見出し画像

Roland MC-202について語る。

1983年4月。
YMOのアルバム『浮気なぼくら』リリース直前に、学研から『YMO BOOK』というムック誌が発売されました。

うわ、中古本高いな。
それはさておき、このムックにある広告が掲載されました。
Rolandの新製品、マイクロコンポーザーMC-202でした。

「マイクロコンポーザー」と言えば、YMOが使っていたRoland MC-8かMC-4のことを指していた時代。
MC-●の数字はコントロールできるシンセの台数を指していたので、202が2チャンネル仕様なのはすぐに察しました。

それより驚いたのは、そのうちの1チャンネルに内蔵シンセが使えるということ。
しかもこの年の正月に購入したばかりのRolandのシンセサイザーSH-101そっくりだったのです。

モジュレーションの波形が選べない、ノイズジェネレーターがない、といった差異はあるものの、少なくとも本機だけで音作りと1チャンネル分のシーケンスが可能なのです。

記憶では、当時の国内メーカー製品に1000音を超えるシーケンサーは存在していなかったと思いますが、MC-202は2600ノートまで打ち込めます。

モノフォニック・シンセサイザー1台を搭載し、B5ノート大で1.4kgと軽く、しかも乾電池で駆動して69,800円。
このスペックはあまりにも衝撃的でしたが、ローンを組める身分でもなく、ただ指を咥えて眺める中2でした。


そのおよそ2年後、近所の電気店のお兄さんが「DX7を買ったから要らなくなった」と、MC-202を2万円で売ってくれました。
早速SH-101と繋いで2チャンネル分のシーケンスを鳴らした時は感動でした。

時代はすでにMIDIの天下でしたが、このMC-202には古式ゆかしいCV-GATE端子が入力1系統出力2系統、そして同期用にDIN端子が付いていました。

ちょうど高校の入学祝いに買ってもらったKORGのPCMドラムマシン"SUPER DRUMS"(DDM-110)とはDINケーブル1本で同期できました。

ただし肝心のシンセの音は、SH-101と比べて鋭さや厚みに欠けるように感じました。
フィルターに不満はなかったので、オシレーターの違いだと思います。
おまけというほどチープではありませんが、過度に期待しない方が良いかなと。

しかも個体の問題か、チューニングがおかしく、音程が高くなるにつれてどんどんフラットしていく始末。

結局用途としては違和感の少ない低域でのベースパートか、自己発振させたザップ音でリズムを刻む程度になりました。

とは言え、TB-303同様グライド入力できたり、テンキーによるステップ入力でMC-4感を満喫したり、先に打ち込んだノートをタップボタンで演奏するなど、様々な入力方法が楽しめました。

ちなみに鍵盤部を含むボタン(POWER以外)はすべてラバー製で、ナショナルのBASIC機JRシリーズで知られる「消しゴムキーボード」でした。

また作成したシーケンスデータの保存は、その都度カセットテープへバックアップする必要がありました。
このロード音は当時のBAISIC機のものと似ていて、消しゴムキーボードと並び、マイコン感がありました。

SH-101は友人に売りましたが、こちらはチューニングの問題もあってなんとなく手放すのに躊躇し、40年経った今も我が家にあります。
ただ、もう電源が入らなくなってしまい、モック状態ですが。

Rolandの音源内蔵型シーケンサーは、STUDIO”M”(MV-30)という変わり種を経て、MC-303などのグルーヴボックスへと踏襲され、Zen-Core音源登場後はSH-4dが最も近い発想の製品となっています。

いいなと思ったら応援しよう!

みくばんP
ラジオ局勤務の赤味噌原理主義者。シンセ 、テルミン 、特撮フィギュアなど、先入観たっぷりのバカ丸出しレビューを投下してます。