山本七平「日本資本主義の精神」なぜ、一生懸命働くのか
著者の山本七平さん(1921年-1991年)は大学教授などではなく、在野の批評家。保守派の批評家という評価。執筆業以外にも山本書店の経営者でもあった方。
表題は1979年出版。
内容は表題のとおり、なぜ日本人は一生懸命働くのか。その精神構造を分析したもの。
要点としては日本人が働く理由は、日本人にとって仕事とは経済的行為ではなく、一種の精神修行。日本の会社は経済的行為を行うための機能集団としてだけでなく、共同体としての性質があるから。
つまり働かないと生活できないからでなく、道徳基準としての労働であるということ。
それゆえ「経済性を無視して「ひたすら働く」ことに一種の宗教的意義を感じ、それが精神的充足感となって、それで満足してしまうという傾向は、確かに日本にはある。」と指摘している。(「」は本書からの引用。以下同様)
タイトルからおそらくマックスウェーバーのプロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神の日本版を書こうとしているが、ほぼそのようになっている。
要因もウェーバーがプロテスタントの禁欲と予定説により利潤を肯定したことだが、こちらは石田梅岩と鈴木正三という思想家によって「徳川時代の士農工商それぞにおいてその役割にまい進することが修行であり、その結果として生じる利潤については否定していない」ことがもたらされたことであるとしている。
要は昔はお金っていいものじゃないかったけど、ちゃんと働いてお金を稼ぐのはむしろいいことっていう価値観の転換が、労働と貯蓄を生んでそれが資本主義になったという指摘である。
筆者の著作はどれも読みやすく、怒涛のストーリー展開のように一気に読めるし、主張も今引用しても古臭さを感じさせない鋭さがある。ただ気になった点が1つあり、1つはなぜ西洋でプロテスタンディズムの倫理が消えてしまったのに対し、日本は消えなかった、現代までその精神生きているのかである。
おかげで「経済性を無視して「ひたすら働く」」ことになっていまうのだがら、この辺が突き止められれば、もっと企業のIT化や長時間労働の是正になるのにと思った。
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