鏡よ、鏡。

「かがみよ、かがみ！」

はぁい。
今日もかわいいですね。
お母さんにみつあみにしてもらったんですね。
お気に入りのキラキラした飾りのついたヘアゴムもよくお似合いです。

あなたのせがむ声も聞こえましたよ。
お母さん、あなたの後ろですっごく難しい顔をしながら結んであげてましたよ。まったく、短い髪なのに無理をいうから。
でもいい笑顔ですね。お母さんも、その笑顔を見られれば満足でしょうね。
いってらっしゃい。

「鏡よ、鏡！」

はぁい。
あぁ、今日もかわいいですね。
今日もきれいにポニーテールですね、上手くなったもんです。
特に後ろのゴムの下、襟足あたりがきれいにまとめられるようになりましたね。
そろそろその背中のランドセルともお別れだそうですね。
いってらっしゃい。

「鏡さん、鏡さん…」

はぁい。
今日もかわいいですよ。
真っ赤に腫れた眼だって魅力的です。
さあ、はやく髪を整えないと、時計さんがあっちではらはらしていますよ。
いってらっしゃい。

「鏡、鏡！」

はぁい。
今日は特別かわいいですね。
いいえ、とても綺麗です。
お母さんとお父さんも誇らしげな、泣きそうな顔をしていますね。あなたには見せないでしょうが。私には見えます。

何度も私の前で髪や色のシミュレーションをして迷っていましたね。
素敵な色ですね。あなたの肌の色にぴったりです。髪飾りも、ふわふわとした白い毛もゴージャスで素敵です。
とってもお似合いですよ。
いってらっしゃい。

「こんなに大きいのがあれば便利なのになぁー」

はぁい。
今日も美しいですね。
大きい鞄を持って、今日からでしたか。
お母さんがずーっとあなたに色々と話しかけていますね。もうすこしだけちゃんとお返事してあげたらどうでしょうか。お母さんの目がきらきらとしてきましたよ。あぁ、あなたの目もいつもよりきらきらとしていますね。
「いってきまーす！」
私はいつでもここにいますからね、また顔を見せてくださいね。
いってらっしゃい。