居住支援を考える vol.1 〜障害者総合支援法に基づく「地域移行支援」〜
TBSの報道特集「強度行動障害の息子…受け入れ施設が見つからない両親の苦悩」の動画をYouTubeで視聴。強度行動障害を持つ27歳の亮太さんとその家族が直面している困難に焦点を当て、社会全体の支援体制に関する課題を浮き彫りにする番組だ。
(2024年7月23日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)
強度行動障害と居住支援の現状
亮太さんは知的障害に加え、強度行動障害を抱えている。家族は彼の将来を案じ、将来彼が安心して暮らせる場所を探し続けているが、適切な施設を見つけることは非常に困難だ。この問題は、全国で多くの強度行動障害を持つ人々とその家族が直面しているもので、特に対応が可能な施設が限られている点が課題だ。
報道特集では、大阪府岸和田市にある障害者入所施設「山直ホーム」が紹介された。この施設では、強度行動障害を持つ40人の入所者を48人の職員が24時間体制で支援している。職員は一人ひとりの特性に合わせたケアを行い、パニックを起こしやすい人には視界を減らす工夫などを取り入れている。それでも、待機者が130人以上いるため、新たな受け入れが非常に困難な状況だ。
施設長は、「強度行動障害を持つ人を受け入れるには、専門的な訓練を受けた職員やパニックに対応できる設備が不可欠」と訴えているが、人材と資金の不足が大きな障壁となっている。
国の政策と地域での生活支援の影響
国は障害者が地域で自立した生活を送れるよう、グループホームなどの整備を進めてきた。国が進めている「障害者総合支援法」に基づく「地域移行支援」の一環の政策で、障害者が入所施設ではなく、地域で自立した生活を送ることを目的に、グループホームや地域生活支援を拡充してきた。この結果、入所施設の数は減少し、利用者も5000人以上減っているとのこと。
しかし、強度行動障害を持つ人々の場合、地域での共同生活には難しさが伴い、特別な支援を必要とするため、現場での対応には多くの課題が残されている。特にグループホームの運営は少人数の職員で行われることが多く、専門的なケアを提供するには追加の支援が求められる。
地域社会と居住支援の未来
強度行動障害を持つ人々が地域で安心して暮らせる環境を整えるためには、国による支援体制に加え、地域社会全体の理解と協力が重要だ。居住支援法人としては、住宅確保要配慮者のための支援を強化し、誰もが安心して生活できる住まいを提供することが求められている。
こうした取り組みが進むことで、亮太さんのような強度行動障害を持つ人々が自分らしく生きられる社会が実現することが期待される。社会全体での理解と協力が、彼らにとって安心できる住まいの選択肢を広げるカギとなるだろう。
【リサーチ】
地域移行支援事業は、障害者支援施設や精神科病院を退所・退院する人、矯正施設(刑務所など)を出た人などが地域での生活を再開できるよう支援する仕組み。
事業で提供されるサービス
1. 住居の確保や地域生活に移行するための活動に関する相談
2. 地域生活への移行のための外出時の同行
3. 障がい福祉サービスの体験利用
4. 体験の宿泊
5. 地域移行支援計画の作成
平成24年4月から実施されているが、いくつかの課題がある。
地域移行支援事業の課題
地域の受け入れ体制の不備
地域によって、障害者や精神疾患を抱えた人が暮らせる住居や、福祉・医療サービスの整備状況に大きな差がある。地域住民の理解や協力が十分でない場合も多く、偏見や差別による地域社会への適応が難しいケースもある。支援リソースの不足
支援を行う人員やリソースが不足しており、ケースワーカーや支援者が多くの利用者を担当せざるを得ない状況が続いている。結果として、個別対応が難しくなり、利用者一人ひとりに十分な支援が行き届かないことがある。個別ニーズへの対応の限界
利用者ごとに異なるニーズに対応することが重要だが、画一的な支援プランが採用されることが多い。特に、複雑な事情を抱える利用者に対しては、柔軟な対応ができず、地域での生活が困難になる場合がある。退所・退院後のフォロー不足
退所・退院後の支援が一時的なものに終わるケースが多く、長期的なフォローが十分でない。支援が途絶えると、再び施設に戻ることを余儀なくされたり、地域での生活が不安定になる可能性が高まる。関係機関の連携の弱さ
医療機関や福祉施設、行政など複数の関係者が関与するが、情報共有や連携がうまくいかないことがある。これにより、支援が効率的に行われず、利用者にとって必要なサポートが受けられない状況が発生する。利用者自身の不安や適応の難しさ
長期間施設や病院で生活していた利用者は、地域での新しい生活に対して強い不安や抵抗感を持つことがある。これが原因で、地域移行が進まなかったり、途中で挫折するケースも少なくない。
横浜市の取り組み
地域移行・地域定着支援事業
横浜市「地域移行・地域定着支援事業」の対象者
・障害者支援施設入所者
・児童福祉施設入所者
・保護施設入所者
・矯正施設等入所者
・精神科病院入院者(精神障害者)
横浜市精神障害者地域移行・地域定着支援事業
横浜市独自の取り組み「横浜市精神障害者地域移行・地域定着支援事業」(通称:退院サポート事業)
精神障害者生活支援センターを通じて実施され、精神科病院入院患者の退院と地域生活への移行を支援している。
具体的な支援内容
横浜市の地域移行支援には、以下のような具体的な取り組みが含まれる:
個別支援: 退院に向けての個別的な支援提供
普及啓発: 入院患者や病院スタッフへの地域移行に関する情報提供と啓発活動
ピアサポートの活用: 地域生活を送る当事者(ピアサポーター)による支援
関係機関との連携: 地域の様々な支援機関との連携による包括的な支援体制の構築
これらの取り組みを通じ、横浜市は障害者の地域生活への移行を促進し、地域社会での自立した生活を支援している。市の独自事業や関係機関との連携により、きめ細かな支援を提供することで、障害者の社会参加と生活の質の向上を目指している。
「山直ホーム」
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