硬姿勢の元、むやみな乱獲で今は北米では殆ど見られないそうだ。
ビーバーの皮なども毛皮として売る為に乱獲。
アメリカ開拓の歴史は、そういった負の面もある。夢物語ばかりではない。
そんな事をこの本では訴えていたのだった。

「バッファローはインディアンの家畜だったので、白人が全部殺してしまったのです」~シルバーレイクの岸辺で~

キリスト教、聖書を背景に持つ西洋では大自然は悪とされ憎悪と恐怖の対象であり、その伝統を背負っていたアメリカ人(アングロサクソンの移住者)にとって原生林におおわれた新大陸は悪魔の徘徊する地に他ならなかった。神の御名において、開拓者は呪われた大地を乳と蜜の流れる文明の地に変える為に西方をめざしたのだ。しかも人間は自然界に君臨する存在であって、人間に役立つ動物のみが善であると考えていた。

インディアンと白人の軋轢は、それぞれの価値観の違いだったのだ。
開拓者は、「明白なる神の意」の下に、文明社会を築いていった。大自然と共生する先住民とは価値観が違っていたのだ。

「大草原の小さな家」シリーズは、そういった目で観ると、あまりにも先住民を野蛮に描いている。ある種のレイシズムもある。

自由と独立はアメリカの礎ともいえる概念です。それはフロンティア(開拓)を通じて育まれたと言われています。「自由とは、「大自然の法」と、「大自然である神の法」を守り、自分の良心のおもむくままに生きる事」とローラは述べています。「大自然の法」と「大自然である神の法」とはアメリカ独立宣言にある言葉です。
独立戦争の勝利に酔いしれるアメリカは強力なナショナリズムを必要としていました。彼らはヨーロッパとの差異を強調するものを渇望していたのです。そして大自然に白羽の矢を立てて「国の誇り」を仕立て上げました。しかしながら現実は、それを否定し、制服することでアメリカは築かれたのです。

全ての人間は動物であり、全ての動物は大自然であるー人間は自然の一部であるということをローラは学んだのでした。

大自然の一方的な破壊という冒涜の上にアメリカは造られたのでした。

「私は今の子供たちに、物事の始まりをもっとわかってもらいたい。目に見えるものの裏に何があるのかを知ってもらいたい。何が現在のアメリカを築いたのかを知ってもらいたい。そう思って、このシリーズを書いたのです」
ローラの言葉。



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