ムトコウヨウという男
すでにチケット販売開始しております。深夜ガタンゴトン3年ぶりの新作「消え残る」ですが、こちらのマガジンでは、作品の魅力についてお話していこうと思います。
第1回は出演者のムトコウヨウについてです。
一瞬で分かるムトコウヨウ
劇想からまわりえっちゃんに所属するムトコウヨウ、写真だけ見るともうこんな感じです。
ゴツゴツした顔、笑いをとるためなら手段を選びません、ギャグ100連発朝飯前です、どんな状況でも盛り上げます、バンジージャンプやります、街頭パフォーマンスやります、変な髪型はいつでもやります、魚捌きます、肉焼きます、ナンパやります、脱ぎます、幽霊見えます………etc
もうお腹いっぱいという方もいるかもしれませんが、これがムトコウヨウです。
今回、挑む役は?
さて、今回、何で出演者の方のエピソードを大事にしているかと言うと、やっぱり、半分ぐらいノンフィクションに近い部分を占めているからです。(ちなみに写真は全部ムトコウヨウです。)
彼が演じるのは「東京でくすぶる俳優」です。もうこの手の話は数多の作家が何回も書いておりますが、普段、明るく生きている彼が演じることに意味があるんじゃないと思っております。
SNSに嫉妬がうごめいている昨今、コメント欄には揚げ足取りしか並ばないのに、芸能人には清廉潔白を求める、企業戦士以外は人間にあらず……
まぁ、生きづらい世の中ではあります。
そんな中で、彼は自身の飲食店を盛り上げ、所属の劇団の後輩を叱咤し、リアルの世界で生きているんです。
でも、彼にだって弱い部分はある。
誰もが「自分自身の弱さ」というものは抱えていて、それに上手く折り合いをつけたり、乗り越えたり、諦めたりして生きているんじゃないかと思います。
彼が演じるのもそのうちの一人です。
今回、彼を知っている人は「あー、こういう部分もあるのかぁ」とも思うだろうし、彼を知らない人は「あの、底抜けに明るい店員さんも悩むんだなぁ」と感じるかもしれません。
弱くても、生きようとする一人の人間の役。
今回、彼が挑む役です。
フィクションとノンフィクション
今回の「消え残る」はもちろんフィクションです。と言いつつも、「これが事実である」って思ってしまうような作品が、作家としては目指すところなんですね。
逆に「事実」を並べても「これは事実ではない」と思われることも多々あります。(そういう意味では谷賢一氏の「アンチフィクション」はすごく気になっている)
今、「新型コロナウィルスの存在」という圧倒的な事実の前に「フィクション」はいったい何ができるのか?
そんな大きなことを考えながら、一人の男が一人のちっぽけな男を演じているのを稽古場で見ております。
ムトコウヨウの姿、ぜひご覧ください。
裕本恭