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Backfire effect | 信念と説得

Backfire effect(バックファイア効果)というものがある。これは、自分の信じる情報を他者から否定された場合に、その否定に対して反発をするだけで、かえってより強く自分の考えを信じてしまう現象のことである。自分の好きなものを否定する情報や、信じたいと思う事柄を打ち消す情報に接したとき、反発を感じるのは誰にでもある。そしてすでに持っている信念が強いほど、その反発が大きくなることもわかる。物理的な事象と同じように、元の考えが硬ければ、弾性係数は高くなり、弾性力は大きくなる。この作用が働くのは、ヒトの進化によるものであると、一部では考えられている。肯定的な情報は基本的に危機につながる可能性は低く、逆に否定的な情報は自分を脅かす可能性があり、防衛本能から、より敏感に受け取りやすくなっている。また、自分の考えが否定されることで、自由を阻害され、かつアイデンティティも否定されているように感じ、反発を強めている可能性もある。したがって、他者の信念を正す必要がある場合や情報を発信する場合に注意が必要である。ある研究では、相手を説得する際、こちらの主張を説くときの態度が自信がないような場合であるほうが、自分の考えを強く、反論の余地がないように説く場合よりも、説得の成功率が上がるという科学的結果が得られたという。これは経験からもわかることだが、相手の考えは一切受け入れる余地がないという態度では、余計に反発が生まれる。科学的な整合性のある事象であれば、そのような態度でも多少は説得の確率は上がるのかもしれないが、より抽象的な政治あるいは宗教に関連するような信念の場合では、論理に限界はあり解釈の幅も存在するため、さらに厄介なものとなる。だからこそ、他者を説得する場合も、自分が他者から意見を聞く場合でも、考えには多面性があり、偏っている可能性もあるということを常に認識しておかなくてはいけない。余地や柔軟性を持つことは、どんな面でも大切なことだ。もし思考の柔軟性の高い人であるなら、多くの事象に対して人が持ちうる信念の側面および形態をすべて把握し、理解できるように努めるべきなのだろう。
この認知的な現象を理解し、他者と向き合いながら、自らも陥ってしまわないよう注意していたい。

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