財務省資料:わが国財政の現状について
こんにちは。昨日の続きで、財務省資料のこの資料について読んでいきたいと思います。私の不勉強は百も承知なのですが、これって皆さんちゃんと読んだことあるものなのでしょうか?少なくとも私にとっては初見であり、報道などでも大して取り上げられていないように思うのですが。。
理系を言い訳にするのも良くないってわかってるのですが、理系脳なので経済関係の知識が極めて浅いことについてはどうぞご容赦くださいませ、、
本資料は、平成の財政、ストック、フロー、今後の見通し、物価と財政、海外事例の6つのセクションに分けられますので、それぞれ順を追って読み解いていきたいと思います。
平成の財政(1-6P)
我が国の歳出と歳入の差額は、1990年に一回特例国債脱却を達成して以降、増え続けています。こちらについては、2016年に改正特例国債法が成立しており、歳出増に歯止めが利きにくい状況となっています。以降、財政健全化目標は「特例国際脱却」から「国・地方を合わせたプライマリーバランス(=基礎的な財政収支)の黒字化」が目指されています。なお、基礎的な財政収支については日本はG7中、米国に次いで下から二番目です。。
公債残高は1990年時点で166兆円だったのが、2019年時点で897兆円と5.4倍にまで膨れ上がっています。対GDP比も37%⇒158%まで増加してます。また、普通国債残高以外の長期債務(借入金、地方債務残高)などを合算するとこの額は1,122兆円にも登ります。
ストック(7-17P)
債務残高とGDPの比率については、足元では230%にまで登り、全世界188か国中188位となっています。流動性の高い金融資産を差し引いた純債務残高で比較しても、日本はデータが公表されている89か国中89位となっています。
最近では海外投資家による国債保有率も12.1%まで上昇してきています。主要格付け会社による格付けも日本はおおよそ中国と同等のA~A+となり、財務破綻したギリシャよりは幾分マシではありますが、他のG7諸国に比べると劣後が激しいところです。
日本の財政は完全に公債に依存しており、将来世代は財政資源の枯渇が避けられない状況になっています。
フロー(18-29P)
「骨太2018」で策定された新経済・財政再生計画においては、「経済再生なくして財政健全化なし」という基本方針のもと、「デフレ脱却・経済再生」「歳出改革」「歳入改革」の3本柱の改革が銘打たれています。目標は2025年におけるPB黒字化です。
そのため、2021年までを基盤強化期間とし、主に社会保障改革を中心に検討されており、その実質的な増加は高齢化による増加分に収めることを目指しています。
公共投資以外も含む社会保障以外の支出(GDP比)では、日本は12位と特段悪い結果ではありません。これはすなわち、高齢化の進展に伴う社会保障支出の急増こそが政府の総支出を増やしている根源であると言えます。
なお、財政収支の黒字化は、バブル景気・いざなみ景気を含め、近年では一度も実現していません。他の主要国も軒並み悪化はしていますが、日本は192か国中116位と心もとない結果です。
今後の見通し(30-36P)
①成長実現ケース、②ベースラインケースの2つで見たとしても、2025年にはPBは①▲0.2%、②▲1.1%となり目標には到達しない見通しです。
財務省資料においては「近年の我が国の一人当たり実質GDPの伸びは、他の先進諸国と比べてそん色ない」と記載されていますが、それはこの記事で記載されている内容と矛盾はありません。要は足を引っ張っているのは、「付加価値の低い産業の温存」と「低い所得でも楽しく働いている高齢者世帯の急増」によるものということです。
債務残高/GDP比の今後の推移については、内閣府とシンクタンク・民間団体の見方は分かれていますが、内閣府資料はあくまで国債の金利が低いことを論拠としてるものであり、財政収支はずっと赤字であるため、中長期的に上がり続けるのは自然な見方と言えます。
物価と財政(37-42P)
緩やかな物価上昇による財政成長を期待する向きもあるが、経済成長を伴わない限りは財政の改善に寄与しないとされます。これは過去のオイルショック時の狂乱物価やWW1後のドイツ、WW2後の日本の例を見ても明らかといえます。
財政規律を一時的に放棄するのは現実的ではなく、基礎的財政収支の黒字化を目指すことこそが一番重要です。
海外事例(44-62P)
1995年以降の先進国+G20国のうち、財政危機が発生したのはロシア、韓国、トルコ、ギリシャ、アルゼンチンなど14か国。財政危機は、信用自由、例外的な公的財政支援、潜在的な財政破綻、市場からの信認の喪失などが挙げられます。こうした国においては、負担増や年金・医療の大幅な給付カットなどの厳しい措置が実施されます。
一方で、このような財政危機があった際は、緊縮財政の実施⇒経済状況の悪化による、社会情勢の不安定化も想定されます。
主要先進国においては、債務残高/GDP比に上限目標を設けており(その中でも60%程度が大多数。日本は現状235.6%・・・)、かつ財政収支に関する目標(フロー目標。日本は黒字が当面の目標)も掲げています。
日本と同様に少子高齢化が進んでいるも、債務残高対GDP比においてはG7中1位であるドイツは経済成長と財政健全化の両方を実現させています。その際、企業投資の促進や経常収支の黒字拡大などで好調な経済を維持しています。ドイツにおいては労働市場改革などがキードライバーとなったとされていますが、日本においても包括的な改革が望まれます。