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法隆寺伽藍を巡る①〜最後の棟梁、西岡常一「木に学べ」をガイドに!

こんばんは!本日もおつかれさまです。

ベリーダンサーのShala(シャーラ)です。

連日雨が続いていますが、お元気でしょうか。

法隆寺を訪ねました。法隆寺最後の棟梁、西岡常一さんの著書「木に学べ」を読みながら向かいました。法隆寺の建築としての素晴らしさが、話し言葉で綴られ、まるでご本人自らが案内してくださっているようです。

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Amazon 木に学べ

第三章 法隆寺の木

 きょうは法隆寺を案内しましょ。
 わたしが、今まで話したことが実際にどうなのかを見てください。
 いろんな人が、ぎょうさん法隆寺を見にきますが、ただ世界で一番古い木造建築だからって見にくるんじゃ、意味がありませんで。
 古いだけがいいんやったら、そこに落ちてる石ころのほうが古いんや。法隆寺は千三百五十年、石ころは何億年や。
 だから、古いからここを見にくるんじゃなくて、われわれの祖先である飛鳥時代の人たちが、建築物にどう取り組んだか、人間の魂と自然を見事に合作させたものが、法隆寺やということを知って見にきてもらいたいんや。

「木に学べ」より

冒頭、案内はこんなふうに始まります。言葉に一切無駄がなく、グイグイ引き込まれるのは、棟梁としての日々、ひたすら意識を研ぎ澄ませて生きてこられたからなのだろうと。所作にも無駄がなかったに違いないと、そんなことを思いました。

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この角を曲がると、南大門

入り口の南大門の手前で、アプリコット色の生き物に遭遇しました。

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なんと、イタチの子ども!

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リスにあらず

小学生の頃に一度見たことがあったかなというイタチ。自然が豊かなのでしょうね。エキサイティングな出来事に、一気に気持ちが上がりました。

いよいよ、南大門へ。

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南大門をくぐると、中門と五重塔が

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手水の龍、なんだかセクシー

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飛鳥時代の中門

西院伽藍のうち、中門と回廊、五重塔と金堂は、飛鳥時代の建築で、その向こう側にある大講堂のみが、のちの藤原時代のもの。係の方曰く、「そら(両者は)全然違いますよお!」とのこと。

西岡さんによると、現代からはだいぶ遡った室町時代の建築構造ですら、もうだめなのだとか。下は、同じ「木に学べ」より、上に続く文章です。

 建築物は時代が新しくなるにつれて構造の美しさというものが失われてきとるのや。
 その失われていく様子を、法隆寺では一目で見ることができます。
 この法隆寺の建物には、創建当時の飛鳥のものもあれば、藤原時代のもの、鎌倉、室町、江戸時代、大正、昭和と各時代に修理されとるのやが、その時代時代の美に対する考え方や、建築物をどう考えとったかが分かるわけや。

そして、どこがどう違うのかが、具体的に一つ一つ語られていくのですが、実際に足を運んでみて、とてもよく理解できました。

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中門をくぐると、飛鳥時代の回廊

エンタシスの柱のふくらみといい、建立当時で樹齢およそ千三百年だったというヒノキの緻密な年輪といい、優しく吹き抜ける風といい、おおどかな感覚に包まれ幸せです。

本では、数ある木々の中で唯一、千数百年以上の風雪にも耐えるヒノキという木が、なぜこうも強いのかが語られています。ヒノキは、南限を台湾の阿里山、北限を福島県として、その間にしか育たないのだとか。

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美しい!

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年輪が細かければそれだけ樹齢も!

飛鳥時代の職人たちは、表面をあれこれ飾るより、建物を千年以上もたせるための「構造」を最優先、最重要と捉えたとのこと。

目の前の、シンプルで飾り気のない建物の随所に、彼らの心意気を感じ、その素朴な姿をこそ、飛鳥時代の建築の一番の魅力として受け取ることができました。

事前に調べなくとも何かは感じたでしょうが、この世界最古の木造建築の、昭和の大修理を請け負い、解体から全てを行なった棟梁の言葉を聞いた(読んだ)後では、感じ方が全く違うのでした。

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節などもそのままに

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係の方曰く「色々修理されたんでしょうなあ。」

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構造と力学が重視されている例として。横に渡された梁は、虹梁(こうりょう)といい、ゆるいカーブを描き、エンタシスの柱とともに、回廊の美を形作っています。

以下、同書より、虹梁について。

 この梁を「虹梁」といいますが、いかにも虹の一片を切り取ったような美しく優しい形をしてます。これが飛鳥の良さです。虹梁の上に「束」があって、棟を支えていますが、この束を人型束(ひとがたつか)または人字の束、割束といいますのや。普通は一本の束ですけれど、人字の形で梁に載ってまっしゃろ。人型束によって上からの力が分散され、両脇の柱にうまく荷重が伝わるようになってるんです。棟の荷重が上手に二本の柱に分散されている。

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けれども、そのことも、室町時代にもなると忘れられてしまったのだとか。梁は真っ直ぐになり、束は梁の中央に立てられ、直線的な梁のほうが美しいと思うようになったのだとか。ここにおいて、構造や力学的なことは置いてけぼりになったのですね。

勉強になります。でも、室町時代で既に忘れられているなんて、現代などは、一体どうなってしまっているのでしょうか。本の中では、飛鳥時代と江戸時代の建築の比較もなされていました。

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どうしたら寸分の狂いなくはまるのか

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回廊から見上げる五重塔

中門と回廊だけで、なんだか胸がいっぱいになりました。さらにスピードを落とし、五重塔、金堂などをゆっくりと見て回りました。

(つづく) 

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