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【ネタバレ注意】『シン・ウルトラマン』観てきたよ(前編)
コ口ナ禍で制作スケジュールが押して10ヶ月待たされた『シン・ウルトラマン』(企画・脚本・総監修他:庵野秀明/監督:樋口真嗣)を観てきました。
リピート確実ではあるんですが、原典『ウルトラマン』(1966年・TBS)を観てない方へのメモも兼ねて、初見の記憶を残しておくことにしました。
タイトルにも書きましたが、完全ネタバレなので、「事前情報は要らん」という方はもうこの辺でお引き取りを。
一生後悔しますのでね。
もう一度書いとくぞ。
こ
の
先
ネ
タ
バ
レ
注
意
よし、じゃあ遠慮なく書き始めましょう。
「宇宙人でいい奴」への危惧
あの『シン・ゴジラ』(以下シンゴジ)からもう6年経つんですね。
現実の中に唯一の虚構として現れたゴジラを、政界と自衛隊と日本の産業技術が結集して迎え撃つという作品世界に加え、邦画にありがちだったファミリー要素、恋愛要素を徹底的に排除した意欲作でした。
技術的にも、当時の最先端のCG技術はもちろんiPhoneまで取り入れた多角的な撮影体制など、とにかくありそうでなかったエンターテイメント大作として、怪獣映画、特撮映画の枠を超えた高評価を受けました。
そんな傑作を作り上げたスタッフが再結集したのが、今回の『シン・ウルトラマン』です。
前作同様、第1作のリブートというアプローチはもちろん、公開直前までほとんどの情報を秘匿する広報戦略に、期待値爆上がりな方も多かったことでしょう。
僕ちゃんもそんなひとりです。
ただ制作発表の際、個人的に気になったのは「本作のウルトラマンは宇宙人なのか」ということでした。
シンゴジは出自がよくわからない巨大不明生物ではありながら、人間が核というものを手にしたことから誕生した地球上の生物です。
虚構はこの生物だけで、それ以外は極めてリアルに描写されたことで、作品世界にギリギリの説得力を持っていたわけです。
ところがみんなが知ってるほとんどのウルトラマン(ガイアとアグルを除く)は、善良かつ地球外からやってきた生命体であります。
未だ誰も見たことがない点ではシンゴジも同じですが、この生命体は困ったことに”いい奴”なのです。
シンゴジは人間とコミュニケーションがとれないおかげで、一切のファンタジー性が封印されましたが、ウルトラマンの場合、そこに人間に都合のいい補正がプラスされてしまうのです。
シンゴジ並みのリアリティで描写されると「そんなわけないやろ」と半笑いになってしまう恐れもあるわけですね。
そのうちどの星から来たという情報もないまま、予告などで「外星人」というワードが登場し、やはりウルトラマンは地球外の生物であることが明示されました。
そればかりか、米津玄師さんの主題歌のタイトルが「M八七」と発表されました。
あー、やっぱり僕らが知ってるウルトラマンか、というところで、本作の成否はこのファンタジー性をどう生かし、どう殺すのかに賭かっていると思ったわけです。
ちなみに曲名の「M八七」とは、ウルトラマンの故郷・ウルトラの星(劇中では「光の星」)が存在する星雲のことだと思われます。
実は原典をはじめウルトラシリーズでは「M78星雲」で統一されますが、原作者の故・金城哲夫さんが書いた「M87星雲」が誤植で78となり、それが定着してしまったわけです。
本作のウルトラマンでは、原典のデザイナー故・成田亨さんが描かなかったカラータイマーや背ビレの排除など、クリエイターが作った本来の設定を生かしているのが特徴です。
終盤にそれとまったく真逆の設定も登場するんですが、それはまた後ほど。
原体験者は悶死だな
期待と不安の中、封切り2日目の5/14に観賞することにしました。
土曜の昼という、カップルやファミリーの多い時間帯でしたが、僕の周りにはテレビ本放送の56年前に小学生だったであろう方々を多数見かけました。
まあ大ヒットしたシンゴジも、最初の1週間は大きなおともだちが多かったんですけどね。
では、改めてここからネタバレで書いていきます。
ホント「後悔したくない人は勇気を持って立ち去れ」と付け加えます。
(以下ネタバレ)
おなじみの東宝マークに続き「東宝映画作品」の表示、円谷プロ、そしてカラーのアイキャッチに続き、得体の知れない画面から随所が回転しながら現れたのは『シン・ゴジラ』のロゴ。
そして原典と同じく「爆弾ワイプ」で本作のタイトルロゴが登場。
原典の「特撮空想シリーズ」をもじった「特撮空想映画」、そして最近のウルトラシリーズでは必須の『ULTRAMAN』のロゴに「さあ、お手並み拝見!」と臨戦態勢。
ここから5分ほどはとにかく圧巻です。
まずトンネル工事現場から登場するのは、巨大不明生物ゴメス。
『ウルトラマン』の前作となる『ウルトラQ』第1話に登場した怪獣です。
このゴメス、よく見るとシンゴジそっくりです。
作品が地続きだから、という解釈もできそうですが、実際に『ウルトラQ』のゴメスは、東宝からゴジラ(モスゴジだっけ)を借りて装飾した着ぐるみでした。
ゆえに実に由緒正しきリメイクとなっているわけですね。
続いて東京駅付近に現れたのがマンモスフラワー。
東京駅と言えばシンゴジが氷漬けになったスポットですが、こちらも原典では皇居のお堀端(大手町)のオフィスビルに出現しています。
周辺の高層ビルも無事に建ち並んでますが、シンゴジ禍の跡地に再建されたものか、それともパラレルワールドなのかはわかりません。
ちなみに樋口監督は特技監督を担当した『ガメラ2 レギオン襲来』(1996)で、マンモスフラワーを草体としてリメイクしていますね。
さらにパゴス、ラルゲユウス、ペギラなどウルトラQを代表する怪獣たちが「巨大不明生物」あるいは「敵性大型生物」の冠とともに登場。
それぞれデザインもリニューアルされ、アングルも原典のオマージュとなっておりお腹いっぱい。ラルゲユウスのみ逃してしまったことになってるのは、原典を知ると笑えます。
こうして観る者を一気に「禍威獣(カイジュウ)のいる世界」へ導入する辺り、『パシフィック・リム』の序盤を連想しちゃいます。
おそらくほとんどのノスタルジア派(ウルトラQはまず地上波で観られないので強度のファンと言っていいかも)は、この5分で大満足でしょう。
シンゴジとの違い
この過程で、政府による禍特対(禍威獣特設対策室)設立が説明されます。
シンゴジ以上に早いテロップの切り替えなので、初見ですべて追うのは至難の業ですね。
そして禍特対メンバー、宗像室長や所轄である小室防災大臣が登場しますが、この辺りで「シンゴジと違うな」と感じる方も多いのではないでしょうか。
専門用語が早口でまくし立てられるのはシンゴジ同様ですが、粛々と任務にあたるというより、それぞれの私情がかなり反映した描写で、登場人物の個性が早い段階で露出されています。
電気を食う禍威獣ネロンガの登場により、禍特対の具体的なオペレーションが描かれ、現場でのリアルタイム解析と作戦指示を両立させる特徴が明示されます。
シンゴジでさんざん見せられた形式上の手続きや引き継ぎすら省略され、巨災対に比べ柔軟な運用がなされているのがわかります。
ウルトラマンと主人公・神永新二との邂逅は、原典の衝突事故ではなく、逃げ遅れたこどもを助ける過程で、衝撃波による事故という形に変更されています。
そもそも禍特対はビートルのような特殊兵器を持っておらず、また空中での衝突死という刺激を避けた結果、『帰ってきたウルトラマン』の郷秀樹と似たシチュエーションに収まったわけですね。
初めて地球にやってきたウルトラマンは全身シルバーでキラッキラ。
なおかつ口許にシワがありますが、これは原典では13話まで使われた、通称Aタイプマスクを再現したもの。
生まれたばかりのヒナ、というわけではありませんが、これがデフォルト状態なのでしょう。
ネロンガ戦後に着任した浅見弘子が、神永に単独行動について訊すシーンがあるんですが、ここで船縁が浅見に変わり者と説明します。
そのため神永の語るポリシーが、ウルトラマンの融合前からあったものなのか、融合によってリセットされたのかは曖昧でした。
続くガボラ戦では前出のパゴスとの共通性が語られますが、ここは原典における着ぐるみの使い回しを知ってると面白味が増すところ。
ウルトラマンがネロンガ戦と同じく、相手の技を全部受けきってフラフラと前進するところや、山を背にしてドリル攻撃を受けるシーンは、着ぐるみ感をわざわざCGで作っているのが顕著で面白かったです。
カラータイマーがない代わり、エネルギーが消耗すると全身の赤い部分が緑色に変化する設定には驚きました。
なおここまでは原典の宮内國郎さんの劇伴が(疑似ステレオで?)多用されており、あえて昭和感を強調した作風となっています。
と、ここまで書いたところで3千字を超えました。
後編はこちら。
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