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転職エージェントの選び方 ~実際にあった悲劇を受けて

はじめに

すぎやまは、HR職ではあるが採用業務を専門に行っているわけではありません。自身のチームの採用では書類選考や面接をし、エージェント出身のリクルーターの同僚もいるので企業側の実務についてちょっと詳しい、自身もエージェントを利用してことがあるので体験者である、という程度です。
近年日本でも活況を呈する転職市場ですが、そんな中で感じるエージェントの選び方や転職活動のポイントなどに触れたいと思います。


1. 転職エージェントとは?

転職エージェントは、転職を支援する専門的なサービスを提供する組織や個人で以下のような役割を果たします。

■1■ 求人情報の提供
転職エージェントは、求職者に対して企業からの求人情報を提供します。求職者のスキル、経験、希望条件に合った求人情報を探して紹介します。
エージェントによって得意分野(業界や職種)が異なるため、ご自身の属性(職種や年齢層、業界など)や転職希望先の属性にあわせて選びましょう。

■2■ アドバイスとカウンセリング
転職エージェントは、求職者に対してキャリアアドバイスや職務適性の評価やキャリア志向などについてカウンセリングを行ってくれます。
ご自身の持っているスキルや経験の市場価値の測定や今後のキャリアプランをたてるために直近で転職意思がない場合でも活用するとよいでしょう。

■3■ 履歴書と面接のサポート
転職エージェントは、履歴書や職務経歴書の作成、面接の準備などを支援します。
エージェントによっては、求人側の企業文化や採用フローを熟知していて、具体的な面接での想定質問などを提供してくれたり、アピールすべきポイントなどのアドバイスを提供してくれます。

■4■ 企業との連絡、調整、交渉
エージェントは求職者と企業との間に架け橋の役割を果たします。まさにそこがエージェント(代理)たるゆえんです。求職者の代理として、企業との交渉や調整を行い、求職者と企業とのコミュニケーションを円滑に進めるサポートを行います。

2 . 転職エージェントの収益構造

これほどのサービスを提供してくれる転職エージェントの収益構造はどうなっているのでしょうか。
求職者の多くは無料でこれらのサービスを享受できます。
一方で、採用する企業が成功報酬を支払います。一般的に求人に至った人材の年収の3割程度がエージェントに支払われると言われています。
つまり、求人の年収が500万円である場合には、エージェントは150万円ほどの手数料を得ることができるのです。

ちなみに世界的にみると、日本と韓国の転職エージェントは異常らしいです。それは終身雇用や転職市場が未整備で人材の流動性が低い社会構造とも関わっているようです。
アメリカから来たHRのエグゼクティブが「なぜ日本は採用コストがこんなに高いのか、エージェントをこんなに金持ちにするのか」と話していたのが印象的です。

3. 転職エージェント利用のメリットとデメリット

メリットとしては、情報へのアクセス(非公開求人)や専門的なアドバイス、代理人(調整、交渉、プロセス管理)としての機能があげられます。
デメリットとしては、一部ですが成功報酬型で求職者が費用を負担するケースや、情報や品質の偏りがあげられます。
この偏りは、エージェント個人による部分も大きいです。業界知識であったり、企業との交渉力であったり、当たり外れはあります。
転職エージェント個人には、多かれ少なかれ成功報酬(インセンティブ)があります。現職から年収を落とした転職の方が成功確率が高いため、エージェントによってはキャリアアップではなく、横滑りやダウンの提案をしてくるケースもあります。

私個人の意見としては、エージェントを利用すること自体にはメリットがあるので、活用すべきと思います。
多くの方は在職中に、転職活動をすることでしょう(というか、在職中に次を決めて転職することをおススメします。離職済や退職が決まっている場合には、足元を見られたり、要らぬ誤解を招いたりと不本意な転職につながることがあります)。意中の会社に1社だけ応募する、といったケースでない限り、多くの求人を自身で探し、日程調整し、転職活動を管理していくには相応のコストがかかります。そのコストをエージェントに代行してもらうのです。

4. 利用する際のポイントと注意事項

転職エージェント選びのポイント。それは、あなた(求職者)のエージェント(代理)として役割を果たせるか見極めることです。
今回このnoteを書こうと思った理由は、まさにこれが影響しています。
転職活動全体をトータルでサポートしてくれるエージェントではなかったために、転職活動自体は成功したが、苦労をした実例を知ったからです。

エージェントを利用するメリットでも記載しましたが、情報へのアクセス以外でエージェントに期待する役割は、求職者目線での転職活動全体のプロセス管理です。
例えば、第一志望のA社、第二志望群のB社、C社、D社があったとします。
各社の面接日程を求職者目線で調整し、効果的で納得のいく転職活動をサポートするのが、求職者目線でのよいエージェントです。
SPIなどの筆記試験がある場合や面接がある場合、A社の日程が初戦にならないよう、第二志望群の企業で先に経験値を積ませるのもエージェントの手腕です。
かと言って、A社を後回しにしすぎると、選考日程が合わなくなります。
A社で1次面接をするタイミングで、B社で内定が出ていたとするとB社の受諾期限が来てしまう可能性もあります(B社に行く気がなければ、A社にアピールする材料としては有効です)
このあたりの日程を調整し、仮にA社に受からなかった時にも併願先を確保して納得のいく転職活動をサポートしてくれるのがよいエージェントだと私は思います。
それ以外にも、現職に残ることが(その時点で)最良の選択であれば、それを勧めてくれるのもよいエージェントと言えるでしょう。

もう一つの注意事項として、エージェントは企業側の代理でもあるということです。
エージェントの成功報酬は、年収の30%程度と言いましたが、人材獲得競争が過熱する特定の市場では、往々にしてそれ以上が支払われることもあります。上記の例で、例えばC社がフィーアップをしている場合、エージェントとしてもC社への転職を決めてほしいというインセンティブが働くかもしれません。あえてA社の面接設定を遅くし、C社の内定受諾期限までにA社の選考ができなくすることも可能です。
エージェントにとっては、求職者の一人ひとりは一過性(あるいは数年に1回)のお客様ですが、求人企業は頻繁にやりとりをする本当のお客様なのです。

それでは求職者側はどうしたらよいのでしょうか。
それは複数のエージェントに登録して、比較することです。実際に誰が担当につくのか、選考を進めるうえでのイメージなどを質問してみましょう。

5. 実際にあった話

ここから先は、上記の話を踏まえた求職者から見たエージェントとして、悲劇的と思う事例だったので書きたいと思います。
個別ケースの話になりますが、特定の会社を批判したいわけではないので、会社名は有料公開とさせていただきます。

求職者から見たエージェントとしては、本人に代わり転職活動をトータルサポートしてくれるのがよいエージェントです。
このケースは、構造的にそれがないエージェントだったのです。

そこでは、まずは受付担当のエージェントが存在して、求職者の希望やスキルセットを評価してくれたそうです。
それとは別に求人企業側に、それぞれ担当者が存在するという形式をとっていました。
企業から見ると、いつも同じ担当がやり取りをしてくれるため、とても効率がよい状況です。
この状況で求職者側に何が起こったかというと、企業に応募するたびに担当者(エージェント)が増える、という現象です。
それぞれの担当と求職者がやり取りし、日程調整も行わなければなりません。

求人企業ごとのエージェントは求職者の負担が大きい

志望度も伝えていたため、第一志望の企業を担当するエージェントは熱心に対応してくれました。
一方で、第2志望以下の企業を担当するエージェントは他の案件で忙しいのか、求職者側から連絡しないと進捗状況も知らせてくれない状況だったそうです。

極めつけは、結局第2志望の企業への内定受諾を決めたにもかかわらず、第3志望以下の面接日程のキャンセルを、求職者が個別のエージェントにしなければならない状況だったそうです。エージェント間での連携が深くできていなく、戦略的な面接日程の組み方などは望めるはずもありません。
余談ですが、第2志望の企業を担当するエージェントは入社意思を伝えるとタナボタ的な感じの反応(「えっ?決めるの?ラッキー!」)だったそうです。

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