名古屋ヲ制スル者ハ、天下ヲ制ス。
昨日「初音ミク JAPAN TOUR 2023 ~THUNDERBOLT~」の名古屋公演(Zepp Nagoya)昼の部を観に行ってきました。
今回スタンディングで観たんですが、1Fフロアはまさに「すし詰め」と表現するのがピッタリ。
熱気にやられてヘロヘロで、アタマにネクタイ巻いて「おおい、土産だぞお!大黒柱のお帰りだあ」と、土間に大の字でひっくり返りたくなる程度には「すし詰め」でした。
まあ土間なんてないんだけど。
僕自身、Zepp Nagoyaには何度か足を運んでますが、ドッジボールができる程度にガラガラか、2回席で観るケースが多く、ここまでギューギューなのは恥ずかしながら初体験でした。
まだツアーの最中なのでネタバレは極力避けますが、少なくともこれまで初音ミクを愛してきた人であれば、思わずニヤリ、もしくは感激する内容で、マジカルミライより近く鮮明で大きなモジュールたちを見るだけでも十分価値があります。
とりわけ開幕地の民として、これだけの人に見守ってもらえるツアーなら、成功間違いなしだと思いました。
詳細まではわかりかねますが、「客入りが悪い」と言われる名古屋で、ここまで入れば上出来じゃないでしょうか。
本稿のタイトル「名古屋を制する者は、天下を制す。」は、興行界隈ではよく言われる言葉で、名古屋でのイベントはリスクが高いことを表しています。
よく言われる「名古屋飛ばし」の主たる原因ですね。
これは演者側が吐き捨てるように嘆く「客のノリが悪い」とか、名古屋の評論家風情が宣う「客の質が高くて厳しい目を持っている」というわけじゃありません。
他のエリアにだって、そういう人はいるものです。
ズバリ言えば、今回名古屋公演が満員だったのは、ツアー初演なのが大きいと考えます。
知り合いの知り合いというレベルですが、現に他エリアから名古屋へやってきた方も多く見かけました。
初音ミクに限らず、熱意のあるファンであれば初演、あるいは千秋楽を見届けたいのでしょう。
僕の職場は名古屋のローカル局なので、基本的には名古屋市、もしくはその周辺の単発イベントしか打たないんですけど、今回のようなツアーとなると、名古屋の場合「どうせ見るなら」と、他エリアに客が移動してしまうケースがあります。
おそらくイベント主催者は「中京圏および近隣エリアのファン」をターゲットにすると思いますが、実際にはその想定を下回るケースが多くなります。
それは名古屋の地理的な優位性が逆に災いしているのです。
では全国ツアーで、名古屋が初日でもラストでもない日程で組まれると、どういうことが起こるのでしょう?
名古屋から東京、大阪へは新幹線で2時間かからずに行けます。
安くあげようと思えば深夜バス、また大阪へは近鉄特急という安くて早い手段もあります。
さらに中京圏では、自家用車所有率が圧倒的に高く、「ドライブが趣味」という最近全国的に減少気味の人種も健在です。
燃料費や駐車場代がかかろうと、自分のペースで気楽に向かえ、ついでに最近エンタメ施設と化すサービスエリア巡りをオプション的に楽しむため、むしろ東京公演、大阪公演には積極的に向かいます。
そして周辺の商業施設や飲食店でカネを落としていくくらいの余力はあります。
そういう人たちは休暇さえ確保すれば、地元公演よりグルメだのランドマークだの「遠征の楽しみ」を選ぶケースも高まります。
つまり名古屋公演での動員は、全通を目指すわずかな強度ガチ勢と、ライトなファンが中心となり、エリアが持つポテンシャルの最大公約数しか見込めなくなるわけです。
だから「客のノリが悪い」はある意味正しいのかもしれません。
逆に東京や大阪には、そもそも二大都市圏以外、例えば東北地方や中国・四国地方からの動員が見込めます。
ともに都市圏としては中京圏に隣接する上、中京圏に近い長野や北陸各県は、名古屋より東京・大阪の方が交通的に行きやすいこともあります。
そもそもカバーエリアの広い札幌や福岡も含めると、名古屋公演が苦戦する理由がわかろうかと言うものです。
浮気な地元民が多い名古屋公演を成功させるには、どうすればいいか?
やはり、初演や千秋楽という興行上のプレミアが必須となるのです。
名古屋が他地方に行きやすい場所であるとすれば、逆に他地方からも来やすい場所ということになります。
名古屋でプレミア興行があれば、少なくとも東京、大阪から客が呼べます。
不利な名古屋を満員にできれば、その他の公演をフルハウスにするのは容易いかと思います。
まさに「名古屋を制する者は、天下を制す」わけですね。
一方で、その名古屋にも少なからず問題はあります。
最近名鉄ホールや中日劇場といった1,000人クラスを収容できる中規模のハコがなくなっているのです。
そして2025年開業予定の愛知国際アリーナはその名の通り数万人規模の、よほどのビッグネームでなければ手に余るホールです。
そのため、程よい数百〜2,000人規模の公立ホールは常に予約が埋まっており、会場押さえもままならない状況です。
そんな状況で初演や千秋楽をブックするのはなかなか至難の業だと思います。
あまりに「名古屋飛ばし」が常態化してるので、「だったらデカきゃいいんだろ!アリーナアアアアア」とムキになってる感もあります、誰かが。
いい湯加減にならないもんですかね。
ラジオ局勤務の赤味噌原理主義者。シンセ 、テルミン 、特撮フィギュアなど、先入観たっぷりのバカ丸出しレビューを投下してます。