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Rolandの”606Day”に思うことなど
まあ最初に結論を書いちまうと、「Rolandさんは実に罪深いな」と思ったわけですよ。
4年前のことですが、AIRAブランドでTR-6S、Roland BoutiqueのTR-06、ソフトウェアTR-606が同時発売。
これがまあ、とんでもない罪深さなわけですよ。
そもそもどいつもこいつも「T」と「R」と「6」が被ったわけですが、これはTR-606というリズムマシンを連想させるネーミングなわけです。
この606のボディは、高値で取引されていたベースマシンTB-303に似ているものの、サウンドそのものは303はもちろん、同社のリズムマシンTR-808/909ほどメジャーではありません。
808で一世を風靡したクラップもなく、またスネア一発で「これは606だね!」とすんなり答えられるアイデンティティも控え目。
ただし、TB同様にメタリック感満点の筺体はコレクターにも人気ですし、808以上にスナック感(カルビーとかコイケヤのそれ)の強いハットは、今なおエレクトロニカ方面で活躍しており、用途によっては非常に魅力あるマシンと言えます。
思えば1982年頃、シンセとMTRを買えた人ですら、悩ましく感じていたのはリズムでした。
PCMドラムマシンも市場にはなく、808や909のために15万円超を払える財力もなく、お古のリズムボックスではどんな曲もタンゴやルンバになってしまいます。
そんな環境に4万円台で登場したTR-606は、本来であれば一大ブームを巻き起こしてもおかしくなかったのです。
が、当時YMO界隈はゲートエコーバリバリの生ドラムから一気にリンドラムへ移行していました。
一般的にTR-606の音は、NHK-FM『坂本龍一のサウンドストリート』のデモテープ特集でしか聴けないものでした。
そんなプレミアともヴィンテージとも一見縁遠いTR-606絡みの製品が、40年近い時を経て一気に登場したわけです。
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まずAIRAブランドでのTR-6Sは、前年(2019年)発売のTR-8Sのコンパクト版です。
僕はつい先日手に入れたばかりで、現在習得中です。
ACBによってモデリングされたTR-606サウンドもしっかり入っていますが、808も909も707も727もCR-78も入っていて、「T」「R」「6」の並びでも、TR-606の特化型ではないということ。
そのサウンドはサンプリング音とは異なり、まるで実機のように、いや実機以上にパラメータが反映します。
スナッピーを増してみたりディケイを細かく弄ったりと細やかなセッティングが可能で、もはや実機のエクステンドです。
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そしてTR-606そっくりのTR-06は、完全にTR-606後継マシンですが、こちらのサウンドもACBによるもの。
パネルにはありませんが、メニューでTR-6Sのように細かなセッティングが可能です。
とは言え、808など他機種の音は含まれていない上に、TR-6Sと価格も近いのでこれまたややこしい。
筐体フェチも含めた熱烈な606ファン向けなのかな、という感じもします。
所有欲はそそられますけどね。
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さらにややこしい存在なのが、ソフトウェアのTR-606。
僕はRoland Cloud経由のGALAXIASで鳴らしてまして、TR-6Sに興味を持ったきっかけでもありました。
こちらも音源はACBなので、TR-06の中身とは完全に同一となるわけです。
この辺りでハードでもソフトでも展開されている同社シンセSYSTEM-1/8と同じ立ち位置かなあと。
TR-6Sとソフト版TR-606を「実機と同一」の前提で聴き比べるかぎり、この3商品におけるTR-606のサウンドは優劣がないと思います。
なお昨年発売のAIRA COMPACTのT-8には、TR-606からハットが採用されています。
こちらも全サウンドがACBによるものです。
TR-6Sで擬似T-8キットを組んでみたら、意外と長く聴けるいい組み合わせです。
よかったらぜひ。
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