sagawa

新潟在住の地方公務員です。本を読んだり映画を見たり、ラジオを聴いたりするのが好きなのでそのことを書いています。

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百年の孤独

本書はコロンビアの作家であるガブリエリ・ガルシア=マルケスの長編小説である。著者は1982年にノーベル文学賞を受賞している。  発表は1967年なのでほぼ半世紀近く前の本である。全世界で5000万部近く売れ、世界中にラテンアメリカ文学ブームを引き起こしたといわれる。このたび待望の文庫化ということで話題となった。  本書のあらすじは南米の「コマンド」という町を舞台に、開拓者の一族とコマンドの歴史の物語である。コマンドは架空の町であるが設定上著者の出身であるコロンビアの一田舎

    • スオミの話をしよう

      現在(2024年9月)公開の三谷幸喜脚本、監督の映画である。主演は長澤まさみでそれ以外に西島秀俊、松坂桃李などが出演する。非常に単純な感想であるが、面白い。  三谷作品に精通しているわけではないが、いくつかドラマや映画を見たことがあり、正直ドラマは面白いが映画は飽きてしまう印象があった。あのノリで面白いのは1時間が限界というのが経験としてあったため、今回劇場で1000円以上払って見るのは少し勇気が必要だった。ただそれは杞憂で、時間が気になることがなく見ることができた。 非

      • 追いついた近代、消えた近代

        著者は教育社会学者の苅谷剛彦教でが2019年出版。著者紹介は下記リンクより。  本書は平成くらいから行われてきた様々な教育改革とその混乱について、なぜこうなったのかを政府の文書を中心に明かしていこうというものである。引用が難しいのでしていないが、タイトルの「追いついた近代」とは幕末以来の欧米に追いつき追い越せの意味での「近代」であり、消えた近代とはそもそもmoderneがもつ近代化以降の現代までを含んだ「近現代」の「近代」である。そもそもの日本語の「近代」は英語同様に両方の

        • アフガニスタン・ペーパーズ

          本書はワシントン・ポストの調査報道記者で2001年以来、外国特派員、国防総省記者、安全保障の専門家として、ピューリツアー賞のファイナンスの3回選ばれている。 本書のタイトルからして多く人が察するのがベトナム戦争時にベトナム戦争の真実について国防総省がまとめた機密文書であるペンタゴン・ペーパーズだろう。ただペンタゴン・ペーパーズが機密文書をすっぱ抜いたものであるのに対して、本書は2016年にアフガニスタン復興特別監察官(SIGAR)事務所が関係者数百人に実施したインタビュー記録

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          正欲

           本作の著者は朝井リョウさんで、令和3年3月に新潮社からでたものの文庫版。今年11月からは映画版も上演される。今年はいわゆるLGBT理解増進法が成立した年でもあるのでそういう話題についてはホットな年である。著者の名前は知っていはいたが作品は読んだことがなかったので手に取ってみた。  あらすじは人には言えない性的指向を抱えた人が社会と葛藤していく物語である。大きなストーリーがあるというよりある事件に関与する人物たちの事件へのいきさつ、それまでの人生、事件へつながっていくいきさつ

          イスラーム文化-その根底にあるもの-

          著者は慶応大学名誉教授の筒井俊彦で1981年に岩波書店が出版したもの。自分が読んだものは文庫版で1991年に第一版がでている。手元にあるものは第37刷なのでかなり長い間売れ続けているロングセラーである。著者は日本人で初めてアラビア語からコーランを和訳したことで有名。語学の天才で30の言語を操れたとか! 井筒俊彦 - Wikipedia 本書はイスラーム文化の根底にあるものは何かというテーマであるが、イスラームの入門書のように感じた。特に日本人(西洋人も?)としてはイスラーム

          イスラーム文化-その根底にあるもの-

          イギリス憲政論

           著者は19世紀イギリスのジャーナリスト、評論家のウォルター・バジョット。今でも存在するイギリスの雑誌「エコノミスト」の編集長を務めた。一時期は政治家を目指して衆議院への立候補もする。本書の「イギリス憲政論」はイギリス政治の古典として憲法の運用上の権威としても扱われているとのこと。ただ憲法学の教科書のようにこの条文についてこのように解釈すべしという内容ではなく、古臭い言い方でいえばイギリスの「国体」について解説しているものである。  ウィキペディアだと君主擁護論として紹介され

          イギリス憲政論

          日の名残り

           著者はイギリスのノーベル賞作家カズオ・イシグロ。本作は1994年に出版され、1989年にイギリスの文学賞であるブッカー賞を受賞した。著者のカズオ・イシグロは「わたしを離さないで」で2017年にノーベル文学賞を受容している。  本書のあらすじはイギリスの老執事のスティーブンスがかつての同僚である女中頭のケントンに長期休暇を取って会いに行き、その道中で様々な人に出会ったり、ふと過去の思い出を回想していくというもの。スティーブンスの一人語りで進んでいく。スティーブンスが務めるお屋

          日の名残り

          犯罪と刑罰

          本書はおそらく刑法を学んだ人は100%聞いたことのある近代刑法の名著。著者はイタリア人のチェーザレ・ベッカリーア。本書は1764年に出版されている。訳者は風早八十二・五十嵐二葉。  本書は罪刑法定主義、無罪推定、死刑・拷問の廃止など近代的な刑法のアイデアを存分に含んでいる。その発想の根底は社会契約説である。社会は欠く自然人が自分の権利を共同体に譲渡することで成立したものであり、その共同体の権限、刑罰は、その契約を根拠とするものである。ただベッカリーアはどの社会契約説、ホッブス

          犯罪と刑罰

          プロレゴーメナ

          18世紀から19世紀かけて活躍したドイツの哲学者イマニュエル・カントの著作。プロレゴーメナとはドイツ語でProlegomenaと書き、意味は序文というそうだ。本書の正式な名称は「学として現れるであろうあらゆる将来の形而上学のための序文」らしい。カントの代表作である「純粋理性批判」が多く人にあまりわかってもらえなかったためその要約版として出版したもの。要約版だが十分難解である・・・。ただカントの哲学とは何かを体験しようと思ったら一番手に取りやすいと思う。まぁこれしか読んでないけ

          プロレゴーメナ

          一下級将校の見た帝国陸軍

          著者は言わずと知れた山本七平氏で1987年出版のもの。手元にあるのは2017年でなんと23刷。今でも自分含めてたくさんファンがいるような偉大な評論家である。 著者詳細はウィキペディアにある。  本書の内容は著者が実際に太平洋戦争に従軍した経験をもとに「帝国陸軍」とはなんだったのかを考察したもの。手記でもあるが、その体験から帝国陸軍、広く日本を考える論考になっている。  著者の従軍体験は壮絶なものである。著者は大学生として学徒出陣で徴兵され砲兵に配属される。その中での最も合理

          一下級将校の見た帝国陸軍

          君たちはどう生きるか(映画)

          今年2023年7月14日公開のスタジオジブリ最新作。宣伝をしないで公開するという異例の手法ながら公開4日間で135万人動員と大ヒット。監督は宮崎駿監督で「風立ちぬ」以来10年ぶりに監督を務めた作品になる。  まったく宣伝やあらすじを公式には公表していないのでここで書くのもよくないと思うので書かないようにしようと思うが、お勧めするかといわれるとちょっと悩む映画だと思った。少なくともクラスの友達とワイワイ見る映画ではない。(まぁタイトルからして察しはつきそうだが)  本作は昭和

          君たちはどう生きるか(映画)

          〈起業〉という幻想 アメリカン・ドリームの現実

          ※フリンジ・ベネフィット・・役員や従業員が享受する給与以外の利益。例えば社員だけ使えるカフェテリアや保養施設など。  本書は主にアメリカの起業に関する現状について膨大なデータをもとに巷で言われている種々の言説を「神話」とし、実際はどうなのかを解き明かそうをするものである。著者はケース・ウェスタン大学の教授で本書のもととなった論文は2002年に米経営学会最優秀論文賞を受賞している。2008年に出版の本書もBest Business Book of 2008に選ばれている。邦訳

          〈起業〉という幻想 アメリカン・ドリームの現実

          「個」の誕生-キリスト教教理を作った人びと-

           本書はキリスト教の教理について4世紀から6世紀の議論が現代でも使用される「個」の感覚の確立に決定的に重要だったのではないかという問題認識から、そのころの議論を追っていくことで証明しようとするものである。著者の坂口ふみさんは牧師さんなどの信者でなく大学の先生で宗教学というよりも比較文化の専門家のようである。本書もエッセイ風の書き方がなされていて全く門外漢でもなんとかついていけるような感じである。ただ古代思想の概略を1回でも触ったことがなかったら最後まで読み通せるかという感じ。

          「個」の誕生-キリスト教教理を作った人びと-

          三千円の使いかた

          著者は原田ひ香で神奈川県出身の女性の作家。独学でシナリオを学びはじめ、コンクールの最終選考、テレビの企画からキャリアをスタートさせた。「はじまらないティータイム」ですばる文学賞を受賞している。 本書はある家族のそれぞれお金にまつわる小さいエピソードが5話収まった小説である。80万部のベストセラーでドラマ化もされた。2022年の文庫本部門で年間1位のとのことである。最初は2018年に単行本として出版されている。 一応の主人公は次女となるが、第2話は次女、その次が祖母、長女、祖

          三千円の使いかた

          八日目の蝉

          著者は角田光代さんという神奈川県出身の方。読売新聞で2005年から新聞小説として連載された。2007年に単行本が発行。非常に人気でテレビドラマや映画にもなっている。 著者の小説を読んだのはこれが初めてで、映画で見たのが非常に印象に残っていたため原作を読んでみようと思い、手に取った。映画を見たのがずいぶん前なのでどんな感じだったかだいぶ忘れてはいるが読み終わって大体は覚えていたなと思った。またその記憶を頼りに映画と原作の違いを感じながら読んだ。  物語のあらすじは不倫相手の男

          八日目の蝉