東京漫才師〜オズワルド 伊藤俊介様〜
生まれも育ちも大阪の私にとって、漫才とはべたべたの大阪弁で展開されるものであり、劇場といえばなんばグランド花月と漫才劇場。
たまに目にする関東の漫才師は、全然笑えなかった。
生粋の大阪人である私には「なんでやねん!」がない漫才を、面白いと思えなかったのだ。
しかしだ。
「名前だけでも覚えて帰ってください」と謙虚に始まる伊藤さんと畠中さんのオズワルドには関西以外笑えない仕様だった私のプログラムを意図も簡単にバグらせたのである。
伊藤さんの声。あの独特の声。まずあの声にやられてしまった。彼のファニーな声で発せられる「逆?」「俺の口に雑魚寿司を入れるな」のパワーワード。
そして破天荒そうに見える伊藤さんが「妹(天才女優の伊藤沙莉さん)想いのめちゃくちゃ優しいお兄ちゃん」で、温厚そうな畠中さんが「恋愛経験ゼロだが女性関係はそれなりにある」どっちかというと危険人物というギャップ。
完全に心を撃ち抜かれてしまった。
そして漫才は、設定自体がめちゃくちゃなんだけどそれを聞かせる話術、間、声が完璧すぎた。完全に彼らの世界に引き込まれてしまった。
そう、「なんでやねん」という武器なんて彼らには必要なかったんだ。
さらに彼らは平場に強い。
エピソードがしっかりしているので、他の芸人さんが途中で突っ込んだところで話を奪われたりしない。最後まで聞きたいと思わせるストーリー性がすごいのだ。
彼らが関西の本丸ってここなんですね、と言っていたM1翌日の「やすとものいたって真剣です」での完全アウェーでの平場でのあの切り込み方は、やすともと中川家が主催している「TOP ofなんばグランド花月」の出演がこれで決まったな、と思わせたほどだった。
「マルコポロリ」では伊藤さんの遅刻エピソードでほんこんさんを激怒させたが、それが「ダウンタウンdx」に繋がり、伊藤さんはそこでも完全に爪痕を残した。
さらに「アメトーーク」では「キャバクラ芸人」のプレゼンを蛍原さんに直談判、その20日後にはもう収録に漕ぎ着けるという、完全に「持ってる人」だった。
そしてそのキャバクラ芸人の後日談を伊藤さんが書いていらしたのだが(文才もすごい)、これがもう…
ただただ泣けた。何度も読み返した。何度も泣いた。
『華やかな世界で、誰からもチヤホヤされながら楽に金を稼いでいるだけだと思われたりもする、出勤時間外もお客さんとの連絡をマメにとったり、キレイで居続ける為の努力を怠らずに生きていて、本当は24時間勤務みたいなもんで意外と毎日泣いている、しこたま飯を食わしてくれたキャバ嬢達に』
これを人間讃歌と言わずになんというのだろうか。伊藤さんが見えている世界が愛おしすぎる。こんなふうに人を、人生を愛せる人なんですよ、伊藤俊介って芸人は。
この人のお笑いに対する覚悟を支えるもの。優しさという言葉を使ってなお余りある優しさ。自分の泥臭さや足りなさを直視できる強さ。これがもし演技だ綺麗事だと揶揄されるなら、彼こそが天才俳優じゃないのか。
無限大ホールのこと「なんやねん関東はお笑いの箱が洒落すぎてるやろw」とか馬鹿にしてた自分を殴りたい気持ちです。
伊藤さん、オズワルドさん、関西から応援しています。
遅刻に懲りずまたNGK出番入りますように!!
写真は♾所属芸人さんのページよりいただきました。