見出し画像

ラジオ局への就職を考えている方へ2022

ダッシュボードを見てみたら、一昨年書いたこの記事のPVが2万を超えてて、ちょいと狼狽えております。

これ↑をお読みの方で実際に「ラジオ局」を受験した方がいたのか、なんとも怪しいところではありますけど、役に立ったのかなあ。

2年近く経ってまた面接を担当するうち、いろいろ思うところもあったので、元記事に書き足すのはやめて、別稿にしました。
一部被る部分もありますけど、他の業種でも活かせることがあるかもしんないので、まあ読んでちょうだい。

業界動向

この2年間で、ラジオ番組を聴くようになった方は確実に増えたようで、聞いたところでは現在radiko全体のMAUはコ口ナ禍以前より増加しているとのこと。

ただラジオ広告の指標はテレビと異なり、日々の聴取数とあまりリンクしてないのは相変わらず。
だから聴かれているはずなのに儲かってなさそうとも言えますし、逆に聴かれてないのに儲かってると見る向きもあるでしょう。まあ儲かってないんだけども。

それと、ここ数年ウエイトの高かったイベント事業、それに紐付くグッズ市場が冷え切ってしまったので、今後も感染状況と世論次第という不透明感です。

また昨年1月のClubhouseの超短期ブームから「音声メディアが熱い」という趣旨のWeb記事が見られました。

どう見ても音声配信アプリの提灯記事ですありがとうございました、と唸るものもありますが、その手の記事では在京キー局が取り組むポッドキャストの近況についても触れられています。
おそらく、その手の記事からこの業界を目指そうと考えた方がいるかもしれません。

ポッドキャストは、今から17年前にiTunes日本版のスタートを機に各局が乗り出しましたが、編集に手間暇かかるわりにマネタイズがなんともかんともで、途中リタイアした局も多く見られました。

現在は配信先にSpotifyなどが加わり、自動で音声広告を付加するサービスも現れたので、そこに賭けて再びポッドキャストを量産し始めた局もあります。

成功のカギは他人任せではあるものの、音声広告の在庫やターゲティングが有効に作用するかどうか、というところでしょうか。
その意味で下地作りの段階でもあり、現在「マネタイズ、大成功!」というハナシはまだ聞きません。

いずれにしても、展望がパッとしないのは他の業種と同じです。
ついでに、最近は同じ放送業のテレビの記事にも、「凋落」という言葉が多用されています。

まあ就職人気はその年の指標に過ぎないので、気にしない人も多いでしょうが、いま放送業が人気業種ではないことは間違いなさそうです。

そんなわけで、採用率がぐっと上がったようにも見えるラジオ業界ですが、経営事情などで新規採用を断念した社も増えているので、全体的にはまだまだ狭き門のようです。

「趣味欄」が気になる

面接官やったりインターンシップで話を聞いていて最近気になるのは、根っからのラジオ好きという人の割合が高くなってるなあと。
これは当社だけのハナシかなあ。

もちろん、ラジオ好きな人が採用面接に来ることはありがたいんですけど、エントリーシートの趣味・特技欄にでっかく「ラジオ聴取」と書く方が増えてるんですよね。

むぅ…

あくまで僕のハナシですけど、エントリーシートに目を通す時、趣味欄と入社後の希望のふたつを重視しています。

このふたつは「これまで熱を持ってきた、いま熱を持ってるもの」と「これから熱を有効に活かしたいこと」を表しているからです。

僕が面接を担当して入社した、ある社員についての投稿です。

この後輩(制作部員)は、趣味欄に「初音ミク」としか書いてなかったんですよ。

それはそれで社会人としては問題と受け止める人もいるかもしんないが、僕なんかは明快だと面白がっちゃうんです。だから二次面接進出へ推したわけです。

彼女は入社から数年して、初音ミクなどのボカロ曲を紹介する自社番組はもちろん、プロセカ公式Webラジオや、ニコニコ公式の生放送にまでコメンテーターとして出演してるんですよ。
仕事に趣味をべったり塗り込んじゃったんですね。

これを読んでる方だって、ひょっとしたら趣味について語れば日本で5本の指に入るかもしれない、もしくはそんな知人が周囲にいる。
それが他の放送局で扱っていないジャンルなら、日本唯一の番組が作れるかもしれない。

そこまで展望できれば、趣味欄は濃いほどいいと思います。

だからこそ「ラジオ聴取」とだけ書かれてるケースは、ちょっとした不安材料になるんですよね。

「入社後の希望」はトラップ

ラジオを専らの趣味に挙げた方には、まさか入社がゴールではないでしょ?と問いたいわけです。
出版社に入り、いつの日か趣味のラジオでムックを作りたい、とかなら理解できますけどね。

趣味に「ラジオ聴取」を挙げた人にとっては、エントリーシートの「入社後にしたいこと」がキモとなります。

好きなら仕方ないか、と好意的に受け止めたとして、では入社後のビジョンは?というと、実はこれも似たり寄ったりで。

「好きなお笑いタレントを呼んで深夜番組が作りたい」

ですよねー。
いま芸人ラジオ、トレンドですもんね。

ある意味、この質問は人事が仕掛けたトラップで、個性的な人材を見つけるため、似たタイプの人を篩い落とすものだと考えた方がいいかもしれません。

いや、人事はそこまで考えてないと思いますけど、実際のところ、同じような答えの人たちが並ぶと「そろそろ個性的な答えがほしいな」と思ってしまうんですよ。
一期一会だからこそ、ぜひ他の応募者とは違う個性をぶつけていただきたいなと。

例えば、ラジオが好きだからこそ、この先ラジオというメディアが存在できるためにはどうしたら良いのか?そのために何をしたいのか?

とは言え、僕らを感心させるようなアイディアなど期待していません。
採用面接はアイディアコンテストじゃありませんから。
でも拙くてもいいから、じっくり考えてみてほしいわけです。
未経験だから拙くて当たり前です。

でも、どうしたら好きなものが長く続くのか。
世の中の人に嫌われている要素はないのか。
趣味にラジオを挙げる人は、そこを突き詰めて考えることが必須だと思います。

何年もつかは自分次第

ちなみに僕の場合はどうだったかというと、ラジオは聴いてたものの別にホビーでもなく、この会社を受けたのは、図らずも内定をもらった別の会社から逃げるためでした。

顛末はこちらに書いてます。

いわゆる関連会社へ入社以来、適当な理由でラジオの仕事を選び、30年近く居座ることになり、やがて会社がいろんな事情でラジオ局になってしまった、かなり変則的な経緯です。

とは言え、ラジオというメディアの動静には、社内の誰よりも敏感だと自負しています。

現法制下ではあと7年で定年なんで、家計的には最低限そこまでもってくれればいいんですね。

でもラジオ会社に就職を考えている方は、この先40年はもってくれないと困りますよね。

さらにメディア生き残りの過程で、”ラジオが維持してきた何か”を捨てざるを得ない局面もあるかと思います。

そんな時「私の好きなラジオがあああああ」と葛藤するのはともかく、なんとかそれを回避して維持する方法を考えたり、価値観を捨てて新しいものに順応するなど、アタマをぐるんぐるん回転することになります。

それがどんな施策かは今のところ誰にもわかりませんが、少なくとも「今のラジオが好きで仕方がない」という方ほど苦しい選択を迫られることになるでしょう。

常にラジオの外へもアンテナを張り巡らせられる人が、本気で欲しいと思っています。

面接はウケより熱意

エントリーシートは冷静に考えて書いてほしいですし、筆記試験はそれなりに正解してほしいわけですけど、面接だけはどんなに練習しようが出来不出来というものがあり、他の受験者の影響も受けたりします。

集団面接では場を盛り上げるタイプの人がいるもんですが、必ずしも「盛り上げたから採用される」なんてことはありません。
だから焦ることも、終了前に凹むこともありません。

退室するギリギリの瞬間まで、エントリーシートに書いたことを、熱意を持って言葉にできればそれでいいんだと思います。

まあ頑張れ。

いいなと思ったら応援しよう!

みくばんP
ラジオ局勤務の赤味噌原理主義者。シンセ 、テルミン 、特撮フィギュアなど、先入観たっぷりのバカ丸出しレビューを投下してます。