ロバチェフスキーの「狂った」幾何学からGPSナビゲーターまで
最も抽象的で思索的な科学理論が,しばらくして(時には相当な年月!)非常に実用的な事例の基礎となることがある.たった一つの応用からの恩恵が,科学史におけるオタク数学者のコストを賄って何倍にもなるような多くの例から一つを挙げよう.
19世紀前半.カザン大学学長ニコライ・イワノビッチ・ロバチェフスキーは,「仮想幾何学」を提案した.ユークリッド幾何学が2千年存在しているというのに,この幾何学では三角形の内角の和が180度にならないのだ.狂気の沙汰としか言いようがない.同じ頃,ドイツの偉大な数学者カール・フリードリッヒ・ガウスも同様のアイデアを思いついたが,その成果を発表するのを恐れていた.ドイツの数学者ベルンハルト・リーマンが,ユークリッドの幾何学とロバチェフスキーの幾何学の両方を含む一般理論を構築し,数学の純粋な抽象部分であるリーマン幾何学が登場した.アルベルト・アインシュタインは,リーマン幾何学に基づく特殊相対性理論(STR),一般相対性理論(GTR)を完成させる.核反応の計算はすべてSTRに基づいており,GTRは長い間,美しいが実生活には役に立たないおもちゃと思われていた.GPSナビゲーターは,ナビゲーションシステムをサポートする軌道上の衛星に非常に正確な時計を要求する.衛星の速度が速いため,軌道上の時計は地球上とは異なる進み方をする.それにもまして,この種のGTR効果には,時空の非ユークリッド幾何学に関連した特有のものがある.もし,ある瞬間にこのような効果の考慮を「オフ」にすると,1日の間にナビゲーションシステムの表示に約10kmの誤差が生じる. つまり,我々の空間がわずかに非ユークリッド的であることを一瞬でも忘れるなら,溝やビルの壁に衝突したりするのは確実だ.
Паршин
Алексей Николаевич
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