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音楽構造


18世紀前半,ヨハン・セバスティアン・バッハの『平均律クラヴィーア曲集』が出版されました.平均律音階というのは,隣り合う音の周波数比$${q}$$を一定にして,1オクターブを12の音で構成したものです.
例えば,周波数$${f}$$の音から始めると,
$${ \{ f,  fq,  fq^2,  ….,  fq^{12}=2f \} }$$ ,13番目の音はオクターブとなります.
$${q^{12}=2}$$を解くと,$${q=\sqrt[12]{2}=1.059463…}$$

隣り合う音の周波数比$${q}$$を一定にした(平均律)ことで,どの音から始めても同じ音階の平行移動ができ(移調ができる),図のようなピアノの鍵盤が作れるのです.黒鍵,白鍵すべてで隣り合うもの同士が半音階(周波数比$${q}$$)になっています.
バッハの平均律が凄い発明というのは,簡単な周波数比になる2音は心地よく響き和音を作るわけですが,完全5度,完全4度などの和音を良い精度で近似できるからです.
自分自身の音との間隔を完全1度といいます.完全5度とは,例えば,A(ラ)とE(ミ)のような純正律なら周波数比が$${2:3}$$になるような2音の間隔で,平均律では,$${q^7=1.4983 \fallingdotseq3/2}$$の周波数比です.
完全4度とは,例えば,E(ミ)とA(ラ)のような純正律なら周波数比が$${3:4}$$になるような2音の間隔で,平均律では,$${q^5=1.3348 \fallingdotseq4/3}$$の周波数比です.
このように,平均律の和音の響きは,純正律と異なりますが,非常に良い近似になっていることがわかります.

応用:音楽
数学: 幾何級数、無理数
『数学的構成要素』p.96-97;ただし,説明は全面的に変えた。

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