時空のねじれを旅する創作
2019年1月23日17時10分、電車に揺られながら、1564年から1616年を生きた一人の男のことを考えている。
正確には、その男のことではなく、その男が書いた文字の羅列について考えている。
15年以上も前に、彼との付き合いが始まった。
そして、彼との生活が日常となり、仕事となった。
電車は走る。稽古場のある水天宮前駅に向けて。
僕は、21世紀の東京を生きながら、16・17世紀のロンドンを生きた一人の男、シェイクスピアのことを考え続けている。
考えているどころか、東京大学英米文学部でシェイクスピアを専攻し、シェイクスピアシアターで俳優をし、世界的にも有名な演出家、故・蜷川幸雄の稽古場を少しウロウロし、文学座附属演劇研究所の演出部で学び、2011年の3・11を機に、カクシンハンという劇団を立ち上げ、演出家になり、四六時中シェイクスピアを稽古し、上演し続けている。
演出家として、およそ五年で、二十一作品の演劇作品を創作し発表した。
全部、シェイクスピアだ。
演劇創作とは、シェイクスピアが脳内で見た世界の虚像を、現実に置き換える魔法だ。
シェイクスピアが見た風景は、16世紀末のロンドン。僕が生きているのは、21世紀の東京。
つまり、僕は、四百年も昔に生きた男の脳内イメージを、現代のモノたちを使って現実の出来事にするという、時空がねじれた創作活動をしている。
しかし、それは、全くもって矛盾したことではない。
なぜか?
俳優という存在がいるからだ。
大航海時代も、縄文時代も、アメリカ独立戦争の時代も、マヤ文明の時代も、マムルーク朝の時代も、ガンジス文明の時代も、洪武帝の時代も、明治維新の時代も、スマートフォンを持ってこうして電車に揺られる2019年も・・・どんな昔も、どんな今も、変わらないコトがある。
それは、人間が存在するということだ。
この事実は、16・17世紀のロンドンも、21世紀の東京も変わらない。
人間は、心を持ち、体を持っている。考えたり、見たり、聞いたり、触ったりする。そして、恋に落ちたり、憎しみあったり、許し合ったり、殺しあったりする。
生き抜くこともあれば、死ぬこともある。
俳優とは、人間そのものだ。
心と体を兼ね備えた肉体としての人間存在。そんな普遍的なツールを駆使して、ひとりの人間として、他の人間を生きてやろうと果敢にも挑戦するのが、俳優だ。
彼らと僕は、時空のねじれた創作の旅をしている。
俳優たちのおかげで、シェイクスピアの旅は、今を投影する、最先端の創作になっている。
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劇場入り期間:2019年7月22日(月)~8月12日(月)
作:シェイクスピア
演出:木村龍之介
出演:河内大和、真以美、岩崎MARK雄大 ほか
※小屋入り(舞台稽古、ゲネプロ)は7月22日(月)から
※全25ステージを予定
会場:シアター風姿花伝
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電話:080-4118-1564(カクシンハン 制作)12:00~18:00