エレベーターピッチをカスタマイズ。「らしさ」をもっと深く描けるように。
エレベーターに乗っているくらいの短い時間でビジネスやサービス、プロダクトの核心を伝える文章をつくる手法のエレベーターピッチ。ターゲットユーザーや、顧客ニーズ、競合との差別化要因などを端的に整理することができるため、私たちは多くのプロジェクトで「自社らしさ」「サービスらしさ」などをまとめる際にワークショップとして取り入れています。
一般的なエレベーターピッチの文章構成は次のようになっています。
例えば、noteのエレベーターピッチを考えてみます。公開されているミッション・ビジョン・バリューや、noteの特徴・使い方・機能紹介、会社説明資料を紐解いて作ってみると、一例として下記のようなエレベーターピッチが考えられます。
エレベーターに乗っているくらいの短い時間(せいぜい30秒くらいでしょうか)で核心を伝えることがエレベーターピッチの肝要なところです。そのため「アレもコレも伝えたい」という、つい盛り込みたくなる要素を削り、明快な文章を作れるのが良いところですね。
エレベーターピッチは、クライアントや多くのステークホルダーと一緒に行うワークショップでも使い勝手がよく、多様な視点でそれぞれの考える「らしさ」を描けるので、私たちも重宝しているワークの1つです。
しかし当然のことながら、対象となる「製品/サービス/企業」のことを、もっと深く知りたい/伝えたいといったときには物足りなさがあります。
そこでShhh inc.ではエレベーターピッチを、クライアントの手掛ける事業の「らしさ」をもっと深く描けるようにカスタマイズし、特にブランディングのプロジェクトで「使える」ものにすることを目指しました。
私たちは「深さ」を知る/伝えるために必要なのは「過去と未来」きちんと理解することだと考えています。別の言い方をすれば「DNAとビジョン」を既存のエレベーターピッチに追加すること。私たちがカスタマイズした、エレベーターピッチは下記のようになります。
追加したのは2行目の「この原点には〜〜」と、4行目の「これから先〜〜」の2箇所です。もう一度noteを例として、このカスタマイズしたエレベーターピッチを作ってみると下記のようになりました。
声に出して読み上げてみると60秒近くかかったので「エレベーターに乗っているくらいの短い時間でビジネスやサービス、プロダクトの核心を伝える」というエレベーターピッチ本来の目的からは、少し遠のいてしまいました。
しかし、このカスタマイズを行うことで元々のエレベーターピッチの明瞭さに加えて「DNAとビジョン」を知る/伝えることができるため、より深く「らしさ」を描けるようになっていると思います。
特にブランディングのプロジェクトでは、どこまで深く「らしさ」を捉えられるかは、とても重要になるため、30秒で伝えることのできる元々の「速いエレベーターピッチ」よりも、60秒かかるカスタマイズした「深いエレベーターピッチ」のほうが有効だと考えています。
私たちはこれまで「新規事業のブランドコンセプトを描く」「Webサイトリニューアルの新たな方向性の指針を作る」「パーパスやMVVをナラティブ化する」などの目的のために、エレベーターピッチを取り入れてきました。
エレベーターピッチの良いところは、文章構造がフォーマットとして決まっているなかで、ワークショップ参加者それぞれの視点から大切にしているもの、目指している姿などが描けることです。1つの型の中で多彩な意見が出てくるので、それを基に、さらに議論を発展させていけるところですね。
ワークショップで使える様々な手法を紹介している名著「ゲームストーミング」では、エレベーターピッチを「探索のためのゲーム」と位置づけています。(ゲームストーミングではワークのことをゲームと呼んでいます。)「探索のためのゲーム」の章のリード文に書かれている内容が、ワークショップの醍醐味を伝えてくれている素晴らしい文章なので、少し長いですが最後に引用します。
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