アドバンテストは労働時間の証拠を隠蔽??

総合サポートユニオンは、株式会社アドバンテストと、組合員Aさんの長時間労働による労災について団体交渉を行っています。第二回交渉がおこなわれましたので、その内容をお伝えします。

これまでの経緯はこちらをご参照下さい。
https://note.com/sguion/n/nd7ffefdb2298

1. 会社は労働時間の重要な証拠を隠蔽?
 Aさんは自宅から「社内ネットワーク」(図1参照)にアクセスするために、LEVEL2(社内ネットワークのファイアウォール)にアクセスして働いていました。Aさんの労働時間は「LEVEL2」へのアクセスログを見ればわかります。ところが、会社は持ち帰りの労働時間を確認できないとしています。

 その理由が今回はっきりしました。
 なんと会社は、「LEVEL2」とは別のアクセスログを「LEVEL2」のログとして扱っていたのです。

 会社の調べていたのは「シンクライアントへのアクセスログ」というログでした。当然Aさんはシンクライアントへアクセスしていないため、アクセス時間も0時間です。 
 しかも、図2の回答書にあるとおり、LEVEL2のログは社内の管理ルールにより現在削除されていると言います。

 Aさんが最初に会社に持ち帰りの多さについて相談した時の調査(2018年3月)の時にも、Aさんが労基署に労災申請を行った後に行われた労基署の調査(2018年5月頃)の際にも、Aさんは「LEVEL2」のアクセスログを調査するように伝え、会社も調べたと言い続けていたものでした。
 それが一年以上今、なぜこんな簡単な間違いが発覚するのか疑問でなりません。事実上会社が重要な証拠を隠蔽したとしか考えられません。

図1 ログデータの関係図

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図2 第2回団体交渉前のアドバンテストからの回答

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 会社は現在、間違えたログデータを調査し、重要なLEVEL2のログデータが削除されてしまった事に対して、「労災の判断に影響はない」と独自の理論を展開していますが、せめて会社は「シンクライアントへのアクセスデータが内部調査結果に影響を与えたこと」、「労災不認定に影響を与える可能性があること」、「削除されてしまったLEVEL2が持ち帰りを示す客観的で重要なデータであった」ことを認め、持ち帰りの労働時間がどれほどあったのかについて、真剣に検討してもらいたいと思いますが、それはしない、というのが会社の態度です。不誠実極まりありません。

2.同僚の持ち帰り残業の調査結果も開示できない
 労基署は、Aさんの同僚が持ち帰り残業を行っていたかどうかを重要視しています。会社が指示していない、といっても同僚が同じように持ち帰りを行っているのなら、持ち帰り残業が事実上の業務命令(「黙示の命令」)があったと判断できるからです。
 Aさんが調べたところ、過密スケジュールだった4カ月の間に、同僚も深夜に業務に関するメールのやり取りがしていたことがわかっています。
 第2回目の団体交渉で、私たちはこの事実を人事部に伝え、2017年4月~2018年1月までの期間、同僚が打刻時間後にメールを送信している時間と回数を抽出するようにお願いしました。しかし、会社は「労災認定には関係ないと判断している」、と調査を行おうとしません。よほど隠したいことがあるのでしょう。

図3 I氏に具体的な指示を受け、同僚が深夜に持ち帰りサービス残業を行った1例

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3.Aさんがやっていたプロジェクト(ImPACT)のスケジュールは極めて厳密に管理され、遅れが許されるものではなかったことが判明

 会社は第1回目の団体交渉で、仕事には必ず納期があるが、ImPACTのスケジュールが特段に厳しいものではないとの認識を示していました。
 しかし、プロジェクトリーダI氏のヒアリング結果より、スケジュールが1カ月単位で極めて厳密に管理され、遅れが許されなかったことが明らかになりました。スケジュールの遅延が許されなかった理由は次の通りです。

A) 開発スケジュールが遅れると、アドバンテストはImPACTプロジェクトから外される。
B) 外されると、1億円の予算がストップするため、開発の継続が不可能。
C) 医療機器への参入を視野に入れていたので、尚更ImPACTプロジェクトから外れるわけにはいかなかった。

4.プロジェクトの人員不足
 国に説明を行った極めて客観的な資料と、半年に1度事業部で行われる施策発表の資料において、最も忙しい時期に人員不足であったとがわかっています。2回目の団体交渉の場で国に説明した資料を人事部に示して説明をおこなったところ、人事部は「この資料の存在は知らなかった」、「これが事実ならこれまでの会社の調査結果は覆る」と言っていました。しかし後日会社より「人員不足による影響はなかったとの認識であり、これ以上は回答したしかねます。」と理由なく発言を覆しました。
 会社はこれまで正当な理由の説明なく組合の要求を拒否することが続いています。不当労働行為であることを伝え、人員不足でなかった理由について証拠を示しながら説明するように求めました。誠実な回答を期待します。

5.開発責任者M氏の団体交渉参加要請
 これまで10回以上、ImPACT責任者の団体交渉の参加を求めていますが、すべて拒否されています。Aさんの業務内容は技術的に高度な内容が多く、人事担当者のみではAさんの業務内容のほとんどが何のために行われたものかすら判断できないからです。第1回目の団体交渉では、「技術的な内容はわかりません」「スケジュールがどうであったかもわかりません」と会社は繰り返しました。
 会社はAさんが持ち帰って行っていた業務内容は勝手に行った急ぐ必要のない業務、と主張していますが、それも業務内容の重要性が客観的に判断できなければ成り立たないはずです。そこで私たちは開発の技術的な面を理解する担当者を団体交渉に参加させるよう求めているのです。
第2回目の団体交渉では、人員不足の証拠を示したにも関わらず、理由なく「人員不足はなかった」とされました。この状態では「組合が証拠を提出する」→「会社が持ち帰って確認する」→「M氏とI氏がそうではない理由を付ける」→「会社は100%M氏とI氏の証言を信頼する」→「しかも我々に反論の余地なし」の繰り返しにしかなりません。我々の主張はすべて会社にとっては都合の悪いことですが、せめて平等に意見を述べる場の提供をして頂きたいと思います。開発責任者M氏を団体交渉に参加させて下さい。

6.法律で禁止されている組合間差別を堂々と正当化
 労働組合法はひとつの会社に複数の労働組合が存在する場合、労働組合に与える便宜供与(社内掲示板の使用など)について差別してはならない、としています。
 アドバンテストには社内労組があり、下記のような便宜供与を会社からうけていますので、私たちも同じ取り扱いをするように求めました。

(ア) 団体交渉は会社の施設で就業時間内に行うこと。
(イ) 社内掲示板の使用許可。
(ウ) 社内メールの送信許可。

 結果、(ア)については認められましたが、(イ)と(ウ)に関しては却下されました。

7.The Advantest Wayについて
 2019年7月より運用を開始した新しい企業理念です。この理念に基づいていくつかの件で回答を求めています。この理念に沿った行動を取って欲しいと思います。
https://www.advantest.com/ja/about-advantest/the-advantest-way
https://www2.advantest.com/investors/resource/data/FY2019/J_all_IAR2019.pdf


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