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マイ・ロスト・シティー (村上春樹翻訳ライブラリー)~読書記録321~

村上春樹翻訳ライブラリーのスコット・フィッツジェラルド作品である。


表題になっているマイ・ロスト・シティーはエッセイであるが、これを読むと20世紀のアメリカの自由と自己責任、一種独特な空気がわかる。

マイ・ロスト・シティー (村上春樹翻訳ライブラリー)  スコット・フィッツジェラルド

収録作品

フィッツジェラルド体験(村上春樹著)
残り火
氷の宮殿
哀しみの孔雀
失われた三時間
アルコールの中で
マイ・ロスト・シティー

優しさと、傲慢さと、抗いがたい自己破壊への欲望。一九二〇年代の寵児の魅力を余すところなく伝え、翻訳者・村上春樹の出発点ともなった作品集をライブラリーのために改訳。『哀しみの孔雀』のもうひとつのエンディング、「ニューヨーク・ポスト」紙のインタヴューを新収録。

フィッツジェラルド,フランシス・スコット
1896年、ミネソタ州生まれ。プリンストン大学を中退し陸軍に入隊。除隊後の1920年、処女長篇『楽園のこちら側』を出版、全米ベストセラーとなる。同年、ゼルダ・セイヤーと結婚。長篇『美しく呪われしもの』『グレート・ギャツビー』などが高く評価され、華やかで奔放な暮らしぶりで時代の寵児となるが、世界恐慌、ゼルダの病などが生活に影をおとし始める。失意と困窮のうちにアルコールに溺れ、40年、心臓発作で急死


やはり、翻訳者の力が面白くさせているのではないだろうか?と思えてしまった。とにかく、リズミカルに読み進めていくことが出来るのだ。
ただ語学が出来る人と日本語が上手な人の違いだろうか。
そういう点では、意訳と言われようと私は村岡花子が好きなのだ。

表題になっている「マイ・ロスト・シティー」。これはニューヨークをフィッツジェラルドが表現しているのだ。当時のニューヨークは新しく誘惑の多い街で、自由そのものだった。今のアメリカも自由だがそれ以上なのだろうか。
大きな街で疲弊し、時代の波にのまれアルコール依存症になってしまった作家の姿が克明に描かれていた。

もしかしたら、他の翻訳者なら手に取らなかった作家かもしれない・・・


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