雪の結晶の対称性
「雪は天から送られた手紙(中谷宇吉郎)」という言葉がありますが,雪の結晶が生まれ・成長した気圏の状況(温度,湿度など)により,様々な形の雪片が観察できます.これらの写真の中で,絶対にありえない雪の結晶が2つあります.どれとどれでしょうか?
この雪の結晶の問題はp.37にあります.
■雪片の形の対称性は6mmです.
ーーーーーーーーーー注
6は6回回転対称軸の意味,mは鏡映対称面.6mm(点群の記号)の意味は,紙面に垂直に6回回転対称軸があり,その6回回転軸を含む鏡映面m(従って,鏡映面は紙面に垂直)が共存する状態です.点群の説明は別な機会にします.ただ,6mmが正しく6mは正しくない表記であることだけご注意ください.その理由は,紙面に垂直な鏡映面(6回回転軸を面内に含む)は,6回回転対称軸があると,60°づつで計3枚の鏡映面ができます.それに加えて,これら3枚の鏡映面間に新しい鏡映面3枚が生じています.初めの3枚の鏡映面と,後の3枚の鏡映面は,それぞれのクラスの中で6回回転対称軸の操作で移り変われるのですが,前者と後者のクラス間での移り変りはできないので,それぞれ別のクラスであると考えます.そのため6mmのように,mを2つならべるのが正しいのです.
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雪片の形は雪(氷)の結晶の内部構造(分子配列)が反映されて外形にでたものです.以下に氷の結晶構造の2次元模式図を示します.水分子はH2O(酸素原子Oの両側に水素原子Hが結合し,その結合角度は約120°)で,両端の水素原子は,隣の分子の酸素原子と弱い相互作用(水素結合)をしています.そのためこのような6mmの対称性(点群)の結晶になります.
(注)下図のような繰り返し壁紙模様の対称性は,空間群で記述されます.
ここで,周期的(格子)に移動できるモチーフはすべて同値とみると(無限に続く時間を,時計の文字盤の12までの数に繰り返しに押し込めるのと同じ原理),繰り返し模様をモチーフの1つに押し込めることができ,空間群を点群に帰着させることができます.3次元では,空間群は210種,点群は32種あります.
(注)数学らしくいうと,「空間群を並進群(格子)を核として準同型写像したものが点群」です.少し詳しい話は別の機会にいたします.
(注)氷の内部構造は6回対称ですから,6回対称性は外部の形にも反映されています.その上,氷の結晶の成長時の環境を反映して(雪は天から送られた手紙),成長の様子は変化します(6回対称性は変わりませんが).
雪片(雪の結晶)の形は,デンドライトという形です.
これは,比較的速く結晶が成長するときにできます.
金平糖も似たような現象で出来るデンドライトといえますが,
1粒の金平糖全体で砂糖結晶の方位が揃った単結晶というわけでは
ないので,それが雪の結晶とは違うところです.