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久しぶりの感覚だったし忘れたくないので残しておく

ある大きめの駅で買い物をした時、ふとエリクシールのおしろいミルクを買おうと思ってドラックストアに行ったんだけどなかなか踏ん切りがつかなくてまよってるうちにだんだんほしくなくなってきてしまった。

要らないものにお金を出すのも癪で外に出たんだけどあまりにも手持無沙汰。このまま帰るのも勿体ないからやっぱり代わりに何か買って帰ろうと思った。

そうだ、ショパンの楽譜でも買って久しぶりにピアノ練習しようかな、なんて思って本屋さんに言った。早速ヤマハの緑色の楽譜をパラパラめくる。ワルツかノクターンがいいかなと思った。この際名曲集みたいなのでもいいかな。あでもうちに昔練習した楽譜あるな、今じゃもう弾けなくなっちゃったんだよな。あれ?てことはこれ買って帰っても弾けるようにならないかもしれないってこと?それに気づいた瞬間欲しくなくなった。

場所を変えて一通り猫の写真集を眺めてから一銭も落とさず退店。どうしようかな。久しぶりにCD屋さんでも覗こうかな。iPhoneで検索したらHMVが一番近かった。迷わず向かう。

大学生になってCD屋さんに行くことはめっきり減った。コロナ禍になってからは尚更で、もしかしたら2年ぶりくらいかもしれない。そんなことを考えながら入店した瞬間、静かに、でも一気にわぁっと気分が高揚するのを感じた。これだよこれ、みんながサブスクの波に乗る時に手放したものの中で一番勿体ないやつ。世界のデカさを感じる瞬間。世界は知らないものであふれてるんだぞと言わんばかりの物量。無言の圧。ちょっと不便なくらいが一番楽しいんだ。そう思った。

小さい頃から歌を聴くのが好きだ。その人の一番いい声で真っ直ぐに張るボーカルが特に好き。もちろんここでいう「歌」は人の声に限らない、広い意味での歌。クラシックとかインストバンドでもまずは主旋律の美しさに耳を持ってかれるし、どちらかといえば主旋律を任される楽器に昔から憧れてきた。ジャズにいまいちハマらないのはもしかしたら旋律が感じられないからかもしれない。一時期は周りに影響されてコードやらベースラインやらを聴こうとしてたけど、常にひねくれた聴き方をしなきゃいけないことに少し疲れてしまっていた。今は就活も卒論も落ち着いて全てから解放されているし、難しいこと考えたくない。気付いたら星野源の棚に吸い寄せられていた。久しぶりに星野源聴きたい。無理のない、いちばんいい声で自分の歌を歌うからすごく好きだった。

高校の頃からずっと好きだったバンドは一昨年の秋に解散ライブもなく唐突に活動をやめてしまった。いつ聴いてもやっぱこの人たちはすごいと思わせてくれた唯一無二にして頂点のあのバンドは歩みを止めてしまった。その喪失感とともに私も新しい出会いに期待しなくなって、とりつかれたように音楽を聴いていたあの頃がいつのまにか過去のものになっていた。

棚の前にしゃがむ。どうしよう、どの作品にしよう。CD?DVD?いや、ここはDVDだな、曲はアルバム何枚か持ってるし、持ってない曲もSpotifyで聴こうと思えば聴けるけど、ライブ映像はモノを買わなきゃ一生観られない。ライブいきたかったし。いつのライブにしよう、continuesか、pop virusか、ツービートか。うーん。やっぱり一番最近のがいいか、てことは2019年、pop virus。あブルーレイもあるの?えーどうしよう、やっぱちょっと高いんか、7500円、うーん。あでもDVDもそんな変わらん、6000円くらいか。ならブルーレイ買お。いいやつにしちゃお。あーでもドライブがない。電気屋さん寄ろ。

初めてのクレジットカード払いであわあわしつつゲット。突然のデカい買い物。こういうのを衝動買いっていうんだろうか。動機としてはなんとなくだったけど衝動を求めて、期待してっていう意味ではそうかもしれない。

家について速攻でセッティング。DISC1再生。一瞬でアドレナリン大爆発。音量上げちゃう。こんなにいい声で、いい音で。最高すぎる。なんでこんな世の中になっちゃったんだろう。たった2,3年前なのに遠い昔に感じる。こんなことできてたんだっけ。もうこんな幸せな時間は来ないような気がした。

楽器隊とかダンサーを見せたいっていう意図がカメラワークからしっかり伝わってくる。みんな主役。言わなくてもちゃんとこだわりが伝わる作品ってそう簡単に作れないと思う。この高揚感はいつぶりだろう。NICOのアコースティックアルバムを買って聴いたぶりくらいなんじゃないか。ラジオを聞きまくったり新譜を心待ちにしたりしてたあの頃に戻れそうですごくうれしくなった。間違いなくここ最近で一番いい買い物をした。

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