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百年の孤独

百年の孤独を運命づけられた家系は二度と地上に出現する機会を持ちえないため、羊皮紙に記されている事柄のいっさいは、過去と未来を問わず、反復の可能性のないことが予想されたからである。

本書 末尾

本書はコロンビアの作家であるガブリエリ・ガルシア=マルケスの長編小説である。著者は1982年にノーベル文学賞を受賞している。

 発表は1967年なのでほぼ半世紀近く前の本である。全世界で5000万部近く売れ、世界中にラテンアメリカ文学ブームを引き起こしたといわれる。このたび待望の文庫化ということで話題となった。

 本書のあらすじは南米の「コマンド」という町を舞台に、開拓者の一族とコマンドの歴史の物語である。コマンドは架空の町であるが設定上著者の出身であるコロンビアの一田舎町のようである。大河ドラマのようであるが実際の歴史上の出来事はあくまで背景設定であり、コマンドという架空の町と主人公一族の栄枯盛衰が描かれている。

 本書は先祖の幽霊や錬金術、奇蹟などが当たり前のように出現し、非常に不思議な感覚を読者に味合わせてくれる。異文化体験をしているような感じである。それらの特殊な登場物たちは物語上特段重要なものではない。まさにあたりまえの日常の一部のように出現し語られており、現実的な日常と非現実的な幻想が混和して非常にシュールに感じられる(これを魔術的リアリズムという手法らしい)
 このような摩訶不思議な雰囲気はなかなか他の本では味わえない。それこそ南米にタイムスリップしたような感じられた。(しかもなかなか帰ってこれない)このトリップ感を味わえるのが本書の最大の魅力だと思う。本書以外で感じたことのない感覚であった。

 ただ肝心のストーリーの面白さについては、やはり長さ(全600ページ弱)もあってか、非常にだれる。正直なんでこんなに冗長な小説が世界で5000万分も売れたのかわからないと思ってしまった。読むのに相当根気がいるので、もし購入を考えていたらまず本屋で冒頭10ページくらい立ち読みをお勧めする。

 そのときちょっとでもしんどいと感じるなら、話題の本でノーベル文学賞受賞作家だが、手を出さないことをお勧めする・・。
 

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