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バイリンガル | 認知機能と言語
視覚性単語形状領野(visual word form area: VWFA)という脳領域は、文字を読む際に重要な領域であることが示されている。この領域は左側頭葉後下部に位置し、単語の視覚イメージが貯蔵されている。そのため、文字を読む際には視覚系と言語系を繋ぐ重要な役割を果たす。ある研究では、この視覚性単語形状領野に注目し、英語と中国語を話すバイリンガルと英語とフランス語を話すバイリンガルの神経活動を比較した。そして中国語を処理する場合の神経活動が、その他の言語を処理する場合とは異なることを発見した。漢字などの表意文字を処理する場合の機序は視覚的に行われ、ヒトの顔を認識するときと近く、全体のまとまりを捉えるような動作をするという。また、アルファベットのような表音文字では、文字を個別に処理した後で単語や文として繋ぎ合わせるような処理を行っていると考えられた。
バイリンガルの認知機能が優れているということを示唆する研究は多い。しかし、扱うことのできる言語の種類によって神経活動が異なってくるというのは興味深い。日本に住んでいる場合、日本語とそれ以外の外国語という分類をすることが多いように思う。世界的に見れば閉鎖的な、日本という島国では、他の言葉に接触することが比較的少ない。そのために外国語への理解が少ない部分があるように感じる。母語と外国語という認識だけでなく言語ごとの詳細な特徴を知っておくことや、理解のない大まかな分類によって失われる断片があるということにも意識を向けておくことは大切だ。
単純化によって合理性は増していく。しかし、それによって見過ごされる可能性があるものを無下にしないように気を付けたい。
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