決算書から音楽レコード/プロダクション会社を読み解く #20代マーケピザ 養成所オンライン vol.3
こんにちは!音楽とデザインのひと、菅野美音(@sgnmio)です。
『音楽の現場と聴き手をつなぐ』というビジョンを推し進めるべく、#20代マーケピザ 養成所オンラインにてマーケティングの思考を高めています。私についてのnoteはこちら。
今回は #20代マーケピザ 養成所オンライン vol.3のお題「決算書から企業のビジネスモデルを読み解く」に取り組み、noteにまとめました。
拙い文章ですがお付き合いいただけると幸いです。
❶選んだ業界とその理由
選んだ業界は迷うことなく自分が身を置いている「音楽業界」です。
そこはすぐ決まりましたが、その中でどんな業種の企業を選んでいこう?とちょっと迷いました。
私はクラシック音楽をはじめとする、「人の手」による生の音楽の現場と聴き手をつなぐ架け橋をつくっていきたい人間です。
普段クラシック音楽のコンサートに足を運んでも、のちほど紹介する、私の大大大大好きなジャンルレス弦カルテットグループLess is moreをマネジメントしていても思うことですが、あまりにクラシック音楽業界周りはデジタルツールの導入やビジネス感覚の浸透がなかなかどうして進んでおりません。普段慣れ親しむ商業音楽からベンチマークできることはいくらでもあるのではないかな…と思うところはいろいろあります。
ということで、今回は競合分析として大手音楽レーベル会社/プロダクション会社を読み解こうと思います🐣(ポピュラー音楽に少々疎いこともあり)
大手企業はアーティストをどのようにプロデュースしているのか、そしてどのように音楽でビジネスを成り立たせているのかをこの機会に読み解き、なにか生かせることはないかを探ります。
また「生の音楽の現場」に対してのある種の競合、あるいはファンベースづくりにも利用し得る音楽配信の利用動向も気になっています…!
(企業、とあったので今回は除きますが、JASRACをはじめとする一般社団法人、交響楽団や文化財団をはじめとする公益財団法人などの決算書の読み解きもしたくなりました。こうクラシック音楽に関わる団体を洗い出した時の株式会社の少なさに改めてびっくり・・・。
「公益財団法人」として国からの援助を受けたり、「ファンクラブ」「維持会」などを設けて個人からの援助を募ったりをして成り立たせ、団体自体でビジネスとして利益をあげていくという構造ではない団体がほとんどです。)
tip:音楽業界についての実態調査
まず市場全体をつかんでみたいと思い、どのような状況かリサーチしてみました。
まずは音楽市場全体のデータを。ハコが足りないと言われてはいるもののライブ市場は右肩上がりです。体験の需要が高まっていることが伺えます。
また、それに対してゆるやかに楽曲販売市場は右肩下がりのラインをたどっています…。CDの販売枚数が顕著に減っていっていますね。音楽配信はバカ伸びしているわけではないですがじわじわとわずかながら増えているようです。
シバタさんも音楽配信サービスについてのnoteを書かれていて、音楽配信業界の動向はこれから注目かもしれません👀
次に音楽配信業界での内訳を見てみましょう。
画像では2018上半期、2019上半期のグラフを載せています。
(数字引用:一般社団法人日本レコード協会)
着うた系やダウンロードサービスは年々減少気味。
それに対して、ストリーミングサービスは各半期ごとに成長しています!
さて、市場全体を踏まえたうえで、各企業を読み解いていきます。
選んだのは大手音楽レーベル会社
「ソニーミュージックエンターテインメント」
「エイベックス」
「アミューズ」
の3つ。
❷その業界内の企業の分析(1社目:ソニーミュージックエンターテインメント)
▶︎選んだ理由
理由としては今年7月のこのニュースに注目していたからです。
ソニーは、日本以外の音楽事業と音楽出版事業の中核を統合し、新しい企業グループ「ソニーミュージック・グループ」を設立する。
この大規模な組織再編により、世界展開するソニーミュージック・エンタテインメントと、音楽業界最大の音楽出版社のソニー/ATVが新会社に統合される。新会社設立後も、2社はそれぞれ別会社として経営は続けていく。
日本の音楽事業運営会社である株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントは再編の影響を受けず現状の経営体制を継続する。
(引用:https://jaykogami.com/2019/07/16357.html)
ソニーミュージックエンターテインメント(以下:ソニー)の音楽事業は今、サブスクリプション型音楽ストリーミングの収益が成長中となっています。これからの動向が注目される企業のひとつです!
▶︎決算書から読むビジネスモデル/業界内の立ち位置
音楽ストリーミングの売上高は前年度から15.2%とアップしています。
同決算報告書では2019年度の見通しとして
「音楽制作及び音楽出版におけるストリーミング配信売上の増加」
「音楽制作におけるパッケージメディア及びデジタルダウンロードの減収」
と、これからストリーミング配信に力入れてくぞ🔥 宣言。さすがソニー!
現行のビジネスモデルとしては自社が抱えるアーティストをストリーミング配信し、事務所分のマージン(ソニーが制作した音楽に関しては印税も)を得ているようです。抱える所属アーティストが多い、なおかつそれぞれに膨大なファンがついているからこそこれほどの売上を叩き出せています。
これは配信サービスについてなので少々横道逸れるのですが、現状に加えソニーは自社でこのようなサービスをこれから展開しようとしています。
ロスレス音楽配信「mora qualitas」(モーラ クオリタス)
過去プレスリリースを見ると、国内初の高音質ストリーミングサービスであり月額は1,980+taxと高め。
単価高く高品質を求める顧客を取っていき、なおかつ所属アーティストの音楽を使用することによりコストヘッジ。大企業ソニーであるからやりやすく、成功しそうなポジショニングですね。(当時の話で言えば。……詳細は以下へ)
▶︎企業の強みと今後の課題
ソニーの強みは、親会社ソニー株式会社が総合エンタテインメント企業として多角的に事業を展開していること、すでにグローバル展開していること、企業としての信頼性の高さから抱えている所属アーティスト/これから新規契約する見込みアーティストの多さが挙げられます。
市場牽制している大企業だからこそ企業内での事業をつなげ、ソニー全体でアーティストや作曲家を世に送り出しつつ収益化するシナジーを生み出しやすいのだなと思いました。なにやっても勝ちゲーだな・・・
ただ、前述のストリーミングサービスmora qualitasがリリース遅延しているのは些か不思議。プレスリリースでは19年春開始とありましたが、19年秋に延期というプレスリリースが出されました。
…そこでソニーがもたもたしているうちに競合が現れてしまいました
こちらもロスレス音質の配信をするサービスで、Amazon Music Unlimitedからの移行も可能。Amazonに一本取られましたね〜〜〜イタタ
所属アーティストを運用していくという面ではさしてこの先心配ないですが、mora qualitasに関してはAmazon Music HDに対してどうUSPを打ち出していくのかがこれからの最大の課題です。
❸その業界内の企業の分析(2社目:エイベックス)
▶︎選んだ理由
かつて日本の音楽CD販売市場で一位(引用:トウシル/2016時点の情報)だったエイベックスですが、音楽パッケージが売れなくなり音楽配信が上がってきている音楽市場の現状においてどのような情勢なのだろうと気になり選びました。
▶︎決算書から読むビジネスモデル/業界内の立ち位置
音楽パッケージが年々伸び、また音楽配信は(形式内訳については公表していませんが)115億と毎年横ばいに売り上げているという予想と真逆の決算状況でした。
なにがそんなに売り上げてるのか、決算書から引っ張り出してきました
数字についてグラフにまとめるとこうなります。
DVD/BDの売上が年々伸びている+単価を伸ばしていることが相乗効果として現れていそうです。これについては歴代音楽映像作品1位販売枚数を上げたアムロちゃんのファイナルツアーDVD&Blue-ray発売(2019年期)が大きかったのではないかと。
▶︎企業の強みと今後の課題
音楽パッケージの売上がすさまじいエイベックスですが、それは頻繁なツアー企画による映像パッケージ化と購入促進の仕組みを作っているアイドルグループが所属していることが大きく、それが強みなのではないかと思います。
ただ音楽市場の動向を見ると、そしてアムロちゃんのDVD/BDのおかげでピークに来たであろうことを考えるとこれからそのセグメントがゆるやかに冷え込んでいく恐れも。
音楽パッケージのさらなるプレミア化=価格高騰化/コンテンツの充実化あるいは別セグメントで事業成長を伸ばしていく施策が必要かもしれません。
❹その業界内の企業の分析(3社目:アミューズ)
▶︎選んだ理由
東証一部に上場もする音楽レコード会社株式会社アミューズ。グループ化しいくつもの連結会社や子会社を持っています。先の2社と比べると(というかそっちが強すぎて)市場掌握はまだまだこれからというところですが、総合エンターテインメント企業として注目している企業のひとつなので今回は選びました。
▶︎決算書から読むビジネスモデル/業界内の立ち位置
大型コンサートの数が増えたことにより動員数が増え、それに伴ってグッズ等の収益も増えるといういいビジネスの相関が生まれ収益が伸びてきています👀
各セグメントの中でも現場に人を動かすという結果を出しているのは、しっかりとアーティストにコアなファンを作れていることの裏付けかと。
またアミューズの決算書では旧譜の扱いについて「コンテンツ」として決算項目に明記されているのですが、時代の流れによって売上が左右される消費音楽という捉え方をするのではなく商品を後に受け継ぎストック的に収益を積み上げていきたいという姿勢が伺えます。
▶︎企業の強みと今後の課題
やはりアミューズの強みは福山雅治や星野源、サザンオールスターズ、ポルノグラフィティ、Perfumeなど大物アーティストを抱えていること。音楽配信には安易に手を出さないようにしているという姿勢が見て取れます。
なぜならもうすでにCDやライブでしっかりとした収益化をできてしまいますから、わざわざ利益率の低い配信サービスに手を出すメリットがないのです…。上場企業なのでなおさら慎重にならざるを得ないですね。
ただ、コアなファンを作れていると前述したのを裏返すと新規顧客の獲得がアミューズにとってのこれからの課題といえます。商品が溢れかえる中での新規獲得は今の時代とても難しくなってきていますが、ファンベース施策の充実や配信サービス導入といった現在のファン層外にどう届けていくのかが注目です。
❺業界の課題と自分がその業界に新規参入するなら何をするか
私がエンタメ音楽業界に感じる課題は主にこの2点。
・サブスク型で音楽を聴くという需要がじわじわと高まるなか、楽曲配信をサブスク化させることはCDを売れなくさせる一因となりかねないというジレンマとどう戦うか──「さながらチキンレース」
・新規顧客獲得の難しさ
前者に関しては会社全体で一元的に施策をとってしまうのはリスクが大きすぎるように思えてしまいます。ライブ、CD、配信それぞれの役割を考えることが必要になってきますが各アーティストのシェアの状況によって優先度合いといった戦略は必然的に変わってきますね。
また新規顧客獲得の難しさは音楽業界だけに限った話ではないですが、これら大手企業についてはマス広告→ファンベース施策にどう切り替えていくかがかなり肝になってきそうです。
現代においての「正しいマーケティング」とは、PRODUCT MARKET FITすること。
モノや情報が溢れてマーケティングされたくない現代人は、リファラルで購買意欲を掻き立てられることが多くなってきています。マス広告はもはや無駄な費用を生むものとなりかねません。資本があるという利点を生かしたブランド誇示、認知拡大には無論利用できますが、マス広告との付き合い方は大企業にとっては大課題だと思います。
自分がこの業界に新規参入するとしたらどうするか、ですが、ファンベースづくりの充実、そしてコンテンツのクオリティ確保 この2点は絶対に外せません。
まさに新規参入中でマーケ担当中のLess is moreはファンベースをどう設計していこうか絶賛画策中でございます。Less is moreの課題は
・実績
・ファンの声
・実際に演奏する音楽
・コンセプト
・演奏者がどんな人間なのか
これらの"見える化"が現状うまくできていません。
コンテンツのクオリティはバチクソに高いのでライブに実際に来てくれた人は満足度1200%くらいで帰ってくれるのですが、「ライブに行きたい!」と思わせるまでがいやはや難しい。人への直接的なマーケティングでどういったことばが刺さるのか?どういった人に刺さるのか?を日々仮説検証中というところです。
せっかくなのでLess is moreの演奏動画をご紹介。めちゃんこかっこいいので、どうぞ聴いていってください。
私自身Less is moreが大大大大好きだと冒頭でも書いたのですが、一音一音にかける緊張感と、その場その場で変化する即興の"生きる音楽"をつくるこの4人に毎度のことながら引き込まれます。生ライブの楽しさといったらもう……
ニューヨーク公演では大喝采を浴び、最近は映画の劇伴音楽やチョコレート会社ロイズのCM楽曲を手がけたりなど活動の幅を広げているカルテットグループです!
もっともっと、たくさんの人にこの音楽が、この想いが届いて欲しいなという想いでLess is moreのマーケティングには楽しく関わらせていただいてます。
この課題、リサーチからまとめるまでとんでもない時間がかかってしまいました…。Togglで計測していますが、合計してざっと20時間ちょっと…。
探していた業界が「音楽業界」と広すぎた&決算書が見当たらない企業が多すぎたことでリサーチにめちゃんこ無駄な時間を使ってしまいました。
次回課題は工数把握をし、時間短縮して結果を出せるよう心がけます。
レビュー会楽しみにしております🙌
それでは菅野でした!
最後までご覧くださりありがとうございました。 活動に応援いただけると、とっても、とっても嬉しいです。サポート費用は研究費に充てさせていただきます。