企業研究:日本山村硝子
おはようございます。久々の朝の更新です。やっぱり朝作業しないと顕著に能率が落ちますね。仕事をするのは朝とはよくいったものです。昼は食後のやる気が露骨に落ちて効率が悪いし、夜は焦る気持ちばかり増えて、本当に良くない。
さて、今日は「日本山村硝子/物流関連事業でM&A検討、新中期経営計画策定」というニュースを扱いたいと思います。こちらの会社は以前後輩が営業で担当しており、日夜大変な交渉を繰り広げていました。今回は簡易的な財務分析のみならず、物流関連事業でのM&Aの実現可能性なども検証していきたいと思います。
収益性分析
ROA、ROEのどちらも致命的に低いです。売上高総利益率はそこまで悪い値ではないため、売上高原価率が極めて高い(80%超)であることが原因と考えられます。この場合、ROA、ROEを改善するためには①売り上げをとにかく上げる、②原価をとにかく下げる、の2つしかありません。
売り上げの増加の観点で見ると、主力4事業のうち、プラスチックセグメント(売上比率10%弱)、物流セグメント(同15%)の2つについては増収傾向があるため、可能性はありそうです。その一方でガラスびんセグメント(同68%)、ニューガラスセグメント(同7%)の2つについては市場自体が伸び悩んでいる様子です。
また原価低減の観点でいうと、ガラスの製造工程にかかる原材料は珪砂、ソーダ灰、石灰といったそこらへんの石ころに含まれる成分になります。これらは限りなく安いため、光熱費が大きな割合を占めると推察されます。同じく、少量多品種生産であることも炉の数に対する光熱費増を招きやすいと考えられます。
なお、今回M&Aなどで成長を指向している物流事業も基本的には利益が出にくい構造であり、粗利は概ね10%程度の業界になります。よって、この施策ではROA、ROEには良い影響は出にくいものと推察します。
安全性分析・活動性分析
安全性の観点では、流動比率、固定比率、自己資本比率のいずれも安全圏にあります。その一方で、活動性は著しく低いです。
これは事業自体が多少シュリンク傾向だったとしても、昔取った杵柄がまだ残り続けているためだと推察されます。よっぽど極端な事故などが起きない限りは会社として安全でしょうし、だからこそ今はまだ再起のチャンスはあると考えます。
だとすると、活動性をとにかく上げるような活動(=売り上げをとにかく上げる活動)にとにかくフォーカスを充てる必要があります。
生産性分析
生産性の観点では、資本生産性が著しく低く(製造業平均で0.90程度が目安に対し、0.06)、まさにこれは少量多品種生産を行っているためだと考えられます。また労働分配率も84.6%と通常より高く、現状の利益に対しての人件費の割合が高いです。過去に何度かリストラをしているというのはわからんでもないですが、それよりも少量多品種生産による資産の非効率な使い方こそが一番の問題なように思います。
今後の取るべき事業戦略
ポーター氏がかつて言ったように、競争戦略の累計は、コスト・リーダーシップを取るか、差別化をとるか、集中するか、の3つになると思います。
ガラスびん事業と一言で言っても、おそらく品種によってこの3つの戦略がごちゃまぜになっているのではないかと推察します。現時点では収益率の低さが生産性の低さに直結していると推察されるため、製品・事業のポートフォリオを見直し、とにかくコスト・リーダーシップをとるものについて戦略を集中すべきだと考えます。つまりは、汎用製品の日本シェアをより拡大させる方向です。
その他の3事業については、コア事業との関係の深さと現在の収益で考えるべきだと考えます。つまり、現状の資産を使っての事業拡大が可能なもの、という観点です。設備の稼働率やサプライチェーン上の共通性、という観点でいえば物流事業が近いというのはまあ頷ける話ではあります。
キャッシュフロー計算書を見る限り、営業+投資-財務+となっており、投資による成長を指向しているようにも見えますが、こちらは収益性がどんどん下がっている状況でもありますので、この戦略は引き続き周辺事業が統率とれないままに広がっていくような状況にもつながりかねません。よって、現状は過剰な投資は控えて経営資源を今集中すべき事業に向ける、すなわち採算の悪いノンコア事業、あるいは採算の悪い製品については早期撤退の判断を行うことで、営業+投資-財務-に近づくように戦略を練り直すことが必要かと推察いたします。
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