【M&A】TOKAIHD、過去最高純利益達成
おはようございます。こうやって毎日M&Aについてのニュースを更新していくことで、だんだんとニュースへの興味やM&A界隈で起こっていること、M&Aで起こす変化などの感覚が掴めてきました。今更なのでお恥ずかしい限りではありますが。門外漢の分野に飛び込むので、恥を忍んでこのように毎日なるべく思うところを書く作業を行っていますが、自分の手で考えたうえで記事化すると、頭の入り方が違いますね。単に読み流すのとは雲泥の差です。もちろん時間はかかりますが、これはこれで良い鍛錬として、今月中は少なくとも継続していこうと思います。
この記事を取り上げた理由
今日は静岡を中心にガス事業を展開するTOKAIHDについてのニュースを取り上げてみました。元々私自身ガス業界出身者であるため、TOKAIはたまに競合になっていたのですが、安売り事業者な印象があり、そんな高利益体質になっている印象もなく意外だったため、裏にどういうからくりがあるのか確認したく、取り上げました。
要旨
①TOKAIHDの2020年3月期の決算は前期比6%増の82億4100万円と2年連続の過去最高を記録した。売上高は2%増の1959億円だった。LPガスや都市ガス、CATVなどM&A対象の5社分を含め、顧客数が1年間で約10万件増えて300万件に達した。
②M&A(合併・買収)効果もあって顧客数が伸び、売上高は3期連続で増えた。
③21年3月期も増収増益を見込む。新型コロナウイルスの感染拡大の影響は織り込んでいない。消費者向け生活インフラ事業が多く、(新型コロナによる)大きな影響はないとしているため。ただし、法人営業(商業施設、工場など)への影響は想定される。
解釈
TOKAIは純利益も過去最高となったようですが、ROAも4.57%とガス事業の割にはまずまずいいです。ガス事業者はガス基地や導管など固定資産を多く持つため、事業特性に対してROAは若干低めになりがちだからです。
また、ROEも15.7%と非常に高い数値になっています。こちらも東京ガス、大阪ガス、東邦ガスなどは軒並み一桁台なのに対し、優秀です。これは借入金なども積極活用して財務レバレッジを上手くきかせていることを示します。
TOKAIHDの中期経営計画を見てみましょう。ホールディングス化やM&Aを通じたシナジー創出・クロスセルといったことがよく記載されています。これはガス事業というものは立地上(家庭需要・商業需要・工業需要の分布および数)の制約、原料価格や季節(冷暖房需要やボイラーなどの熱源)の制約といったコントロールの効かない制約条件が大きく、供給エリア内の追加需要発掘が営業の主なミッションであるためです。ただ、この供給エリア内の需要発掘も、需要同定、営業活動、予算獲得、工事手配など一筋縄ではいきません。そう考えると多少安売り合戦になったとしても、クロスセルによる簡易的な売り上げ増というのがROA、ROE高度化に重要というのはうなずけます。
これを示唆するように、TOKAIはエリア拡大+解約防止、追加サービスに多額の投資を行っています。(出典:TOKAIHD中経資料)
なお、この解約防止策というのも非常に興味深く、WEBサービスと顧客DBとを突合せしたデジタルマーケティング的なアプローチで、営業へのFBまで検討したものとのことです。(出典:TOKAIHD個人投資家向けIR資料)
また、広域化に向けたM&Aも積極的に行っているようです。通常都市ガス事業者にとって隣接する他社は顧客への提供サービス品質、人事システム、実務オペレーションなども異なる上、現状は顧客にあたる関係であるため、M&Aを積極的に行うインセンティブは全く働かないのですが、TOKAIのように小回りが利く事業形態であれば後継難に苦しむ事業者でかつ彼らのいうところのTLC(Total Life Concierge)のニーズが強い地域であればM&Aはどんどん進めることも可能となります。
東京ガスはFCFは約90,000百万円に対し、TOKAIでも約10,000百万円もあります。思ったより大きいかな、とも思いましたが、キャッシュフロー自体はTOKAIは2016年3月期より大きく変わっていません。自己資本比率についてはこの5年間で25.6%⇒38.0%まで大きく伸びました。東京ガスは5年前よりずっと47.7%と高い水準をキープしており、TOKAIも都市ガス事業者ばりの安全な財務体質に近づいているということです。
守りに徹して確実に財務指標を積み上げたTOKAIが史上最高益を上げたのは必然であり、同時に今後攻めるための一歩も着実に進めています。いよいよ電力・ガスの自由化も盛り上がってきましたね。5年後は勢力図はまた大きく一変するかもしれません。
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