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地方のコンテンツメーカーが生きる道。

クリプトン・フューチャー・メディアさんが会社訪問サービス『Wantedly』に掲載した自社記事を見つけました。

これがまた、ソフトウェア「初音ミク」開発に関わった社員の皆さんの対談という、どんな書籍やWeb記事にもなかったすごい内容だったのです。

若いスタッフの奮闘

メンバーに関する詳細は記事を読んでいただくとして、驚くべきはとてつもなくエキサイティングなその対談内容。

「初音ミク」の本体であるソフトウェア開発、後年まで継承されていくキャラクター設定、ユーザーが安心して使えるライツ環境、現在もさまざまな形で増殖しているマーチャンの仕掛け。

当時20代の若手社員たちが、アラフォーの伊藤社長に導かれてこれらを構築していく様が回想されています。

就活向けということで、文体はソフトに校正されている気はしますが、それを差し引いても、一冊の書籍にしてもいいほどの貴重な記録になっています。

『RADIO MIKU』への道

僕自身、この「初音ミク」をラジオ番組化していくことについて、2019年から1年以上に渡り、いろんなアプローチを考えました。
中には「初音ミク自身のトーク」という誰もが考えそうな(しかしあまりにも手のかかる)案もありました。

実は清水初のディレクション作

コロナ禍に突入した2020年9月、清水藍と『30分じゃ伝えきれない初音ミク』を作ったのは、名刺代わりでもありプロトタイプでもありリサーチでもありました。

既存メディアへの信頼を全失墜させた「おまかせ事件」以来、メディアへ排他的になりがちな方の存在も把握していたので、戒めとして配慮していたことも多数あります。

ただ界隈のどこまで拾ってどこから捨てるかは、『RADIO MIKU』を始めてからも試行錯誤しました。

上掲の記事を読むうちに、後追いではありますが、その「初音ミク」をラジオにアダプトする苦心を思い返しました。

勇気づけられたこと

この記事を読んでいて、いま現在の仕事について、改めて勇気付けられたこともあります。

実は先日、テレビなどグループ会社の管理職が出席する会議で、自社のコンテンツビジネスについて30分ほどプレゼンをする機会がありました。
その資料作りで改めてわかったことを挙げます。

まず、当社で現在番組プロデューサーを担当している社員は、4部署にまたがる16人。

そして5分のミニ枠から3時間のワイド番組まで、自社で制作している番組が80もあったのです。
なお帯番組も全曜日まとめて1番組としてカウントしています。

さらに有料で開催したイベントはこの9月までの1年で45件。
制作販売された番組グッズは、25番組で50アイテム近くもありました。

ディレクターのみ担当している若手社員もいるので、実に社員の3分の1以上が現役で番組企画や予算管理をしているわけです。
民放連加盟社で、現役の番組制作者が3割を超える会社は、たぶん他にないと思います。

当社の編成では、大まかにいうとふたつの使い分けをしています。
まず、日中ワイド番組は地元密着が基本で、営業的にはローカルセールスに注力しています。

一方「営業不毛」と言われてきた夜の放送枠。
かつてはスポンサードされたキー局の番組をネット受けして、配分される広告料で凌いでいました。

現在そのような番組はほとんど消え、キー局から番組を購入するか、低予算でも自分たちで作り続けるか、選択を迫られていました。
どちらにしても赤字となるのです。

そこで僕たちは、自分たちで熱を込めて番組を作り、手元に置きたいと思っていただけるグッズ制作と販売、参加した甲斐のある有料イベントを企画していく道を選んだのです。

最初からうまくいくわけはなく、何度も作っては潰しという作業を10年近く積み重ねました。
その意味では、幹部たちの理解と我慢があったおかげと思っています。

そしてこれは、地方の小さな組織だからこそできることだと自覚しています。
規模が大きく分業が進んだ会社や、競合相手が多い首都圏の環境では、なかなかこうした無茶に手を出さないでしょう。

札幌市に拠点を置くクリプトンさんは、規模で言えば僕たちと同じ地方の中小企業です。
世界に知られるコンテンツメーカーとなった今も、SNOW MIKUなどを通じて地元への貢献を続け、新しい企画にもチャレンジしています。

僕らの商売は日本語オンリーのため、どうしても国境を超えることは叶いませんが、地方に根ざしたクリエイター集団として、リスペクトしかありません。

今回の記事は、いろんな意味で魂が震えました。
コンテンツ事業に携わらない人にも、何かのヒントや希望を見出せるかもしれませんので、ぜひご一読を。

ラジオ局勤務の赤味噌原理主義者。シンセ 、テルミン 、特撮フィギュアなど、先入観たっぷりのバカ丸出しレビューを投下してます。