ナンバーワンはダサいと言おう
いろんな意味で「今ごろ?」と思った記事が載ってました。
Web広告では食傷気味の「No.1商法」なんですけど、いまどき1位なんてことを喧伝したところで、売り上げに影響でもすんのかな、広告業界はナンバーワン教信者なのかなとも思っているんですけどね。
なんか「オリ●ンで1位だから買ってみた」ってCD見せながらカラオケに誘う90年代の管理職の皆さんを思い出しますよ。今ごろはシルバー人材として活躍されてると思いますが、皆さんお元気でしょうかね。
さて広告業界は、90年代どころかもっと昔、それこそ広告というものが誕生してから「最大級表現」というやつが大好きです。
わかりやすく書けば「日本最大」ではなく「日本最大級」という表現。なんや、お前のとこは最大じゃないのかよ。
そしてくだんの「No.1」。これは「最大」「最高」などを指すわけですが、新聞やテレビなどで使用される場合は、恐ろしいほどの注釈付きだったりします。消費者金融の広告並みに読みづらくてしょうがない。
コメディNo.1みたいに、誰が見ても「アホの坂田、最高やねん」と思えるナンバーワン爽快感がないわけです。
Web広告ともなると、この注釈はリンク先にしか書かれておらず、バナーはやたらに「売り上げランキング第1位」だの「愛用者好感度No.1」だの、まあ本当に馬鹿と煙はてっぺんに登っていくものだなあと、風流を解した心で見逃すしかありません。
僕は社会人デビューからまもなく、こうした広告表現のチェックを主な仕事としておりました。
配属されて最初に定年間際の大先輩から命じられたのは、関係法令やら日本民間放送連盟 放送基準解説書やらを読めということでした。
例えば『日本民間放送連盟 放送基準』にはこのような文言があります。
全文はこちら。
これは民間放送国の憲法みたいなもので、守れない奴は非国民扱いされ追い出されます。
ネット民が大好きなBPOが「勧告」「見解」「提言」などを判断する大元でもあります。
僕は入社直後にこれを叩き込まれ、半年ほどして「考査」という仕事を任されました。
先輩から注意されたのは、いわゆる健康食品の表現。「●●に効く」と謳えるのは、この国では医薬品と医薬部外品のみ。それ以外は効能を勝手に言ってて、何の補償もない紛い物。こう断言して「いや、でも…」と宣う関係者を説き伏せるのが仕事でした。
後年、2ちゃんねるで問題児をねちねち説教するスキルも身につけられました。
そしてもうひとつ注意されたのが、最大級表現を含む不当表示。この辺りはイチャモンではなく「俺を納得させろ」という思いで任務に当たっておりました。
もちろん頑固で融通の効かない警察になる気はなかったので、納得できる表現に直してもらえれば通しましたし、「どうすればいいんだ!」と怒鳴り込まれたら「こうすればいいんだ!大学出てこの程度の修正も思いつかねーのかこのオタンチンが!」と4倍の文字数で罵倒したこともありました。
どう捻ってもクロなモノは謝絶しましたけどね。
いや、久々に使ったな「謝絶」。
面倒臭そうな、いや実際面倒臭い仕事ではありますが、判断基準はわりと簡単で、「自分の母親が聴いてどう思うか」というところにありました。オレオレ詐欺を警戒する孝行息子のような気分であります。
そのため科学的だったりやたら横文字多用したりで、さもありがたいモノ、新しいモノという誤解を与えそうな表現を直すよう、営業マンや広告会社に伝えることも頻繁でした。
この考査、30代半ばになり他の仕事に専任するために、大先輩に預けましたが、この大先輩は完全に警察になってしまって、もろもろ作業を滞らせていたので、よくアシストさせられました。
いずれにせよ、今も放送業界には、こうした表現と戦っている担当者がいるわけで、それはある意味公共の電波を預かっている身としてのプライドでもあります。
翻って、Web広告。
Yahooが放送基準に近いガイドラインを出したりしてますが、隅々まで監視や統制を司る機関がなく、野良が横行する世界です。
日本の企業では誰がどの角度で見ても、トヨタ自動車がナンバーワン企業だということに異論はないと思いますが、トヨタは自ら「No.1」などと名乗りません。王者の風格ですよ。
「ちいせぇ奴ほどよく吠える」とか「ビッグマウス」とか、トヨタ様の前では霞んでしまうわけですね。
ユーザー側が「ナンバーワンは飽きた」「いまだに使ってて草」「平成商法()」くらいのお気持ちを表明して、ダサいというレッテル貼りでもして、撲滅の方向に向かわせるくらいしかないのかな、と思います。
みんなガンガレ。
ラジオ局勤務の赤味噌原理主義者。シンセ 、テルミン 、特撮フィギュアなど、先入観たっぷりのバカ丸出しレビューを投下してます。