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#05 だれでもできる「ツボ療法」/ 身近にみられる症状の実際の治療法【目の症状】【耳の症状】


【目の症状】

1 目が疲れる、痛む

目の疲れとは、印刷物を長く読む、細かい計算表をつくる、製図をする、コンピューターを操作するなど、目を長時間集中して使ったときに感じます。

同時にこのとき体の疲労も感じるものです。

たとえば首や肩の凝り、あるいは腰のだるさ、突っ張りなどの疲れを感じます。

また、すでに体に疲労があれば、少し使っただけでも目は疲れます。

これらのことは、目と体とは密接な関係があることを示していますが、ここでいう体とは五臓のことで、その気力が十分であれば目の疲労は少ないということです。

五臓の気力が弱りますと、体の気は上に偏りとどこおる傾向となり、目の働く力は落ちます。

気のとどこおりが強くなりますと、目に圧迫感を覚え、さらに痛みを感じるようになります。

[治療のしかた]
① 五臓の気の力を強めるために、基本の治療をまず行います。
② 上方への気の偏りを下げるため、足の踵の失眠しつみん穴へ米粒大の透熱灸を10壮します。
③ 以上を少なくとも週に一度行います。
④ 慢性的でないものには、足の井穴を鍉鍼で調べ、圧痛のあるところに半米粒大で3壮の透熱灸をします。
⑤ 顔にある太陽たいよう穴を、鍉鍼で圧迫します。

[注意点]
① 目の圧迫感や痛みを感じるものは軽くみてはいけません。専門的な判断が必要です。
② 目に負担をかける行為は近くのものを長い時間見ることですから、そのような日常生活を反省して遠くの景色などを見るようにつとめ、よく睡眠をとる、肉類のような高タンパクのものを避け、でんぷん質の消化のいいものをとるなどの生活面も心掛けます。

目が疲れる、痛むときの治療

2 目が痒い、充血する

目の痒みと充血は関係のあるものですが、いつもこの二つを伴うわけではありません。

基本的には、目の痒い方が軽い症状です。

充血とは、白目に赤い筋が出る、あるいは白目全体が赤みを帯びるなどですが、これ自体は自覚のないものです。

どのような原因であれ、目に気が偏り、強くとどこおっていることを示します。

身近にはアルコールを飲んだ後に経験しますが、最近では、春になると話題になる花粉症の一つとしてこのような症状がよくみられます。

花粉症は一種のアレルギーであると説明されますが、アレルギーといわれるものは、なんらかの要素を先天的にもっていることを意味します。

アレルギー的な要素をもっていればなおのことですが、目の充血という症状の大本も五臓の気の弱りにあります。

弱っている体に加えて強い陽射しに当てられたりしても、目が充血することがあります。

常に目の抵抗力は五臓の気に左右され、それがどうして目に現れるか、目にどのように現れるかは、いわば先天的なものによります。

病気の予防の原則は、先天的な悪い要素が活発にならないような生活をすることです。

[治療のしかた]
① 五臓の気の力を強めるために、基本の治療をまず行います。
② 朝起きぬけに、白湯さゆを一杯毎日飲みます。
③ 上方の気の偏りを下げるため、両足の踵の失眠しつみん穴へ米粒大10壮の透熱灸をします。
④ 充血している目の外側の太陽穴へ、円皮鍼をいれます。基本治療は2日に1度、円皮鍼は1週間そのままにします。

[注意点]
① 睡眠を十分とることを基本とします。
② 目を擦るなどして、刺激しないようにします。
③ 目の病気はとくに体の異常を現わすと考え、軽くみないことです。

目が痒い、充血するときの治療

3 視力が落ちる、目が暗くなる

視力は目の力そのものです。目の状態は、体の力、状態を示していると考えます。

視力の障害には、対象物との距離を調整すれば直る、距離に関係なくぼやけて見える、視野が狭くなる、暗い、ものが歪んで見える、などと区分できます。

どの状態も、程度が強くなるほどよくありません。

いずれも目の状態は体の状態そのものですから、体全体が非常に疲労すれば影響を受け、また目そのものを非常に使っても影響を受けます。

これらは後天的な要素ですが、親あるいは親戚に目の悪い人がいるなど、もし先天的な要素があれば、目の状態はさらに強くなります。

先天的な要素の一つに、目が形成される妊娠十週目頃の母体の異常があります。無理に流産を止めることは一概にいいとはいえません。

先天的な要素がある場合、それがあまり表に出ないように、後天的な生活に注意する必要があります。

後天的な生活の基本は、体を冷やさないことです。体を冷やすことは、上部に気が偏る傾向となり、目に弱点のある人は目の異常を訴えるようになります。

[治療のしかた]
① 五臓の気の力を強めるために、基本の治療をまず行います。
② 上方への気の偏りを下げるために、足の踵の失眠しつみん穴へ米粒大で10壮の透熱灸をします。
③ 目の外側の瞳子髎どうしりょう穴へ円皮鍼を入れます。

[注意点]
① 基本治療は2日に1度、円皮鍼は1週間そのままにします。また失眠へのお灸は、基本治療をしてから行います。
② 常に睡眠を十分とるように心がけます。
③ 姿勢を崩して書物に近付いて読んだり、細かい文字を見るなどといったことをしないように若い人はとくに注意します。また遠くを見るように心がけます。
④ 目を長い時間使わないようにします。
⑤ いずれの症状も時間の経ったもの、経過の速いもの、変化しにくいものは、専門的な診断と治療が必要です。

視力が落ちる、目が暗くなるときの治療

4 目脂が出る、涙がよく出る、目が乾く

これらは、目から出る液体の問題で、それが少ないと目の乾きになり、多いと涙となり、涙の乾燥したものが目脂めやにとなる、とみます。

体から出る液体は体の中でつくられたものですが、その出方はいつも体の熱の状態を安定させようとする働きであると考えます。

感情が高ぶって出る涙は体を冷やそうとするものであり、悲しみの涙はそれ以上体が冷えるのを押さえようとする体の反応です。

普段なんでもないのに涙がよく出る体は、どこかに熱がこもっていると考えることができます。

涙がよく出るのは、とくに目のあたりに熱の偏りがあり、その熱を冷やそうとする働きです。

その熱がさらに強いと、涙は目脂となります。

目の乾きやすい人は、体の涙をつくる力が弱いか、反対に熱が強くて涙にならないと考えます。

つまり、目脂はとくによくない症状といえます。

以上のことから目から出る液体の調整は、上部に昇っている熱を下げることが第一で、また熱を下げるには、五臓の気の働きを調整することに尽きます。

[治療のしかた]
① 五臓の気の力を強めるために、基本の治療をまず行います。
② 上方への気の偏りを下げるため、両足の井穴せいけつの反応を鍉鍼で調べ、1ヵ所を選び、半米粒大の半透熱灸を5壮、3日に1度します。
③ 1週間に1度の割り合いで、百会ひゃくえ穴に半米粒大の透熱灸を5壮すえます。

[注意点]
① 涙が多いときは、あまり目を擦らないこと、カラーテレビを長時間見る、ワープロなどを長い時間操作するなどをして目を疲れさせないことです。
② 目脂が多いときは、とくに体が疲れていると判断します。
③ 涙が涸れる症状には、刺激性の少ない点眼薬で目を一時しめらせる必要があります。

目脂が出る、涙がよく出る、目が乾くときの治療

【耳の症状】

1 耳鳴りがする、耳が遠い

山奥に入り静寂の中に身をおくと、シーンという感じを耳に受けます。これは外界からの音でなく、いわば体の中の気の動きの音です。

似たような現象は、何かの異常があって、血管の中を流れる血液の音が聞こえるなどの場合にもみられます。

普段は外界の音の方が大きいため、あるいは外界の音に気をとられているため、体の中の音を聞くことができません。

ところが体の外の音よりも中の音の方が大きい場合があり、それが耳鳴りといわれるものです。

つまり体の中の気の動きが激しくなると、耳鳴りとなります。耳鳴りは大砲の音とか手術など外からの強い刺激でも起きますが、一般には体の弱りが耳鳴りをもたらします。

体の力が落ちているために、耳の周りの気の動きを押えることができないとみますが、その証拠に疲れて来ると耳鳴りが強くなると訴える人はたくさんいます。

一般に耳鳴りは調整しにくい症状ですが、体調を整えることによって、症状を最小限に押さえることができます。

耳鳴りと反対の現象が耳の遠くなることで、これはいわば耳の周りの気の動きがにぶっているとみます。それだけに耳の遠くなるのは、年寄りに多い症状です。また突然気の動きがなくなることがあります。

[治療のしかた]
五臓の気の力を強めるために、基本の治療を根気よく行います。

[注意点]
① 耳なりに対しては、アルコールを飲むなど肩から上の気を高ぶらせることを避けることは大切です。
② 難聴に対しては補聴器を使用することがありますが、自分の聞き取りにくい音の領域が高音か低音かを確認する必要があります。

2 耳が痛い、耳だれが出る

体の痛みを判断する原則は、その部位に気が非常にとどこおっているとみる、ということですが、耳が痛むものにもこの原則を当てはめます。

さらに気のとどこおりが激しくなると、気が凝集し形を成して耳だれが出ることになります。

人間の体には、目・耳・鼻・口・肛門・尿道・膣と外に開く穴がありますが、耳は鼓膜という膜で外界と遮断されていて、最も気の出入りの少ないところです。

そこから液性のものが出るということは、よほどのこととみなければなりません。

気のとどこおりは一般に痛みとともにそこに熱をもつとみますが、さらにとどこおりが強くなると、気は凝縮して形をなし、液性となります。

耳に気がとどこおりやすい傾向は、出産時に頭部を圧迫されるなどの外的要因の他に、耳が形成される妊娠24週目頃の母体に精神的、肉体的に不安定な状況があったことなどが考えられます。

[治療のしかた]
① 五臓の気の力を強めるために、基本の治療を根気よく行います。
② 両足の井穴せいけつを鍉鍼で調べ、圧痛のあるところに半米粒大で3壮ずつの透熱灸をします。この場合、井穴は1穴ずつ左右から選び、週に1度の灸を根気よく続けます。

[注意点]
① これらの症状は、中耳炎などと西洋医学的には診断されるものに該当しますが、往々にして鼻の症状やアトピー性の皮膚の異常を伴います。このように複合的なものは、根気よく専門的な治療を受ける必要があります。
② このような症状の訴えは子供に多いものですが、卵のような高タンパクの物や、冷たい飲みもの・食べ物、食べ過ぎなどを避けるように注意します。いずれも消化作用そのものが体に負担をかけているもので、その結果、五臓の力が落ちると考えます。

耳が痛い、耳だれが出るときの治療



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