リアル感を買う仕組みが、次の時代を作ると思う
昨日、後輩とビジネスとか教育とか社会とかの話をしていて、卒業制作の中で自身がしたかったことの本質は何なのかを改めて考察してみた。その結果、今自分が取り組んでいる卒業制作は、面白いほど自分が常々考えていることが反映されて出来上がっているんだなぁと感じたので、書き留めておく。
再魔術化とは
近年よく目にする言葉であり、友人ともたまに話題に上がる言葉である「再魔術化」。調べたところ社会学者であるマックス=ウェーバー(1864-1920)の脱魔術化の話からそれに対するアンチテーゼとして再魔術化が叫ばれるようになったようだ。まず再魔術化の話をする前に魔術化の話をする。時は原始時代に遡る。この頃は、「火で調理すると美味しく食べる」のは、「炎が食品の穢れを浄化するため」だと信じられてきた。非常に魔術っぽい話である。しかし、現代を生きる人々でこれを信じている人は限りなく少ない。はっきりとした理由はわからないにせよ加熱調理は穢れを浄化するために行ってるんだよね!と友達に話すとそんなわけないじゃん、大丈夫?と言われるだろう。
しかし、高度情報化社会などと言われる現代において火の魔術化のような事例は山ほどある。なぜインターネットで調べることができるのか。なぜLINEは無料で電話ができるのか。ファストフード店の商品はなぜ安いのか。なぜ配送料無料のサービスが成り立つのか。など、理解せずともサービスが利用できてしまう世の中になっている。そんな魔法に囲まれて生活しているような私たちの状態を再魔術化と呼んでいる。
話は変わるが、私は世界史が大好きである。歴史は繰り返すとはよく言ったもので戦争だって文化だって宗教だって始まりがあって終わりがある。形を変えて後世で再興せど、また収束し、次の時代に移り変わっていく。現状維持は衰退であり、人は新しくてよりビジョンが強く、今を否定したものを好む傾向にあるのだ。
脱再魔術化の流れ
ということは、再魔術化の流れもまた脱再魔術化となると私は考える。そしてそれはもう起きている。インターネットやSNSの発展に伴い、物理的に個が社会と分断されているが、オンラインでは24時間繋がっているような現代で、人々はリアルを強く欲している。情報通信が発展しても全てがオンラインにならずIoTなどと言われているように、人の欲求はリアルなモノに帰結するのである。
皆、一瞬でもリアルな夢を描かせてくれる空間やモノを求めているのだ。
人々が求めているリアル感を具体的にみてみる。
例えば、アイドルはテレビの中の偶像から、会えるアイドルが売れるようになっているし、音楽の主要なマーケットはフェスやライブに移行している。ディズニーランドやUSJの人気も現実との逸脱が関係していると思う。ゲームから舞台に場を変え、舞台俳優にスポットが当たるのも、リアル感の追求によるものではないだろうか。インスタグラムのストーリーに皆が投稿するのも自分自身のリアル感を友達に誇示したいからに他ならないと思う。
つまり、リアルを体感してもらうことが消費者にとって非常に大切になってきている。
ここでもう一例挙げる。チャーリーさんの行なっているビジネスモデル図解である。これこそまさに脱再魔術化がビジネスになっているいい例だと私は考える。
チャーリーさんの著書であるビジモ図鑑では、ビジネスというとっつきにくい分野に対してデザインという手段をもって誰にでもわかりやすく図解している。私はこの本を読んで、仕組みを知って面白い!と思ったサービスやプロダクトは実際に使ってみたくなった。これは仕組みがわかることで得られる安心感がそうさせたのだと考えている。
このビジモ図解は、ビジネスとしての手の内やプロセスを公開することで消費者に安心感を与え、サービスやプロダクトを利用する心理的障壁を低くし、使ってみたい!という気持ちにさせる事業者と消費者が共にwin-winになる新しいPR方法だと思った。まさにビジモ図鑑の中で述べられている八方良しがうまく機能している。
卒業制作に繋げてみる
前回の記事でも書いたが、私は卒業制作として、コーヒーの残り粉(コーヒーかす)のアップサイクルを利用したプラットフォームビジネスに取り組んでいる。ここでもやはり消費者の安心感が最も重要であると考えている。
私は駅前でやっている行先の不透明な募金に協力しようと思えないし、フェアトレードの商品を買いたいと思うことが少ない。
つまり、リサイクルなどの慈善活動では、自身がそのサイクルに参加した先がどうなっているのか、パッとみてわからないと参加する気にならないことが消費者の心理だと私は考えている。
だからこそ、C-LOVERSでは店舗だけでなく消費者からもコーヒーの残り粉を回収することが必要で、それを提携店舗やC-LOVERSの運営するラボで回収し、その場で素材化し、商品に変えることが大事だと考えた。
ただの仕組みづくりではなく、ステークホルダーと八方良しの関係を築き、消費者の目が届く範囲で全てが完結することに重きを置いて安心感を持ってサービスを利用してほしいと考えている。
私は卒制を通じて、コーヒー産業が今後も持続的に発展していくための新たな選択肢を世界に提示したいと考えている。全部うまくいくビジネスを作って儲けたいとかを考えているのではなく、生産者も事業者も消費者も幸せになるような選択肢が世の中にないから作りたいと思ったという単純なものであった。
しかし、どこまで突き進んでも卒業制作は学生の妄想であり、夢の話である。
大切な資源である「コーヒーかす」をカスって言わなくても良いように「コーヒーの残り粉」という呼び方に変えたり、DIに挑戦してコーヒーの味わいとビジュアルを繋いだって、銅とウレタンから新しい素材を開発したって妄想でしかない。
静岡文化芸術大学デザイン学科1期生として、コーヒーの残り粉の価値を見直すことで、世界に新たな選択肢を提案出来るよう、プレゼンまでの残された時間を有意義に使っていきたいと思う。
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