恵夢/M

好きなものを創りたい人です。 ノンバイナリー、Aセクシュアル

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  • ブログのようなもの

    ノンバイナリー、Aセクシュアルな一個人によるいろいろブログ。 創作、趣味、セクシュアリティ、etc

  • 創作『かざぐるま』

    2人の大学院生をめぐる、喪失と修復のモラトリアムドラマ 某大学院臨床心理学専攻に通う、颯太と春稀をめぐるお話です。 本作品はフィクションであり、実在の人物等とは一切関係ありません。一部、性表現及び性暴力表現を含みますのでご注意お願いします。

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    スマホでちまちま作った打ち込みcoverです。

最近の記事

あるAセクシュアル、不安になる

  半年にわたる転職活動を無事に終え、理不尽なことしかなかった漆黒企業ともお別れし、新天地で新たな人生を始めた。興味ある仕事を自分で選び取り、初の電車通勤にも少しずつ慣れてきたところだ。自分の人生を、ようやく進める。だがそう思っていたのも束の間、新たな不安が生まれてきた。この先どうやって生きていこうか、という漠然とした不安だ。  私は、「世間一般の人たち」(これも誰のことを指すのか分からないけれど)と違うところがいくつかある。そのうちの1つが、恋愛をしないということ。20代

    • YEN TOWN BAND『アイノネ』[short.ver]打ち込み

      YEN TOWN BAND『アイノネ』の打ち込みカバーです。 制作時期:2023年5月  アプリケーション:Paint Music 2

      • 創作『かざぐるま』[最終話]

        [最終話]颯太と春稀作者注)本話は性的な表現を含みますので、ご注意お願いします。  X+2年5月。目を開けると隣には春稀がいる。彼は静かに目を閉じて眠っている。少し開けてあるカーテンの隙間からは日の光が差し込んでいて、無機質なワンルームの壁を照らしていた。休日の朝にしては頭が冴えていた。昨晩は夢の途中で覚めることなくぐっすり眠っていたようで、久しぶりの心地良い起床だった。しばらくして身体を起こそうとすると、春稀の手が触れたので、 「おはよう」  と声をかけると、彼は周囲の明

        • 創作『かざぐるま』[第19話]

          [第19話]DD:25歳 女性    X+2年3月の土曜日の午後。私は1人、院生室にいた。自分の席にはもう何もない。同期の机も同様だ。あ、春稀くんを除いてね。  昨日は念願の修了式だった。改めて思い返すと、2年なんてあっという間で、短かった。その中で私は様々な経験をして、たくさんのことを学んだけれど、2年間で得たものはそう多くはない。さらに多くの知識やスキルを吸収し、経験を積んで成長していくのはこれからなのだろうと思うと不安も感じないではないが、とりあえず無事に修了できたとい

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          創作『かざぐるま』[第18話]

          [第18話]颯太颯太:24歳 男性    X+1年10月。深夜。公園。俺と春稀は目立たない植え込みの傍らにいた。春稀はライトで辺りを確認して、ここにしよう、と言った。    午前中、久々に片付けをしていると、ユキが吸っていた煙草の箱が見つかった。場所はキッチンの一番上の棚の奥で、台に乗らないと見えないところだった。なんでこんなところに隠したんだろうね、と春稀は言った。まるで会ったことのない他人が忘れ物をしていったみたいな言い方だった。それは確かにユキが吸っていた煙草だ。棚に入

          創作『かざぐるま』[第18話]

          創作『かざぐるま』[第17話]

          [第17話]春稀作者注)本話は性的な表現を含みますので、ご注意お願いします。 春稀:23歳 男性    X+1年6月。学校が始まって2か月が経った。僕は朝から晩まで1年生たちと一緒に2度目の授業を受けている。みんなからは結構話しかけてもらえていて、「先輩」として慕われつつあるのかなと感じている。まあ、僕は決して頼りになる先輩ではないけどね。一方、2年生になった同期も院生室で会えば話しかけてくれる。担当ケース(1年生の終わり頃から各学生が相談者を受け持つことになっている)や修

          創作『かざぐるま』[第17話]

          創作『かざぐるま』[第16話]

          [第16話]CC:23歳 女性 大学院2年生    X+1年4月初め、もうすぐ13時になる。今日は入学式で、丁度始まっている頃だろう。2年生となった私たちは、院生室で新入生歓迎会の準備をしていた。ホワイトボードには「新入生歓迎会」と書かれ、Bちゃんが余白に春らしいイラストを描いている。Aちゃんたち買い出し班が、オードブルや飲み物などを買いに出かける。私は一応、設営&待機班だが準備はほぼ終わってしまったので、Bちゃんの描くイラストを眺めつつ、時計も見つつ時間をつぶしていた。本で

          創作『かざぐるま』[第16話]

          創作『かざぐるま』[第15話]

          [第15話]颯太 X+1年1月。午後。俺は春稀の姉さんをアパートの外で見送り、彼女の車が見えなくなるまでそこに立っていた。部屋着のままで外に出ていると、時折吹く風が身体を一瞬で冷やしていく。暖房のきいた部屋へ帰るのも急ぎ足になる。もう年が明けてしまったのだな、と心のどこかで思う。  部屋に戻ると、春稀がこたつで遅い昼ご飯を食べている。雑煮の残りに何かをトッピングして、自分なりのアレンジを楽しんでいるようだ。俺の姿が目に入ると、「そうちゃん」と呼ぶ。そして、ありがとう、と微笑む

          創作『かざぐるま』[第15話]

          創作『かざぐるま』[第14話]

          [第14話]颯太   春稀へ。    これを渡す頃には、文字も読めるくらい回復していると祈って、書きます。もしも…もう読めないとしても、春稀に伝えたいことを書くので、受け取ってほしいです。自分勝手で、ごめん。  まず、春稀に、何もしてあげられなくて、SOSを出していたことに気づいていたのに…何もできなくて、本当にごめんなさい。俺は逃げていました。もっと春稀に寄り添っていれば、と後悔しています。春稀のことを突き放した最低な自分が、憎いです。でもこれは今だから言えるのであって…

          創作『かざぐるま』[第14話]

          創作『かざぐるま』[第13話]

          [第13話]春稀 空っぽの教室。僕は一番後ろの席に座っている。自分以外誰もいないので、世界には自分1人しかいないかのように錯覚する。ふと視界の端の方から熱い光線が射してきて、太陽が沈んでいく。しばらくそのままでいると、また太陽が昇って空から暗い色が消えていく。そしてまた空が黒くなって、夜がやってくる。そして太陽が昇り、沈む。何度かそれが続いた。僕はただ席に腰掛け、太陽が動くのに合わせて変わる空の模様が腕に映るのを見ていた。次第に何回太陽が沈んだのか、今日は何日で、今は何時頃な

          創作『かざぐるま』[第13話]

          創作『かざぐるま』[第12話]

          [第12話]AA:23歳 女性    X年12月、院生室。今年の授業はすべて終わり、もう冬休みに入っている。今日は院生室の大掃除ということで、朝から学生が集まって窓拭きをしたり掃除機をかけたりしている。私はBちゃんと本棚の整理をしていた。院生室の本棚は高くて、床から天井まで心理学の本や学術雑誌がぎっしりと詰まっている。その中からあまりにも古いと思われる雑誌を抜いて、入りきらずに近くの机に積んであった新しい雑誌を入れていく。脚立に乗って、棚にぎゅうぎゅうに押し込められた書籍の中

          創作『かざぐるま』[第12話]

          創作『かざぐるま』[第11話]

          [第11話]颯太作者注)本話は性暴力表現およびショッキングな表現を含みます。 フラッシュバックの不安がある方は読むことをお控えください。よろしくお願いします。  X年12月。気がつけば、巷ではどこへ行ってもクリスマスムードだ。だが、俺にとってはまったく関係がない。とてもじゃないがそんな楽しい気分にはなれない。  …この冬は、俺が生きてきた中で最もつらい冬になった。ただでさえ空気が冷たいのに、俺は心に突然大きな穴が開いて、アパートの部屋で1人茫然自失状態で、寒さが余計に身にこ

          創作『かざぐるま』[第11話]

          創作『かざぐるま』[第10話]

          [第10話]春稀作者注)本話は性的な表現を含みますので、ご注意お願いします。  X年11月。朝‥? なのだろうか昼なのだろうか。窓がないので時間が分からない。僕は見慣れない一室のベッドの上で目を覚ました。毛布の繊維が全身の肌にまとわりつく。辺りを見回すと、独特な模様が描かれた派手な壁に、柔らかいが眠るには大きすぎるベッド、いやにギラギラした電灯。…僕はどうしてこんなところにいるんだ? 何があったんだ? わけが分からず困惑していると、すぐ隣で誰かが寝返りを打った。僕は驚いて、

          創作『かざぐるま』[第10話]

          創作『かざぐるま』[第9話]

          [第9話]颯太作者注)本話は性的な表現を含みますので、ご注意お願いします。  X年11月。夜。K駅前広場。「その人」は決まって、ある人のギターの演奏を聴きながら待ち合わせ時刻までの時間をつぶしている。路上ライブをしている人は他にもたくさんいるけれど、「選曲がいい」ということで聴いている。若い女性シンガーや流行りの曲を演奏する人の周りには必然的に人だかりができるが、人数が多いところは「その人」も俺も好きではない。一方このギター奏者は一人で静かにギターをかき鳴らしながら、時折歌

          創作『かざぐるま』[第9話]

          創作『かざぐるま』[第8話]

          [第8話]D X年10月の土曜日の夕方。今日は朝から、ロールシャッハ・テストの集中講義があった。今はもう講義は終わったのだけど、院生室にはまだ何人かが残っていた。私は自分の席で何十枚もの講義資料をぱらぱらと意味もなくめくり、「はぁー」と大きな溜め息をついてしまった。ロールシャッハってなんでこんなにややこしいんだろう。レポートなんて書ける気がしないんだけど…。私は頭を抱えた。  数メートル離れたところではAちゃんたち3人が楽しそうに話をしている。別に嫌ではないけれど、毎度なぜそ

          創作『かざぐるま』[第8話]

          創作『かざぐるま』[第7話]

          [第7話]ユキユキ:16歳 男性 無職  春稀の交代人格     X年10月。深夜。俺はK駅前の広場にいる。もうすぐ日が変わるというのに、この街には眠りという概念がまったくない。駅直結のビルは灯りが消えているところもあるが、広場周辺はまだまだ元気な人の声でがやがやしている。路上ライブをしている人がぽつぽついて、その演奏を聴いている人たちが囲んでいる。こんな夜遅くまで熱心な奴らがいるもんだなと、俺はペデストリアンデッキの手すりにもたれかかりながら、遠目で見ている。ふと煙草が吸い

          創作『かざぐるま』[第7話]