サンフランシスコ、カストロ通りの夜
私はプライベートで日本語を教えている。
先週、ミャンマー人の子どもたちから
「先生、飛行機に何回乗ったことある?」と聞かれた。
数えたことはなかったけど、かなり多い。
返答に困って「数えられないくらい」と答えた。
子どもたちはちょっと驚いたようだった。
私が初めて海外旅行に行ったのは1980年。
それ以前にも、実家のある福岡と東京間を何度も行き来している。
1980年、いきなり香港、アメリカ、シンガポール、と旅をした。
その年、アメリカでは国内線も使った。
それからも、北京やパリへ行く機会にも恵まれた。
もちろん、実家と東京の往復も続いていた。
だから飛行機に乗った回数を数えたことがない。
最近は海外へ行くことは減ったが、飛行機に乗った回数は
これまでの長期間を考えれば、かなり多い。
先週、古い友人の誕生日だったので、SNSでコメントした。
「お誕生日おめでとう。
サンフランシスコのカストロ通りの夜を思い出すよ(笑)」
ちょっと意味深なメッセージ(笑)。
返ってきた返信にはこうあった。
「もう35年も前だね」と。
いろいろな思い出をよみがえらせ、
その瞬間に戻ると、さまざまな情景が浮かんでくる。
そして今、一緒に時間を過ごす人たちとの時間を、
体験を、大切にしたいと願っている。
これまでに出会った多くの人たちとのかかわりが、
私を形づくるものであるように、
これから時間をともにする人たちとのかかわりが、
また私を形づくっていく。
雪だるま式に大きくなっていって、
そのうち雪だるまのように消えていくのだろう。
それでいい。
雪だるまを一緒に作った思い出を
一緒に語れる人がいればうれしい。
一緒に語ることができないとしても、
その情景を「思いうかべる」ことができれば、それでもいい。
記憶も、私を形づくるものも、決して幻想ではないのだから。