ローマ帽子の秘密~読書記録446~
ローマ帽子の秘密 エラリー・クイーン (著), 越前 敏弥 (翻訳), 青木 創 (翻訳)
無敵の天才探偵エラリー・クイーン、華麗に登場!
観客でごったがえすブロードウェイのローマ劇場で非常事態が発生。劇の進行中に、NYきっての悪徳弁護士と噂される人物が毒殺されたのだ。名探偵エラリー・クイーンの新たな一面が見られる決定的新訳!
国名シリーズ1作目の新訳。
今更ながらの新訳。解説にもあるが、既存の翻訳書は翻訳の部分で誤訳などがあり、その辺りの不備を改善する、という意図もあったらしい。
エラリー・クィーンは、フレデリック・ダネイ(Frederic Dannay、1905年10月20日 - 1982年9月3日とマンフレッド・ベニントン・リー(Manfred Bennington Lee、1905年1月11日 - 1971年4月3日)が探偵小説を書くために用いた筆名の一つ。ダネイとリーは従兄弟同士であり、ユダヤ系移民の子である。上記の彼らの個人名もそれぞれペンネームであり、ダネイの本名はダニエル・ネイサン 、リーの本名はマンフォード・エマニュエル・レポフスキー 。
小説シリーズでは、エラリー・クイーンは著者の名前だけでなく物語の名探偵の名前でもある。なお共作の手法は、まずプロットとトリックをダネイが考案し、それをリーに梗概などの形で伝え、2人で議論を重ねたあとリーが執筆した。2人がこの創作方法をとるようになったのは、プロットを思いつく能力は天才的ながら文章を書くのが苦手なダネイと、文章は上手いがプロットが作れないリーの2人の弱点を補完するためであった。
確か、エラリー・クィーンに初めて触れたのは中学校の図書館だったと思う。当時、熱中したのを覚えているのだが、何分、幼い子どもゆえ、わからない点も多くあった。
そんな私に今回の新訳は新たな感動を与えてくれた。
何よりも読みやすい。わかりやすい。
と、訳の話はさておき、話の内容はと言うと。。。
連日大入り満員を続けていたニューヨークのローマ劇場で、上演中に一人の観客が「人殺しだ……殺された」とうめき声を残して死亡した。ただちに劇場の出入り口は封鎖され、ニューヨーク市警のリチャード・クイーン警視と、警視の息子で推理作家のエラリー・クイーンが捜査を開始する。
やがて、被害者モンティ・フィールドが強請りをやっていた悪徳弁護士であること、殺害に使われた毒物がガソリンから容易に生成可能なテトラエチル鉛であること、被害者が持っていた飲み物からは毒物が検出されなかったこと、さらに被害者が殺される直前まで持っていたシルクハットが紛失しており、劇場内のどこにもないことが判明する。
エラリーは、犯人は被害者から強請られていた人物の一人であり、犯人を強請るための書類がシルクハットの中に隠されていたため、帽子ごと持ち去らざるを得なかったと推理する。そしてついに、エラリーは犯人を突き止めるが、物的証拠や目撃証言が全くないため逮捕に踏み切れない。
万策尽きたかに思われたが、犯人をもう1回強請れば、また同じ毒を持って殺しにくるのではと考えつく。その提案を聞いたクイーン警視が犯人に罠を仕掛ける。
殺された人間が1人だけ。ということで、昨今のミステリーでは連続殺人も多く、物足りない人には物足りないかもしれない。
この本で書かれている動機。これも当時のアメリカならでは、なのかもしれない。
ネタバレをしてしまうと。犯人が被害者に強請られていた理由。それは、遠い先祖に黒人の血が混じっている。それだったのだ。見た目は白人にしか見えない、そんな人間がだ。日本人には理解出来ないなと思った。
又、殺された悪徳弁護士は、筆跡を真似して、恐喝ネタの原本の写しを手書きで作っているのだ。だが、21世紀の今なら、コピーはあるし、パソコンで簡単に作成できる。
ニューヨーク市警の警視が一般人である自分の息子を現場や聞き込み捜査に付き合わせる。これも今は現実にはムリであろう。
と、そんな事を言っていたら、小説が成り立たないか。
ともかく、エラリー・クィーンの新たな魅力と面白さを教えてくれた越前先生に感謝だ。