皮膚疾患のとらえ方(2)/合宿のテーマより
講師 小林詔司 / 文責 積聚会通信編集部
『積聚会通信』No.6 1998年5月号 掲載
次に何を皮膚とするかを確認しておこう。
ここでは皮膚の意味を、体を覆っているすべての要素とする。
そのようにみると次のような言葉がすべて当てはまることになる。それらを柔らかい状態から順に挙げてみよう。
まず粘膜である。これは口腔に始まる舌や消化器系の粘膜はもちろん、耳鼻咽喉科系の鼻粘膜、内耳、口蓋粘膜など、呼吸器系の気管、気管支、(肺胞)など、消化器系の側枝である胆管、膵管など、泌尿器系の尿管、尿道など、生殖系の子宮内膜、膣などを指している。
さてこれらが表皮と接するところも注目しなければならない。
一番目立つのは口唇であるが、人の体で古典で九竅と表現されているところはすべて該当する。つまり両眼瞼、両鼻孔、両外耳、肛門、尿道口、外陰部である。これらは粘膜から表皮に移行するところである。
そして表皮であるが、先に書いたように表皮でも陰面と陽面があるように一様ではない。
その表面には体毛が生えている。体毛は手の平や足底を除いて全身を覆っているが、主に陽面のものは色が濃く目につきやすい。体毛の濃い人では陰陽両面の区別がなく生えている。
体毛の一部は頭部では髪の毛といい口の周りや顎では髭というなど、特定の名称がついている。
その他では、眼の眉毛、睫毛、鼻の鼻毛、腋窩の脇毛、陰部では陰毛、下腿部の脛毛などがあり、乳児に生えているような見えにくいものは、産毛といっているが、成人でも陰面の柔らかい目に映らないものは産毛といっている。
体毛は体を保護するのが第一の役目で、寒い地方など気候の厳しい地方の民族では体毛が濃い傾向にある。人は古代一般に体毛が多かったようであるが、人が着物を使用するようになってから体を保護するという役目が薄れて現代の状態になったという。
このことは民族性や生来性などその人の体の条件を考慮しても体毛が不自然に濃いことが観察されれば、それに関連する体の機能が弱っているとすることに通じる。
皮膚の範囲で見落としがちなのが爪である。
これは体毛のさらに硬くなったもので陽画にだけある。
指先は体の先端にあるだけにアンテナ(触角)の意味を持つ。だから非常に繊細で敏感なため指先を守る爪のような役目のものが必要になったと考えられるが、やはりこれも生きているもので根部から徐々に代謝が進み半年を周期にすべてが生え変わる。
皮膚と爪の間には爪甲根部と称する部位があるが、これは狭い結膜領域と見なすことができる。
爪は気の最も充実した固い皮膚であるから、それだけにその変形や変質は体の深いところに異常があるとみたり体の不良な状態が長く続いているとみたりする。
またそれが元に戻るにも半年以上の長い時間経過を必要とするものである。
以上の皮膚を観察するのに共通した項目を挙げれば、まず他覚症状として(1)色、(2)性状、(3)形状の異常があげられ、自覚症状としで知覚の異常が挙げられる。
次号からそれらについて述べる。