聴取率セッツ3%台の衝撃。
一部のラジオファンの間で、この記事の見出しが嵐を呼んでいるようです。
折しもDIMEがこんな記事を投下するほど、ラジオの動静はいい意味で注目されています。
この春には『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)が東京ドームでイベントを開催し、会場の他、パブリックビューイング、配信合わせ16万人が観たという活況を呈し、ラジオ文化ここに極まれりと言わんばかりのブームとなっているかのように見えたのです。
それだのにそれだのに、セッツインユースが3%台。
つまりは首都圏では局を問わずラジオをよく聴く人が、25人に1人を切ってしまったというのです。
90年代後半は10%前後だったので、四半世紀の間に60%も減ったように見えます。
しかし、早合点しちゃいけないよそこの人。
「聴取率」というものは、基本的に放送されている時間、つまりリアタイで聴いている人の割合なのです。
radikoタイムフリーやポッドキャスト、あるいは無許可アップのようつべなどで聴いてる人は原則含まれないのです。
つまり、セッツインユースの低下はリアタイリスナーが減った、ということに過ぎないのです。
放送時間に仕事をしていて帰宅後に聴く人を加算すれば、ラジオリスナーの数はもっと増えるので、25人に1人よりは多いはずです。
ただし、そこに問題がないわけではありません。
番組の評価はオンデマンドのリスナーがどれだけ増えようと、番組の存続やテコ入れは聴取率によって概ね決まってしまうのです。
そもそも聴取率はスポンサー獲得や継続のために調査されるものです。
多くの場合、スポンサー企業は紙媒体からネット、看板に至るまで、さまざまなメディアで広告出稿を考えます。
ラジオはその媒体のひとつに過ぎません。
ラジオというメディアや番組自体に愛着がない限り、指定の時間でコマーシャルを聴いてもらえなければ、お金を払う意味がないのです。
「人によって聴く時間が違っても、CMさえ聴かれればいいんじゃないの?」という声もあるでしょうが、それはあくまでリスナーの言い分です。
と言うのも、スポンサーが購入しているのは「時間」であり、CM料金は放送時間によって変わるのです。
ベースになる聴取率が高い午前中の番組に深夜帯より高い広告料を払うのは、その時間に聴いてもらうためであって、その番組を深夜に聴くリスナーが多ければ、広告料が妥当ではなくなります。
オンデマンドで聴かれる前提なら、ラジオよりオンデマンドに特化した動画広告に出稿するだけのハナシです。
最近、在京局がポッドキャスト展開に力を入れているという記事をよく見かけます。
また今年2月から、スマホのradikoアプリからも各局のポッドキャストが聴けるようになりました。
こうした動きには、「時間を買う」という古い商慣習を変え、新たな市場を作る狙いがあるのかもしれません。
しかし、まだまだ大きなマネタイズ装置にはなり得ておらず、放送局内部で重視されているのは、古式ゆかしき聴取率です。
リアタイ聴取の少ない番組の運命は、今もって風前の灯なのです。
テレビにおいても、TVerなどのPV数が時折話題になるものの、従来の広告スキームを変えて、大きな収入源になるところまで至っていません。
セッツ3%台の衝撃を業界がどう乗り越えるか、ラジオに関わる全ての人が注目しています。