ああでもないこうでもない、インドの話
ずっと、インドに行ってみたかった。
というより、「あ、インド行ったことありますよ。」と言ってみたかった。
人生でインドに呼ばれる時期があると言われているが、初めて呼ばれたのは高校生の頃。
耳元で「ナマステーナマステー」と呼ばれるというよりは、「インド、来るでしょ?」のような感覚。
大学時代はほとんどカンボジアに行っていたため、
インドから「またあとで呼ぶ。」と言われていたような気がした。
社会人になり、カンボジアに移り住み1年半が経って、
なんだか少し落ち着いてきたところに「そろそろだね」と呼ばれた。
上記はすべて完全に私の空想にしか過ぎないけど、
やっぱり20代前半のうちにインドの洗礼を受けたいと思い、10月上旬から約一週間インドに滞在してみた。
一週間でインドの何が分かるんだと思われるだろうし、私もそう思うけど、行かない限り何もわからない。
今回行った都市は、トランジットを含めて5都市。
・首都ニューデリー
・タージマハルがあるアーグラ
・水の街スリナガル
・山岳地帯でチベット文化圏のレー
・人口の2%しかいないシーク教徒の聖地アムリトサル
街並みも人も全く違う。
ニューデリーの暑く熱い空気とは裏腹に、レーの気温はマイナス。
そしてレーには、チベット族が多くいた。
そして、私がこの旅で一番、しっかりと気づいたことは、私自身についてだった。
それは「自身の環境・経験によって旅先での五感は異なる」ということ。
お札が汚いことや、どこと構わず大声で電話することや、
嘘をつかれることや、時間通りに進まないことや、交渉がうまくいかないことや。
旅の醍醐味である「驚き」にあまり驚かなくなってしまっていた。
というのも、カンボジアも同じようなことがよく起こるし
それが日常茶飯事のため何とも思わなくなってしまっている。
もし「これこそがインドの醍醐味!」というものがあっても、もしかしたら驚かないのかもしれない。
多分高校生の私が見るインドは違っただろうし、もっと多くの発見があったのかもしれない。
そして、今までの人生でそれなりに多国籍の色々な人に会ってきたし
「ああいう人もいればこういう人もいる」と悟っていることがある。
私自身が変に「悟り癖」があるため、余計に。
そんな要素で出来上がった「今のわたし」が見たインドで、
一番感動したのはタージマハルとレーの山。
そこまで言っておいて世界遺産かって感じだけど、
タージマハルは予想以上にきれいだった。本当に上品だった。
真っ白だと思っていたタージマハルは、
壁に無数の模様がありめちゃめちゃかわいい。ベリーキュート。
そして何より、レー。
飛行機で首都ニューデリーからスリナガルを経由してたどりつく、
山に囲まれた標高3500mの街。
山の中で育った私は「山魂」みたいなものをメラメラ燃やして挑んだ。
そしてここで、高山病にかかる。そして同時に食あたりになる。
人間はこんなにも嘔吐できるのかと、
インド人も超びっくりする程の嘔吐の嵐。
謎に40度近い高熱もつづいた。マイナス気温にも関わらず暖房がない宿舎。
インドカレーやチャイティーを見るだけで嘔吐していたし、
インド独特の匂いに嘔吐し、終いにはインド人を見るだけで嘔吐していた(インド人からカレーやチャイやらを連想してしまうため)
泣きたくなるけど涙を流すほどの体力さえ残っておらず、静かに時が過ぎるのをじっと待つ。
それでも、レーは本当に楽しかった。
信じられないほど山はきれいだし、チベット族は優しくて暖かいし、
ニューデリーとはまた違ったインド人たち。
いろんな意味で、一生忘れないと思う。
レーの次に向かったアムリトサルでも体調はずっと悪く、
一番楽しみにしていた黄金寺院を観ることができなかった。
↑楽しみにしていた黄金寺院
「面目ない・・・」
誰に向けて面目なさそうにしているのかもはや分からないけど、面目なさで溢れていた。
ここでローカルの病院に行き、点滴と薬を処方してもらった。
点滴の針を抜くときに、血がドバドバ出ている箇所をおじさんの長い爪でずっと押さえられたのは少し動揺したけど
院長だと思って会話していた人がタクシーの運転手だったことが
一番のハイライトだった。
医師に向かって「おい!ちゃんとこの子の治療してるのか!薬もちゃんとチェックしろと言っただろう!」と言った感じで医師に怒鳴りちらし
「体調は良くなったか?もう大丈夫だぞ。」と私をケアしてくれるものだから。てっきり院長か偉い人だと思っていたら、最後に「さあタクシー乗ろう。」と言い出すもんだから。
なんだかよく分からないけど、その一瞬ですべて良くなった気がした。
今回のインドの旅を一言では決して表せられない。
それは、私の語彙力であったりとか、たった一週間の滞在だったからとか、5都市だけだったからとか、そういう事もあるかもしれないけど
根本的に、まだ表すべきではないんだと思う。
もう少し経ってから、振り返って、またもう少し経ってから、振り返る。
記憶の中で何度もインドを思い返して、
いつまでも、ああでもないこうでもないと言っていたい。
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